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“『ミッドナイト・イン・パリ』のポスター、なぜ本編に登場しないゴッホの『星月夜』なのか問題”を真面目に考えてみた

midnightinparis

みなさんはこちらの映画をご存知であろうか。Woody Allen(ウディ・アレン)監督作品、2011年公開の『ミッドナイト・イン・パリ』。ゴールデングローブ賞脚本賞、アカデミー賞脚本賞を受賞し 他にも様々な映画祭で評価され話題となった。 

この『ミッドナイト・イン・パリ』、ジャケットもとても印象的だ。パリの街を歩く主人公、そして背景にはある有名な絵画が使われている。ゴッホ作、『星月夜』だ。主人公のシャツの青と空の深い青がマッチし、『星月夜』の絵のなかに入りこんでしまったかのような、芸術的で美しいものになっている。 

 

しかし、この映画を観たことがある方は、きっとこの疑問を抱かれるはずだ。 

「なぜ、作品の中にゴッホは出てこないのに、この映画のポスターにはゴッホの『星月夜』が使われているのだろう?」と。 

https://www.wikiart.org/en/vincent-van-gogh/the-starry-night-1889
https://www.wikiart.org/en/vincent-van-gogh/the-starry-night-1889
今回はそのちょっとした疑問について、大真面目に考えてみよう。  

『ミッドナイト・イン・パリ』物語の舞台、登場人物  

主人公は映画脚本家で、現在小説の執筆に取り組んでいる男、ギル。婚約者とその両親と共にパリを訪れたギルは、ある夜誘われるがままに乗り込んだ車で1920年代にタイムスリップしてしまう。そこで様々な著名な芸術家たちと出会うことになる…というストーリーだ。 

 

読書好き、絵画好きにはたまらない芸術家たちがたくさん登場するところがこの作品の魅力の一つである。たとえば、『老人と海』の作者で、ノーベル文学賞を受賞した作家ヘミングウェイ。『華麗なるギャツビー』の作者のF・スコット・フィッツジェラルド。(ちなみにこのフィッツジェラルドを演じているのはTom Hiddleston/トム・ヒドルストン。ロキの時とはまったく違う雰囲気のトムヒだが、レトロなスタイルが似合って格好いい。 )

 

物語の終盤、ギルは恋してしまった女性アドリアナと共に、1920年代から1880年代へもタイムスリップしてしまう。 

1920年代でゴッホが登場しないのは当然だ。彼が亡くなったのは1890年であるし、時代が合わない。

しかし1880年代、ゴッホと共同生活を送ったこともある画家ゴーギャンは登場するのにゴッホは登場しない。こんなにも名だたる芸術家が登場しているのにも関わらず、ベル・エボック時代を代表するゴッホが物語に登場しないのはなぜだろう?なのになぜ、映画の看板であるポスターに使われているのはゴッホの絵なのだろう? 

いや、この作品の中でのゴッホは誰なのだろう?  

もしかしたら、『ミッドナイト・イン・パリ』の主人公ギル自身がゴッホなのではないだろうか。 

ウディ・アレンという男 

この映画の監督はウディ・アレン。『アニー・ホール』『カイロと紫のバラ』最近では『ブルージャスミン』などで知られる名監督。 
彼の作る映画は独特であるし、彼自身もまた個性的な人だ。 

一世を風靡した『アニー・ホール』では、監督・主演も務めている。ご覧になったことがある方は分かると思うが、『アニー・ホール』の主人公アルビーはウディ・アレンその人を見ているかのようなのだ。

ユダヤ人である彼だからこそ発せられる皮肉交じりのジョーク、一癖も二癖もあるその性格。コメディアンなのに死にとりつかれている、不器用で繊細な変わった男。その彼が『アニー・ホール』で演じた(?)アルビーと、今回の『ミッドナイト・イン・パリ』の主人公ギルには共通したものがある。 

https://natashastander.wordpress.com/2014/07/16/midnight-in-paris-2010/
https://natashastander.wordpress.com/2014/07/16/midnight-in-paris-2010/
 婚約者はいるものの、その婚約者ともだんだんそりが合わなくなってくるし、彼女の周りの人間とも気が合わない。彼女の両親は共産主義者なのだが、ギルは面と向かって「頭がおかしいとしか思えない」と発言するシーンがある。

『アニー・ホール』でも「典型的なアメリカの共産主義の家族」とアルビーの皮肉めいた台詞があり、ウディ・アレンの思想がそのまんまキャラクターに反映されているところがある。 

Writer

Moeka Kotaki
Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)

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