『ゴジラvsコング』レジェンダリー社、ワーナー・ブラザースと決別の可能性 ─ HBO Max同時配信戦略で対立

新企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリーに新たなる試練が降りかかるかもしれない。『ゴジラvsコング』(2021)や『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)を手がけたレジェンダリー・ピクチャーズが、ワーナー・ブラザースとの契約を更新せず、新たなスタジオをパートナーに検討しているという。米Deadlineが報じた。
2000年に設立されたレジェンダリーにとって、ワーナーは最初のパートナーだった。2005年にワーナーと長編映画を共同製作する契約を結んだのち、両社はクリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』3部作や『インセプション』(2010)、トッド・フィリップス監督『ハングオーバー』3部作、『300 〈スリーハンドレッド〉』(2006)『ウォッチメン』(2009)、そしてハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』(2014)をはじめとするモンスター・ヴァース作品や『名探偵ピカチュウ』(2019)などを世に送り出してきたのである。
しかし現在、レジェンダリーはワーナーとの契約満了に伴い、新たなパートナーを検討しているとのこと。最有力はソニー・ピクチャーズ、続いてパラマウント・ピクチャーズが候補に挙がっていると報じられている。新型コロナウイルス禍において、レジェンダリーと製作した『ゴジラvsコング』と『DUNE/デューン』はワーナー屈指のヒット作となった。レジェンダリーとのタッグ解消は、ワーナーにとって少なからぬダメージとなりそうだ。
レジェンダリーがワーナーとの契約を更新しない背景には、2021年にワーナーが劇場公開作品を米HBO Maxで同時配信する戦略を採ったことがありそうだ。レジェンダリーは『DUNE/デューン』『ゴジラvsコング』に巨額を出資したが、配給戦略への発言権はほとんどなく、劇場公開と配信を同時展開する計画も正式発表の直前まで知らされなかったという。この時、レジェンダリー側はワーナーを提訴することも検討。のちに両社は和解したが、この出来事が両社の関係性にしこりを残した可能性はある。
ワーナーにとってポジティブな要素があるとすれば、レジェンダリーが契約を更新しないのは今回が初めてではないということだ。両社が2005年に締結した共同製作契約は2014年に一度満了し、その後、レジェンダリーはユニバーサル・ピクチャーズとパートナー契約を結んでいる。ユニバーサルとは『ジュラシック・ワールド』(2015)や『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)『スカイスクレイパー』(2018)などを製作したが、ワーナーほどのヒット作・話題作には恵まれず、2019年の契約満了後はワーナーとの再契約に至っていた。
したがって、レジェンダリーが今後数年間の空白を経て、再びワーナーとの契約に至る可能性はある。近年のレジェンダリーはNetflixやサーチライト・ピクチャーズ、Focus Featuresなどとも作品ごとにタッグを組んでいるため、ワーナーと引き続き作品単位でタッグを組むこともありえるだろう。また、ユニバーサルとの契約期間中にも『GODZILLA ゴジラ』や『キングコング 髑髏島の巨神』(2017)をワーナーと共同製作しているため、おそらくモンスター・ヴァース作品は別の契約になっている模様。現在製作中の『ゴジラvsコング』続編映画(タイトル未定)は2024年公開予定だが、こちらはワーナーとのタッグを継続することになりそうだ。
2021年のHBO Max同時配信戦略では、ワーナーはフィルムメーカーからの不評を買い、長らくパートナー関係にあったクリストファー・ノーランも失った。ノーランの新作映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』はユニバーサル・ピクチャーズより配給される。
Source: Deadline