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マッツ・ミケルセン、『ファンタビ』J・K・ローリングめぐる論争には「慎重にならざるをえない」 ─ キャンセル・カルチャー、SNS文化には危機感

“北欧の至宝”と呼ばれる俳優、マッツ・ミケルセンが『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で“魔法ワールド”入りを果たした。このたびマッツは、本作の脚本家であり『ハリー・ポッター』シリーズの原作者であるJ・K・ローリングをめぐる議論について見解を語っている。

発端は、ローリングによるトランスジェンダーやフェミニズムをめぐる発言がネット上で物議を醸し、「トランスフォビア的である」との大きな批判を受けたこと。のちにローリングは自らの考えを長文でブログに綴っているが、ローリングを差別主義者として批判する声は大きく、ダニエル・ラドクリフやエマ・ワトソン、エディ・レッドメインら出演者もローリングに同意しない旨を明らかにしてきた。

しかしながら今回、マッツはローリングによる一連の発言に何かしらの判断を下すことには慎重な姿勢を取っている。英GQにて、マッツは自身の考えをこう述べた。

「(この問題を)誰もがちょっと軽はずみに、“あれは侮辱じゃない?”というふうに受け止めていますよね。どれだけ人の意見を聞いても、彼女の発言を本当に理解することはできません。けれどリアクションがあれほど激しいと、自分たちの発言には慎重にならざるをえないんです。」

マッツはローリングのブログを読んでいないこと、したがってローリングの意見を熟知しているわけではないことを強調し、「私はよく知らないことにはコメントしないようにしています。それがこの世界に(自分を)適合させることだと信じているから」とも話した。

「(議論の)解決策はわかりませんが、女性やトランスの方々に対する憎しみの言葉がなくなることは良い出発点でしょう。しかし、私たちは誠実であるべきですが、科学がイデオロギーに変わり、政治が科学に変わるような状況下で誠実な話し合いはできないと思います。“あなたはどちら派なのか”というところで混乱が起こり、良い方向には進むことは稀なものです。」

そもそもマッツが『ファンタビ』に参加したのは、グリンデルバルド役を演じてきたジョニー・デップの降板が決まり、後任者として白羽の矢が立ったため。本作をめぐってはデップやローリングのほか、先日はクリーデンス役のエズラ・ミラーもハワイで逮捕されるなどスキャンダルが続いている。

マッツはデップとミラーについては何も語っていないが、現在の潮流について「あちこちで人々がキャンセルされています。事実もあれば、そうでないものもある……。狂気の時代です。誰もが論争を探しているよう」とも語った。もともとSNSが苦手だというマッツは、SNSについて「みんなが白黒を付けたがっているように見えますが、溝が広がりすぎると話し合いはなくなってしまう」との危機感を示してもいる。現在、このような流れが映画や作品に向かっていることもマッツ自身は感じ取っているようだ。

「すべてを政治的にしよう、すべての映画を政治的に、という欲望の存在を感じます。“このことに意見を表明する映画ですよね?”といった質問をよく受けるんですが、そうじゃないんだと(笑)。人間の存在や魂、人間の交流といった、もっと興味深いものがあります。“こちら側”と“あちら側”に分けられる映画を作るなんて、この世で一番簡単なことですよ。」

Source: GQ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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