トム・ヒドルストン主演『Life of Chuck』レビュー ─ 時間逆行の構成、最後まで観ると映画の「謎」が解き明かされる不思議な感動作

(カナダ・トロントから現地レポート)2024年開催の第49回トロント国際映画祭にて、観客賞に輝いた『Life of Chuck(原題)』が、現地時間6月13日にカナダ・トロントにて劇場公開を迎えた。本作は、ホラー作家の巨匠として知られるスティーブン・キングの選集「If It Bleeds」に収録されている同名短編小説が原作で、マーベル「ロキ」役でお馴染みのトム・ヒドルストンが主演を務めている。
“スティーブン・キング原作”と聞くとホラーを思い浮かべる人も多いだろうが、本作は一転して感動的なファンタジー。自分の存在意義を問いかけるような、哲学的な物語となっている。共演には、『ワンダー 君は太陽』のジェイコブ・トレンブレイ、『スター・ウォーズ』シリーズのマーク・ハミル、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのカレン・ギラン、『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォーなど。
『Life of Chuck』は3章構成となっており、第3章から第1章まで時間を逆行して物語が進んでいく。
第3章では世界崩壊が描かれる。気候変動で荒廃し、インターネットや電気などのインフラが機能停止寸前の中、人々は不安に包まれている。そんな中、教師のマーティ(キウェテル・イジョフォー)は、街中に掲げられた「Thank you, Chuck(ありがとう、チャック)」という謎めいた広告を目にする。チャック・クランツ(トム・ヒドルストン)の功績を称える看板だが、彼が誰なのか誰も知らない。マーティの元妻で看護師のフェリシア(カレン・ギラン)は、崩壊寸前の病院で働く中、モニターが一斉に作動するなど、奇妙な現象に遭遇。2人は“世界の終わり”を体感していく。
第2章では、銀行で働くまじめな男性、チャックの人生が描かれ、第1章では彼の少年時代の物語へと遡る。
この3つの章がどのように結びつくのか……観客は想像力を働かせながら、チャックの人生をたどっていくことになる。全体を通して哲学的な要素がたっぷり含まれているが、決して難しい作品ではない。中盤では、チャックがストリートミュージシャンのビートに合わせ、失恋した女性ローレンと即興ダンスを披露するシーンもあり、楽しい気持ちにさせてくれる。どうしてチャックがこんなにもダンスが上手なのか、その理由は第1章で明かされる。この章では、マーク・ハミル演じるチャックの祖父が重要なカギを握る。第1章を鑑賞し、過去と現在がつながったとき、この映画の“謎”を解き明かすことができる、なんとも不思議な魅力を持つ一本だ。
監督を務めたのは、スティーブン・キング原作『ジェラルドのゲーム』や『ドクター・スリープ』で高評価を得たマイク・フラナガン。彼自身、キング作品の熱烈なファンとして知られ、キングからも厚い信頼を寄せられている。そんなフラナガンが本作では、ホラーではなく心温まるSFドラマに挑戦。ファンの期待は裏切らず、6月16日時点で、Rotten Tomatoesの批評家スコアは82%、観客スコアは88%と高評価を記録している。また前述したとおり、本作はトロント国際映画祭にて、観客賞を受賞。この賞を獲得した過去の作品の多くがアカデミー賞の作品賞にノミネートされていることを考えると、今後の賞レースでの活躍も期待される。
『Life of Chuck(原題)』の日本公開は未定。
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