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『マーベルズ』竹中直人、ニック・フューリー声優 11年 ─ 「あっという間ですね、11年」【インタビュー】

映画『マーベルズ』ニック・フューリー日本語声優 竹中直人さんインタビュー THE RIVER撮影写真

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)における“アベンジャーズ計画”の発足人にして凄腕の長官、ニック・フューリー。名優サミュエル・L・ジャクソンが演じるこの最重要キャラクターの日本語吹替声優を11年にわたって務めるのが、ご存知竹中直人だ。

サミュエルがコメディからシリアスまで幅広い役を自分のものとしているように、竹中もコメディアンや俳優など様々なバックグラウンドを持つ。MCUドラマ「シークレット・インベージョン」で竹中は新たな一面を見せたニック・フューリーを声で丹念に表現したのち、劇場最新作『マーベルズ』でも再演。自身もマーベル作品の熱心なファンだという竹中本人に、THE RIVERでは単独でインタビューを敢行。ニック役への想い、声優業への情熱、やりがいや、『マーベルズ』でのニックについてを語っていただいた。

映画『マーベルズ』ニック・フューリー日本語声優 竹中直人さんインタビュー THE RIVER撮影写真

映画『マーベルズ』ニック・フューリー役 竹中直人 単独インタビュー

──竹中さんが『アベンジャーズ』で初めてニック・フューリーを演じられたのが、2012年。それから早11年が経ちました。

あっという間ですね、11年……そうですか。

──当時、ニック・フューリー役がこんなにも長く続くという想像はありましたか?

こんなに長くシリーズが続くとは思ってもいなかったです。それに僕がずっとニックの声を担当するとも。
でも声優の仕事は子供の頃から憧れでしたから、オファーを頂いた時はとても嬉しかったです。

──しかし、11年間も同じ役を演じるというのは、俳優業を含めた竹中さんのキャリアの中でも、かなり貴重なことなのではないでしょうか。

他にはないですね。豊臣秀吉の役は何故か何度も演じていますが、サミュエル・L.ジャクソンの声をこんなに長く続けさせていただいて。ありがたい気持ちでいっぱいです。

ニックの初登場は『アイアンマン』(2008)の時で、手塚秀彰さんがニック・フューリーの声を担当されました。それで彼の声のイメージが定着した方もいます。日本語吹替って、最初に聞いた声優の声が、その俳優のイメージになりますからね。だから、途中で戸惑う人もいるんじゃないかという不安はかなりありました。それでもニック・フューリー役をできるのはとても嬉しかった。

まさか、ドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」でもニック・フューリーをやらせて頂けるなんて。いつものコスチュームではなく、普段着のニック。これには驚きました。僕にはやはり、黒のロングコートにアイパッチというスタイルがニック・フューリーでしたからね。それがまさか徳利のセーター、毛糸の帽子をかぶり、アイパッチもしていないニック。これはかなり難しいぞと思いました。もう、サミュエル・L.ジャクソンが別の役をやっているように見えてくる。もちろん変わらずニック・フューリーなんだけれど、どの辺の声のバランスで発声すべきか、とても難しくもあり、面白かったですね。

──しかも「シークレット・インベージョン」は会話劇中心でしたよね。セリフの量も多かったですし、他の声優さんとのやりとりにも、気を使うところがあったのでは?

それはありませんでした。セリフが多いのは楽しいです。より集中力が高まりますからね!サミュエルの口の動きにピッタリ合った時は、とてもうれしかった。

ただ、アイパッチ&ロングコート姿でないニック・フューリーの声は、どのへんの音色なんだろうと心配でした。同じキャラクターだから、変える必要はないのですが、不思議な体験をした感じでしたね。やっぱり、ヒーローとしてのスタイルが出来上がっている人が、普段着になった時の声はどうあるべきか。難しかったです。それも、ちょっと老いを表現しているニックになっていたので、声も少し老けさせた方がいいのか、色々考えたのですが、このまま行きましょうということになりました。

シークレット・インベージョン
「シークレット・インベージョン」 © 2023 MARVEL.

──「ニックのスタイルは出来上がっている」ということですが、ニックといえば竹中さんの声だ、というスタイルが日本のファンの間ではすっかり定着しています。毎回、ニック・フューリーが出演する事で竹中さんが戻ってこられることを喜ぶファンがたくさんいたんですよ。

(安心した様子で)えっ……?それは本当ですか?だったら嬉しいです……。否定的な意見を聞いちゃうことも多々ありますからね。「声優の顔が浮かんで邪魔!」「下手!声優は顔が浮かんじゃダメなんだよ!」なんていう露骨な意見もありますからね。

──11年間もニック役を演じられて、ご自身の中でのニックに対する考え方が変化した印象はございますか?

