【インタビュー】『ミッシング・リンク』はなぜ野心的なのか ─ ヒュー・ジャックマンからの直電話に監督のお母さんもビックリ

それから、ロケーションが1箇所だけじゃなくて、110箇所もあったことですかね。多くて大変でした。
ライカ史上最も昼間シーンが多い?
──ロケーションと言えば、これまでのスタジオライカって、夕暮れや夜のシーンが多かったですよね?だから『ミッシング・リンク』は、ライカ史上一番日光が多い作品なのでは。以前、『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)のスティーヴン・S・デナイト監督にインタビューさせていただいた時に、「昼間のアクション・シーンは夜と違ってディティールがよく見えるから描き込みが大変」とおっしゃっていたんですが、それってストップモーションアニメでも同じですか?
いやー、そうでもないですよ。でも面白いですね。実写映画だとCGを取り入れるわけですが、それを視覚効果で現実に寄せようとするわけですよね。だからディティールがフォトグラフィックに、正しいものに見えないといけない。たとえば、人間とモンスターが闘っているとしたら、そのモンスターも実写のように見えなくちゃいけないわけです。
一方、僕たちストップモーションアニメだと、出てくるもの全てが作り物なわけですよ。主演俳優もパペット。だから視覚効果も、パペットに合わせればいい。というわけで、昼のシーンでも夜のシーンでもあまり関係がない。どれくらいリアルに、細かくすればいいかは、全部僕たち次第ですからね。
だから、ちょっと事情は違うかなと思うんですが、彼の言っていることも分かります。僕たちの場合、日光の明るいシーンで日光をリアルに見せるのが難しかったです。特に屋外のシーン。実際に屋外で撮影しているわけじゃないから、空気中の埃であったり吐息であったりの表現が難しかったかな。

──昼間の明るいシーンでは、パペットの“皮膚”や衣装の質感が良く伝わってきて、良かったですよ!
そこはこだわりました!昼間のシーンでは、僕たちの職人魂もよく写りますからね。
──スタジオライカ作品では『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)の時も(海の)波の表現がすごかったですが、今作でもすごかったですね!『KUBO』の時にアニメーション・スーパーバイザーのブラッド・シフさんにインタビューさせていただいたことがあって、『KUBO』では海面の動きを表現するのに、色々な素材でシミュレートしていて、「一番良かったのが黒いゴミ袋だった」っておっしゃっていたんですが、今回も同じようなことをやったんですか?
僕たちが作るのは、触れることができるような世界なので、いつも現実にある素材で、手作業で始めるんです。『KUBO』と『ミッシング・リンク』では、そこから始めて、そしてVFXに移っていきました。社内にVFXの部署があって、ものすごいスキルがあるんです。彼らがその素材を、「参考資料」みたいな感じで受け取って、最終的な映像に仕上げてくれるんです。だから波や水もデジタルではありますが、全ては現実の素材を元に作られているんですよ。だからこそ、パペットが「そこに居る」感覚が表現できているんだと思います。
それから『KUBO』では水のシーンが多くなるだろうということで、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2013)からウォーター・エフェクトのトップのデビッド・ホースレイを雇い入れていました。彼が今作でも引き続き(水の描写を)やってくれています。『KUBO』での発明をたくさん採用していますが、今作では『ミッシング・リンク』流にスタイルを変化させたという感じですね。
──だからこそ、自然で、オーガニックな映像に仕上がっているということですね。あと、『KUBO』の時は16フィート(約4.9メートル)の巨大なガイコツを作って、それが一番誇らしいプロダクトだってシフさんはおっしゃっていたんですが、『ミッシング・リンク』でクリスさんはどうですか?
ひとつに絞るのは難しいですが、象のパペットですかね。劇中には数ショットしか登場しないんですが、あれもクリエイターたちが一生懸命作ってくれたもので、でっかいんです。それに、象の皮膚の感じの表現とか、ちゃんと歩けるように設計することとか、こだわりが詰まっています。象の皮膚ってシワがあって、たるんでいますよね。パペットでもそれを表現しました。
『KUBO』では大きいものを作りましたが、『ミッシング・リンク』では小さいものを作っています。氷の橋のシーンでは、これくらい小さなフル稼働パペットを作りました(指を5〜10センチほど広げて見せる)。ワイドショットの時に、ちっちゃいパペットがぶら下がっているんです。あれは、3Dプリンターで部品を作って、くっつけて作っています。すごく小さいのにちゃんと全身動くっていうのが凄いんですよ。普通あんなに小さいと、大スクリーンでは見栄えしないんですよ。