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【インタビュー】『ミッシング・リンク』はなぜ野心的なのか ─ ヒュー・ジャックマンからの直電話に監督のお母さんもビックリ

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)など、緻密ながら大胆なストップモーションアニメが作品ごとに話題を呼ぶスタジオライカ。彼らの最新作ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒は、世界を股にかける冒険映画だ。

監督は2012年にライカが放った『パラノーマン ブライス・ホローの謎』も手掛けたクリス・バトラー。主人公のライオネル卿には『X-MEN』シリーズや『グレイテスト・ショーマン』(2017)のヒュー・ジャックマン、その相棒のMr.リンク役は『ハングオーバー』シリーズのザック・ガリフィアナキスが声を演じたほか、旅を共にするアデリーナ役は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのゾーイ・サルダナが演じた。

気も遠くなるような製作の苦労話や、細かなところに込められたこだわり、ヒュー・ジャックマンからかかってきた電話のエピソードや、スタジオライカがクリエイティブである秘訣とは。クリス・バトラー監督に、THE RIVERが詳しく聞いた。

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ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
クリス・バトラー監督。 ©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

1週間かけて出来る映像、わずか1分

──どうもはじめまして!こちらは東京にいますが、クリスさんは?

はじめまして!オレゴン州のポートランドというところにいます。スタジオライカがあるところです。

──もろもろ、調子どうですか?不安な時期が続きますよねぇ。

今年は大変ですよねぇ。どうにかこうにか、って感じですよね。僕もここ暫くは自宅作業なんです。でも今月(2020年10月)はイングランドの実家に戻るつもり。

──ポートランドでは映画館は開いてます?

どうなんですかね。開いているところもあると思いますけど、いろいろ制約が厳しいのかなと。でも、大部分は閉館状況だと思います。大変ですよ。ほんと、異常事態。

──ですよね。さて、今日はお時間ありがとうございます。『ミッシング・リンク』楽しませていただきました!スタジオライカのストップモーションアニメの質の高さにはいつもながらに感嘆させられましたが、今作は特にキャラクターが好きで、ミスター・リンクが良かったですね。

それは良かった!ありがとうございます。

──ミスター・リンクが言葉を話すキャラクターっていうのにはちょっと驚いたんですよ。最初は、チューバッカみたいな感じなのかなって思ってまして。でも本当に可愛らしいし、クールでした。

アハハ(笑)。確かに、彼がこの映画のハート部分ですからね。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

──ストップモーションって、ちょっとずつちょっとずつ製作されていくんですよね。今作では、一日あたり何分くらいの製作を進められたのですか?

ハハ(笑)。1分も作れませんよ。製作は1年半かかったんですが、中盤のころは、30人くらいのアニメーターが働いて、1週間かけて1分か1分半がせいぜい。

──えぇっ、1週間で1分……。えぇ〜?

でしょ(笑)。アニメーター総結集でそれくらい。気が遠くなりますよ。

──ってことは、30人がかりでひと月頑張って、やっと数分……っていう世界なんですね……?

そうです。すごいでしょう(笑)。特に今作は、ほんとに複雑でしたからね。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

──いやぁ、すごすぎます……。映画では砂漠からヒマラヤ山脈まで、世界中を旅する映像が描かれるわけですが、特に作るのが難しかった景色はどこでしたか?

うーん。山は結構チャレンジでしたね。サイズがね。それから(デザインの)スタイルが全体的に写実的な感じで統一されていたから、広々とした雪山や雪原が出てきたとき、その景色をどう魅力的に見せられるかということにはこだわりました。プロダクション・デザイナーと僕で、凄まじいほど描き込みましたよ。特に氷の橋のシーン。ここが一番大変でした。まぁ正直なところ、この映画は全部が大変だったんですけどね。

森やジャングルの風景だったら、これまでのストップモーションアニメでもさんざんやってきたんですよ。小さな植物や花を綺麗に作ってくれる、それだけをここ3年間ずっとやってますっていう専門のアーティストさんもいるくらいで。だからそういうロケーション(森やジャングル)は僕らは慣れっこなんです。

それから、ロケーションが1箇所だけじゃなくて、110箇所もあったことですかね。多くて大変でした。

ライカ史上最も昼間シーンが多い?

