【考察】マーベル映画の「アンカー理論」を考える ─ 『デッドプール&ウルヴァリン』の新設定、どこまで有効?

この記事には、『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレが含まれています。
アンカーなど気にしなくて良い説
アンカーが消滅した世界は、数千年をかけて徐々に消滅するという設定を今一度眺めてみよう。お気づきの方も多いと思うが、数千年がかかるというのなら、それは単なる寿命とも言えるのではないか。我々が暮らすこの現実の地球には46億年の歴史があるというが、近代文明が地球環境に及ぼした影響を鑑みれば、今後数千年の間に滅びることだってあり得るはずだ。おそらくどの世界にも寿命というものがあり、アンカー消滅とは、数千年分の余命宣告であるに過ぎない。

また、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でストレンジがアメリカ・チャペスと共にいくつもの異世界を潜り抜けた場面では、原始の世界や、すべてが元素であるかのような世界、さらに絵の具の世界もあった。こうした世界にも、それぞれアンカーが存在すると真面目に考えるべきなのだろうか?
それに、世界の命運をたった一人のアンカーの肩に乗せるという設定は、マーベル・シネマティック・ユニバースの基本的な価値観に反するようにも感じられる。MCUはどんな周辺キャラクターにも焦点を当て、誰もが主人公となり得ることで、いくつものスピンオフ作品を制作し、そうやって世界観を拡張してきた。一人ひとりがさまざまなレベルでの戦いに打ち込んでいる中、「たった一人のアンカーが死んだので、今後この世界は全部滅びます」というのは、まるでアンカー以外の物語には意味がなかったと言っているようなものである。
『デッドプール&ウルヴァリン』に登場したミスター・パラドックスのような、自然消滅を待てずに安楽死を望むような職員が今後も登場すれば話は別だが、おそらくハンターB-15らTVAは今作での事件を受け、時間加速機の管理をより厳重にし、同じようなことが起こらないように警戒にあたるだろう。そうであれば、アンカーの存在を気にかける必要は、実質的にはほとんどないのだ。
あるいは、アンカー不在によるアース616消滅の運命は、『エターナルズ』合流の伏線となるかもしれない。ほとんどの生き物にとって数千年とは悠久の時に等しいが、すでに7,000年を生きてきた超人集団エターナルズにとっては話が別。数千年後に世界が消滅すると知れば、彼らは未来の人類を守るために行動を起こすだろう。エターナルズが世界の危機を伝える遣いとなって、アベンジャーズたちの前に現れる可能性も。同じく、時を超えて存在する「ムーンナイト」月の神コンスも、何か反応を示すかも知れない。
『デッドプール&ウルヴァリン』で新たに紹介されたアンカーという設定について、あなたはどうお考えだろうか?誰がアース616のアンカーなのか?これは今後のMCUでどれほど重要な要素となり得るのだろうか?今後の作品で再びアンカーについての新事実が明かされるまで、考察は続くことになりそうだ。