僕の中では「シークレット・インベージョン」をやったことで、ずいぶん変化しました。『キャプテン・マーベル』の時も若いニックを演じましたが、その時もどんな声にすべきかは考えました。声の感覚だけでニックらしさを捉えていくわけだから、どこまで若さを表現するべきか、監督と方向性を決めるまでは時間がかかりました。若い時の声はちょっと変えていますね。それが終わって、また普段のニックに戻って、それで「シークレット・インベージョン」では老いを表現しました。それが終わってから、すぐに本作『マーベルズ』でした。

実は、ちょっと心配していたんです。「シークレット・インベージョン」ではニックが「老い」を表現していましたしね。それに『アベンジャーズ』のヒーロー達も亡くなっているし、もしかしたらニックは『マーベルズ』で死んでしまうんじゃないか……と。でも、全然元気だった!すごく心配だったんです。「シークレット・インベージョン」はずしんと重い雰囲気でしたからね。『マーベルズ』でのニックはとても元気で本当に良かった!

映画『マーベルズ』ニック・フューリー日本語声優 竹中直人さんインタビュー THE RIVER撮影写真

──ニック・フューリー役のサミュエル・L.ジャクソンって、声は高いですよね。けれども重鎮感があるし、コメディの雰囲気もある。多面的な役者さんです。

サミュエルの声が高めなので、最初は高めでいこうということで声を当てたこともありました。けれども「やっぱり竹中さん、地の声でいきましょう」というディレクターのお言葉で、それに合わせていきました。本人の声に合わせていくと、アクセントも英語っぽくなってしまって(笑)。不思議な感じでしたよ。

例えばピーター・フォーク(刑事コロンボなど)の声は小池朝雄さんです。もう小池朝雄さんのイメージで定着していますよね。でもね、『カリフォルニア・ドールズ』(1982)という映画で初めてピーター・フォークの地の声を聞いた時に、うわっ!全然違う!ピーター・フォークじゃない!と驚きました。不思議ですよね。最初に聞いてしまった声が本人のイメージを作ってしまい、もう本人になってしまうのですから。

クリント・イーストウッドだって、初めて映画館で観た時は、結構渋い声だなと思いましたが、テレビで吹替を初めて観たら、山田康夫さんの声色が(本人と)全然違うんです。イーストウッドじゃない!なんて思ったくらいです。だけど、イーストウッドといえば山田康夫さんの声、というイメージは決まっている。そういうの、ありますよね。不思議ですよ。

声優さんの仕事も大変です。途中で声優が交代してしまうと、役者の印象まで変えてしまうから。声優の仕事はとても責任ある仕事だと思います。

──『マーベルズ』は全編をご覧になりましたか。

観ていないです。完成前に収録するので、話の流れは知らないまま録ります。それはそれで、楽しいんです。例えば香港映画に出ると、台本はなく、その場でセリフを渡されて、その場で覚えてセリフを言う。話の内容を知らずにお芝居をするのは決して悪くないと僕は思います。

──今作『マーベルズ』でのニック・フューリーは、どんなキャラクターですか?

常に冷静沈着ですが、今回は女性のヒーローたちに囲まれて、これまでのクールなニックとは違い、ちょっとお茶目な姿が見られます。怖がるニックや、絶叫するニック……叫びっぱなしっていうシーンもありました。今回はずいぶん叫びましたね(笑)。

マーベルズ
© MARVEL 2023.

──サミュエル・L.ジャクソンが出演している他の作品で、ご自身が声優を担当されていない映画を吹替で鑑賞することはありますか?

『交渉人』(1998)は観ました。サミュエル役の声優をやるにあたって、どんな感じだろうと思って。

僕は字幕派なので、普段は字幕で観ます。吹替はやっぱり、耳が慣れてくるというのはありますね。それは不思議です。違うなぁと思っても、ずっと観ていると慣れてくるんです。耳がそっちの耳になっていくのかな。

人によって、「入ってくる声」と「入ってこない声」の、周波数みたいなのがあるような気がします。僕の声はよく独特だと言われます。例えば飲み屋さんで話していると「声でわかりました」と言われることがある。声って面白いですよね。

──他のマーベル作品でお気に入りはありますか?

そうだなぁ……。(少し考えて)『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ですかね。あれは、すごかったですね……。最後の最後にヒーローがあれだけ集結するのは、堪らなかったですね。

全員が引き立っているのがすごい。ヒーロー全員が魅力的に表現されています。監督とプロデューサーの愛ですね!ちなみに、DCでは『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)は傑作でした!あの映像の暗さには、誰も敵わない。あんなに暗い映画!本当に堪りませんでした!最高の3時間半でしたね。

──ニック・フューリーにもハードボイルドな魅力がありますよね。

はい!やっぱりニックのあのコスチュームと佇まいがなんとも堪らない!それが「シークレット・インベージョン」では全然違う一面を見せる。『マーベルズ』には元気に戻ってきてくれて本当に良かったと思います。今作で声を当てる仕事は、すごく楽しかったです。やっぱり元気なヒーローが一番ですからね!

映画『マーベルズ』ニック・フューリー日本語声優 竹中直人さんインタビュー THE RIVER撮影写真

映画『マーベルズ』は大ヒット公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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