──ロケーションと言えば、これまでのスタジオライカって、夕暮れや夜のシーンが多かったですよね?だから『ミッシング・リンク』は、ライカ史上一番日光が多い作品なのでは。以前、『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)のスティーヴン・S・デナイト監督にインタビューさせていただいた時に、「昼間のアクション・シーンは夜と違ってディティールがよく見えるから描き込みが大変」とおっしゃっていたんですが、それってストップモーションアニメでも同じですか?

いやー、そうでもないですよ。でも面白いですね。実写映画だとCGを取り入れるわけですが、それを視覚効果で現実に寄せようとするわけですよね。だからディティールがフォトグラフィックに、正しいものに見えないといけない。たとえば、人間とモンスターが闘っているとしたら、そのモンスターも実写のように見えなくちゃいけないわけです。

一方、僕たちストップモーションアニメだと、出てくるもの全てが作り物なわけですよ。主演俳優もパペット。だから視覚効果も、パペットに合わせればいい。というわけで、昼のシーンでも夜のシーンでもあまり関係がない。どれくらいリアルに、細かくすればいいかは、全部僕たち次第ですからね。

だから、ちょっと事情は違うかなと思うんですが、彼の言っていることも分かります。僕たちの場合、日光の明るいシーンで日光をリアルに見せるのが難しかったです。特に屋外のシーン。実際に屋外で撮影しているわけじゃないから、空気中の埃であったり吐息であったりの表現が難しかったかな。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

──昼間の明るいシーンでは、パペットの“皮膚”や衣装の質感が良く伝わってきて、良かったですよ!

そこはこだわりました!昼間のシーンでは、僕たちの職人魂もよく写りますからね。

──スタジオライカ作品では『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)の時も(海の)波の表現がすごかったですが、今作でもすごかったですね!『KUBO』の時にアニメーション・スーパーバイザーのブラッド・シフさんにインタビューさせていただいたことがあって、『KUBO』では海面の動きを表現するのに、色々な素材でシミュレートしていて、「一番良かったのが黒いゴミ袋だった」っておっしゃっていたんですが、今回も同じようなことをやったんですか?

僕たちが作るのは、触れることができるような世界なので、いつも現実にある素材で、手作業で始めるんです。『KUBO』と『ミッシング・リンク』では、そこから始めて、そしてVFXに移っていきました。社内にVFXの部署があって、ものすごいスキルがあるんです。彼らがその素材を、「参考資料」みたいな感じで受け取って、最終的な映像に仕上げてくれるんです。だから波や水もデジタルではありますが、全ては現実の素材を元に作られているんですよ。だからこそ、パペットが「そこに居る」感覚が表現できているんだと思います。

それから『KUBO』では水のシーンが多くなるだろうということで、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2013)からウォーター・エフェクトのトップのデビッド・ホースレイを雇い入れていました。彼が今作でも引き続き(水の描写を)やってくれています。『KUBO』での発明をたくさん採用していますが、今作では『ミッシング・リンク』流にスタイルを変化させたという感じですね。

──だからこそ、自然で、オーガニックな映像に仕上がっているということですね。あと、『KUBO』の時は16フィート(約4.9メートル)の巨大なガイコツを作って、それが一番誇らしいプロダクトだってシフさんはおっしゃっていたんですが、『ミッシング・リンク』でクリスさんはどうですか?

ひとつに絞るのは難しいですが、象のパペットですかね。劇中には数ショットしか登場しないんですが、あれもクリエイターたちが一生懸命作ってくれたもので、でっかいんです。それに、象の皮膚の感じの表現とか、ちゃんと歩けるように設計することとか、こだわりが詰まっています。象の皮膚ってシワがあって、たるんでいますよね。パペットでもそれを表現しました。

『KUBO』では大きいものを作りましたが、『ミッシング・リンク』では小さいものを作っています。氷の橋のシーンでは、これくらい小さなフル稼働パペットを作りました(指を5〜10センチほど広げて見せる)。ワイドショットの時に、ちっちゃいパペットがぶら下がっているんです。あれは、3Dプリンターで部品を作って、くっつけて作っています。すごく小さいのにちゃんと全身動くっていうのが凄いんですよ。普通あんなに小さいと、大スクリーンでは見栄えしないんですよ。

──そんなに小さなパペットを、ちょっとずつ動かして撮影したわけですね……。

そうです!(笑)。僕じゃなくて、アニメーターたちがね。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

主人公はヒュー・ジャックマンがベース

──主人公のライオネル・フロスト卿について、『レイダース 失われたアーク』とシャーロック・ホームズを合わせたようなキャラクターと表現されていますね。このキャラクターは声優のヒュー・ジャックマンをもともと意識して作られたそうですが、彼をベースに作ろうと思ったのは何故ですか?

