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「エージェント・オブ・シールド」マーベルのテレビ部門が規模縮小か ─ 映画部門マーベル・スタジオのドラマ進出で

マーベルのロゴ

「エージェント・オブ・シールド」(2013-)や「エージェント・カーター」(2015-2016)、デアデビルやジェシカ・ジョーンズらを主人公とするNetflixドラマを手がけてきたマーベル・テレビジョンが大きな岐路に立たされているようだ。マーベル・エンターテインメントのテレビ部門である同社が、事業規模を今後縮小する可能性があるという。米Varietyが報じた。

事の背景にあるのは、マーベルの映画部門であるマーベル・スタジオが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の「フェイズ4」作品ラインナップを発表したことだ。これまでMCUは映画とテレビの両方で展開されてきたが、作品ごとに世界観を共有するコンセプトは映画に根強く、ドラマが映画の出来事に影響を受けることは非常に少なかった。事実上、MCUというプロジェクトは映画部門が主導する状態だったのである。

ところがフェイズ4には、ディズニーのストリーミングサービス「Disney+」で配信されるテレビ作品が多数含まれた。「ロキ」「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「ワンダヴィジョン」「ホークアイ」(すべて原題)など、映画でおなじみのキャラクターを主人公とするドラマを製作するのは、マーベル・テレビジョンではなく、映画部門のマーベル・スタジオだ。

Varietyによる報道では、マーベル・スタジオが独自のテレビ企画に取り組むに伴い、今後、マーベル原作の実写作品はマーベル・テレビジョンを離れると伝えられている。すべての実写企画がテレビ部門を離れるわけではなく、マーベル・テレビジョンは現在もいくつかの実写作品を企画しているというが、この方針は業界の共通認識になっているとのこと。取材に対し、ある人物は「ケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオ社長)の番組は、マーベル・テレビジョンが過去に作ったどの作品も超えています。ほかの実写作品では扱えないキャラクターもケヴィンには扱えるし、言うまでもなく予算もずっと大きいんです」と証言した。

現在、マーベル・スタジオはドラマ作品として、前述した4作品のほかに「シーハルク」「Ms.マーベル」「ムーンナイト」を待機中。ドラマでも映画に並ぶビジュアルを実現するため、各シリーズは全6~8話構成、1億~1億5,000万ドルという高予算で製作されるという。しかしマーベル・テレビジョンとNetflixが共同製作した「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」「ルーク・ケイジ」「アイアン・フィスト」の場合、それぞれ第1シーズンの製作費の累計額が2億ドルだったとのこと。単純計算だが、13話構成の1シーズンが5,000万ドルで作られていたことになるから予算の差は明らかだろう。

これまでマーベル・テレビジョンは多数のドラマを送り出し、非MCU作品としても『X-MEN』のスピンオフドラマ「The Gifted ザ・ギフテッド」(2017-2019)「レギオン」(2017-2019)を発表するなど精力的な取り組みを続けてきた。しかし、高い評価を受ける作品のかたわら、順調でない作品が厳しい処遇を受けてきたのも事実だ。「インヒューマンズ」(2017)や「エージェント・カーター」、Netflix作品など、放送局やプラットフォームによって打ち切られた作品のほか、製作中止が発表された「ゴーストライダー」のように、そもそも実現に至らなかった企画も少なくない。マーベル・テレビジョンは「ハワード・ザ・ダック」など複数のアニメ作品を企画しており、今後はアニメ中心となっていく可能性もありそうだ。

ちなみに、マーベル・スタジオとマーベル・テレビジョンの予算に大きな差があるのは、両部門は同じように「マーベル」の名を冠していながら、親会社であるディズニー内での管轄が異なるためだとみられる。マーベル・テレビジョンは、マーベル・エンターテインメントのアイザック・パルムッター会長による指揮で動いているが、かねてよりマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長とパールムッター会長には確執があると伝えられており、2015年にディズニーCEOのボブ・アイガー氏が介入。マーベル・スタジオをマーベル・エンターテインメントから切り離し、ウォルト・ディズニー・スタジオズの管轄としたのである。すなわち、マーベル・スタジオはディズニー直属の映画部門であり、いまや出版社の映像事業という域からは飛び出しているわけだ。

どうなっちゃうの?

Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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