マーベルは「監督に親切じゃないのかも」 ─ イーサン・ホーク、「ムーンナイト」参加の実感とスコセッシの批判を語る

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ「ムーンナイト」(2022)でアーサー・ハロウ役を演じたイーサン・ホークが、マーベル・スタジオとのコラボレーションについて率直な感想を語った。長いキャリアを有し、さまざまな監督やプロデューサーと仕事をともにしてきたイーサンは、MCU作品への参加にも独自の思いを抱いたようだ。
米IndieWireでは、イーサンが娘のマヤ・ホークの働きかけでMCUに参加したことを明かしている。「どうして外野から“あそこは良くない”と言うの? 自分が入って、自分が提案できることを示したらいいのに」と言われたというあたり、もともとイーサンがマーベルに好印象を抱いていたわけではないことがうかがえるだろう。主演のオスカー・アイザックに対し、イーサンは「マーベルを変える必要はない。自分がやれることを見せて、それを面白がってくれるかどうかを知りたい」と話したという。
結果的にイーサンは「ムーンナイト」の仕事を楽しんだようで、「とてもいい経験になった」と振り返っている。もっとも「(マーベルの)人たちは俳優にとても親切。監督には親切じゃないのかもしれないけど」とも述べており、「それが(マーティン・)スコセッシや(フランシス・フォード・)コッポラが言っていることなんじゃないか」と分析した。
マーベルをはじめとするスーパーヒーロー映画に対し、映画界の巨匠たちはしばしば厳しい目線を向けており、なかでもスコセッシの「マーベル作品は映画(cinema)じゃない」という発言は、約3年を経た現在でも語られるほど強烈なインパクトを残した。ただしイーサンは批判的な意見にも理解を示しており、今回も「スコセッシやコッポラのような人たちが“金を稼ぐこと以上に大切なことがある”ということを率直に語らずして、いったい誰が語るのか」とコメント。ヒーロー映画に批判的な意見も必要だという見解を示している。
「このコミュニティには(ヒーロー映画に対し)“みんな、これは『ファニーとアレクサンデル』(1982)とは違うんだ”と言う存在が必要です。基本的には14歳のための映画を、あたかも『ファニーとアレクサンデル』や『冬の光』(1963)のように評価していたら、『冬の光』のような作品を作る人がいなくなってしまう。“ハードルを下げすぎてはいけない”と言い聞かせてくれる年長の指導者たちに僕は感謝します。彼らをお高くとまっている人たちだと考える方もいるでしょうが、けしてそういうわけではないのです。」
「ムーンナイト」への参加を経てのイーサンの発言には、“マーベル映画を擁護するか批判するか”という二項対立にとどまらない重みがある。ひとりの俳優として大切にされたという実感を得たらしいイーサンは、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長のスタンスについても言及した。
「ケヴィン・ファイギはロバート・ダウニー・Jr.とともに素晴らしい仕事をして、ダウニーの情熱が(MCUの)成功の大きな部分を占めていたことがわかったんだと思います。俳優たちが役を演じることを楽しんでいれば、観客も見ていて楽しい。ファイギがそのアルゴリズムを理解しているから、マーベルは(俳優の)プロセスに非常に大きな敬意を払ってくれるんです。」
イーサンは「ムーンナイト」について、「一番良かったのはオスカーの演技」だったとも言っている。「巨大な予算の作品に起こる素晴らしいこと、それが桁外れの演技なんですよ」。
Source: IndieWire