僕はいつも「キャラクターありき」で考えます。シャーロック・ホームズ大好きでして、彼ってヒーローですけど、欠点もありますよね。とてもエキセントリックで。変なところもあって、人付き合いも下手で、時に間違ったことも言う。典型的なヒーローではなく、自分中心。それでも映画ではヒーローになれる、そういうキャラクターが面白いと思うんです。

ヒュー・ジャックマンを意識したのは、もともと主人公役として理想的だと思っていたからです。こういう難しくてエキセントリックなキャラクターを、愛される、説得力のある、面白い人物にしようと思ったら、ヒュー・ジャックマンしかいないぞと。彼にはチャーミングなところがあって、そこが必要不可欠でした。ただエキセントリックなだけでは、好きになれないですからね。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2019 SHANGRILA FILMS LLC.

──オファーを受けたヒューはどんな様子でしたか?

実は時間がかかったんです。彼は世界一多忙な役者ですから。たしか、6ヶ月くらい追いかけたと思います。それくらい欲しかった。ライオネル卿には彼以外考えられなかったんです。キャラクターのデザインもヒューの要素を入れてましたし。だから絶対諦めたくなかったんですけど、彼が忙しすぎて、オーストラリア、ニューヨーク、それからまたどこかへ……という感じで。

とにかく彼が脚本を読んでくれるのを待ちました。そしたら彼から電話がかかってきたんです。その時僕はイングランドの実家に帰っている時で、母親と一緒でした。

──えっ、ヒュー・ジャックマン本人から直接電話がかかってきたんですか?

そうですよ(笑)。脚本を読んで、気に入りましたと。母親にも「ヒュー・ジャックマンから電話がかかってきた!」って。信じてもらえなかった(笑)。

彼はようやく時間を作ることができて、集中して脚本を読んでくださったそうです。それにスタジオライカのファンだったそうで、きっと僕たちがどれだけ真剣に作品に取り組んでいるかを分かってくださっているんだと思います。それからスタジオに見学に来ていただいて、こうやって製作しているんですっていうのをお見せしました。

──お母様はヒュー・ジャックマンが声を当てた完成版の作品を観て、どんな反応されてました?

すごく気に入ってましたよ!(笑)親って、子どもの仕事のことあんまり分かってないじゃないですか。数年前に母をスタジオ見学に連れて行ったことがあったんですけど、衝撃受けてましたね。とにかく『ミッシング・リンク』のことは気に入ってくれていました。ヒュー・ジャックマンのこともね(笑)。

──悪役のビゴット・ダンスビー卿って、ちょっとクリストファー・リーに似ていません?これって偶然ですか?

いや、偶然じゃないです(笑)。確かにクリストファー・リーを意識していました。実はダンスビー卿のデザインは何度も変わっていて、初期はもっと大きなヒゲがあったんです。でも胸の部分が大きいので、動かすのが難しいということで修正しています。クリストファー・リーの影響は、長い白髪と、ジェットブラックの眉毛ですね。いかにもイギリスの貴族な、お上品だけど冷たくて傲慢な感じにしたくって。

デザインする時にはいつも様々な役者の顔を思い浮かべるのですが、あなたの言う通りクリストファー・リーは取り入れていますよ。

──ではウィラード・ステンクは?邪悪なポテトヘッドって感じのデザインですが。

ハハハ(笑)。ステンクは面白くて、僕たち史上一番醜いキャラクターにしたかったんです。凸凹していて頭にキズがあって、鼻は自分が履いているカウボーイ・ブーツの金具と同じ形なんです。

スタジオライカの挑戦と、その原動力

 ──本作の脚本というか、構想は15年前から書いていたとお聞きしました。

はい。アイデアはノートにガシガシ書き込んでいました。こんなにあります。(ハードカバーの分厚いノートブックを3冊取り出して見せてくれる。)こういうノートが山程、ホントに山程あります。何年もかけてアイデアをぎっしり書いているから、数年後に見直して、「これは良いな」と思うものをまた1ヶ月くらいかけて書いて、煮詰まったらまた別のを書く、という感じ。ノートのおかげで、製作中も気持ちがクリエイティブに動きました。

──実はトラヴィス・ナイトさん(スタジオライカのCEOでプロデューサー、『KUBO』では監督を務めた)にも『バンブルビー』で来日された時にお会いさせていただいているのですが、『バンブルビー』は彼にとって初の実写映画で、「常に居心地の悪いところに行くようにしている(=常に慣れないことに挑戦し続ける)」と教えてくれました。あなたにとって、今作で大変だったチャレンジは何でしたか?

