【インタビュー】『ミッシング・リンク』はなぜ野心的なのか ─ ヒュー・ジャックマンからの直電話に監督のお母さんもビックリ

『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)など、緻密ながら大胆なストップモーションアニメが作品ごとに話題を呼ぶスタジオライカ。彼らの最新作『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』は、世界を股にかける冒険映画だ。
監督は2012年にライカが放った『パラノーマン ブライス・ホローの謎』も手掛けたクリス・バトラー。主人公のライオネル卿には『X-MEN』シリーズや『グレイテスト・ショーマン』(2017)のヒュー・ジャックマン、その相棒のMr.リンク役は『ハングオーバー』シリーズのザック・ガリフィアナキスが声を演じたほか、旅を共にするアデリーナ役は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのゾーイ・サルダナが演じた。
気も遠くなるような製作の苦労話や、細かなところに込められたこだわり、ヒュー・ジャックマンからかかってきた電話のエピソードや、スタジオライカがクリエイティブである秘訣とは。クリス・バトラー監督に、THE RIVERが詳しく聞いた。

1週間かけて出来る映像、わずか1分
──どうもはじめまして!こちらは東京にいますが、クリスさんは?
はじめまして!オレゴン州のポートランドというところにいます。スタジオライカがあるところです。
──もろもろ、調子どうですか?不安な時期が続きますよねぇ。
今年は大変ですよねぇ。どうにかこうにか、って感じですよね。僕もここ暫くは自宅作業なんです。でも今月(2020年10月)はイングランドの実家に戻るつもり。
──ポートランドでは映画館は開いてます?
どうなんですかね。開いているところもあると思いますけど、いろいろ制約が厳しいのかなと。でも、大部分は閉館状況だと思います。大変ですよ。ほんと、異常事態。
──ですよね。さて、今日はお時間ありがとうございます。『ミッシング・リンク』楽しませていただきました!スタジオライカのストップモーションアニメの質の高さにはいつもながらに感嘆させられましたが、今作は特にキャラクターが好きで、ミスター・リンクが良かったですね。
それは良かった!ありがとうございます。
──ミスター・リンクが言葉を話すキャラクターっていうのにはちょっと驚いたんですよ。最初は、チューバッカみたいな感じなのかなって思ってまして。でも本当に可愛らしいし、クールでした。
アハハ(笑)。確かに、彼がこの映画のハート部分ですからね。

──ストップモーションって、ちょっとずつちょっとずつ製作されていくんですよね。今作では、一日あたり何分くらいの製作を進められたのですか?
ハハ(笑)。1分も作れませんよ。製作は1年半かかったんですが、中盤のころは、30人くらいのアニメーターが働いて、1週間かけて1分か1分半がせいぜい。
──えぇっ、1週間で1分……。えぇ〜?
でしょ(笑)。アニメーター総結集でそれくらい。気が遠くなりますよ。
──ってことは、30人がかりでひと月頑張って、やっと数分……っていう世界なんですね……?
そうです。すごいでしょう(笑)。特に今作は、ほんとに複雑でしたからね。

──いやぁ、すごすぎます……。映画では砂漠からヒマラヤ山脈まで、世界中を旅する映像が描かれるわけですが、特に作るのが難しかった景色はどこでしたか?
うーん。山は結構チャレンジでしたね。サイズがね。それから(デザインの)スタイルが全体的に写実的な感じで統一されていたから、広々とした雪山や雪原が出てきたとき、その景色をどう魅力的に見せられるかということにはこだわりました。プロダクション・デザイナーと僕で、凄まじいほど描き込みましたよ。特に氷の橋のシーン。ここが一番大変でした。まぁ正直なところ、この映画は全部が大変だったんですけどね。
森やジャングルの風景だったら、これまでのストップモーションアニメでもさんざんやってきたんですよ。小さな植物や花を綺麗に作ってくれる、それだけをここ3年間ずっとやってますっていう専門のアーティストさんもいるくらいで。だからそういうロケーション(森やジャングル)は僕らは慣れっこなんです。