今作のスケールですね。脚本を書いている時は、ストップモーション・アニメの脚本を書いているって感覚はなくて、ただ“映画の脚本”を書いているって感覚でした。実写になるかも分からなかったですし。そうしたらスタジオが(ストップモーションでやるように)薦めてくれた。僕を安全地帯に閉じ込めるようなことをせず、可能性を制限したくなかったんでしょうね。だから、もしストップモーションでやるという前提で脚本を書いていたら、全然違う内容になったと思いますよ。

そういうわけで、脚本を書き始めたその初日から、ストップモーションでやるのは不可能なことを組み立てていたんですよね。あらゆるルールを打ち破る必要があった。難しいことでしたが、『パラノーマン』『ボックストロール』(2014)や『KUBO』で、たくさんの技術やアイデアを試していたし、作品を追うごとにどんどん野心的になっている。だから、やれば出来ると信じました。

──不可能に思えることでも、見事にやってのけた。スタジオライカの作品を鑑賞するといつも思うのですが、あなた方はどうしてそんなにクリエイティブなのですか?スタジオの皆さん、どんな雰囲気で、どんなカルチャーなんでしょう?

クリエイティブなスタジオでして、働いている人たちは全員、自分たちでこの(ストップモーションアニメという)アートの形を前進させるんだと興奮しているんです。ストップモーションアニメって、ある程度、ノスタルジックなもの、過去のものとして見られるでしょう。でもスタジオの全員、“ストップモーションはそれだけじゃない!”と思っています。

ストップモーションの歴史を振り返ると、レイ・ハリーハウゼンの作ったモンスターたちや、『スター・ウォーズ』のウォーカーや宇宙船、クリーチャーたちがあります。僕らがやりたいのは、こういった古いアートの形と共に走って、前に進むこと。ストップモーションが大好きで、滅びてほしくないと願っている人たちが集まっているんです。どうにかしてストップモーションを維持して、生かし続けたいんだという想いです。

この業界は狭くて、従事している人たちもそう多くないんです。同業他スタジオで働いている人にもよく会いますし。ストップモーションに情熱を注ぐ人たちのコアなグループがあって、そういう人たちが集まっているんです。それに僕らにはトラヴィスがいる。見たこともないような面白い物語を作りたがっている人物です。

スタジオの可能性が無限で、次にどんなものが作れるか分からない、っていうところに、僕たちは常にワクワクしているんです。

──そんなライカで仕事をしていて、今までで一番嬉しかった瞬間は?

おぉー。そうですね、僕は『コララインとボタンの魔女』(2009)でも仕事をしていたのですが、『パラノーマン ブライス・ホローの謎』(2012)の脚本の最初の30ページをトラヴィス・ナイトに渡した時に、オフィスに呼ばれて「次の映画はこれにしたい。君が監督をやってほしい」って言ってもらえた時ですね。正直、びっくりしました。自分のオフィスに戻って、一時間くらい放心状態になりました。それが一番の思い出です。

──で、二番目はヒュー・ジャックマンから電話がかかってきた時ですよね(笑)。

ハハハ(笑)。そうそう(笑)。

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒
©2020 SHANGRILA FILMS LLC.

──それでは最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。日本には、アニメ作品のファンが沢山いますから。

この作品には、僕たちの愛が詰まっています!大スケールのアクション映画、ジェットコースターのような映画を作ったつもりです。美しい世界の大冒険がお楽しみいただけますよ。そして、物語のテーマは、正反対なふたりの「友情」。特に今は世の中がこういう状況ですから、そこから抜け出して素晴らしい旅を楽しんでいただければ。どうぞお楽しみください!

──どうもありがとうございました!本当は本作のプロモーションで来日していただければ良かったです。ぜひ次の作品の機会にお待ちしていますね。

次の作品!ということは、また5〜6年後になるかなぁ(笑)。ありがとうございました!

映画『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』は2020年11月13日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開。

Writer

THE RIVER編集部
THE RIVER編集部THE RIVER

THE RIVER編集部スタッフが選りすぐりの情報をお届けします。お問い合わせは info@theriver.jp まで。

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