【インタビュー】『ミッシング・リンク』はなぜ野心的なのか ─ ヒュー・ジャックマンからの直電話に監督のお母さんもビックリ

──そんなに小さなパペットを、ちょっとずつ動かして撮影したわけですね……。
そうです!(笑)。僕じゃなくて、アニメーターたちがね。

主人公はヒュー・ジャックマンがベース
──主人公のライオネル・フロスト卿について、『レイダース 失われたアーク』とシャーロック・ホームズを合わせたようなキャラクターと表現されていますね。このキャラクターは声優のヒュー・ジャックマンをもともと意識して作られたそうですが、彼をベースに作ろうと思ったのは何故ですか?
僕はいつも「キャラクターありき」で考えます。シャーロック・ホームズ大好きでして、彼ってヒーローですけど、欠点もありますよね。とてもエキセントリックで。変なところもあって、人付き合いも下手で、時に間違ったことも言う。典型的なヒーローではなく、自分中心。それでも映画ではヒーローになれる、そういうキャラクターが面白いと思うんです。
ヒュー・ジャックマンを意識したのは、もともと主人公役として理想的だと思っていたからです。こういう難しくてエキセントリックなキャラクターを、愛される、説得力のある、面白い人物にしようと思ったら、ヒュー・ジャックマンしかいないぞと。彼にはチャーミングなところがあって、そこが必要不可欠でした。ただエキセントリックなだけでは、好きになれないですからね。

──オファーを受けたヒューはどんな様子でしたか?
実は時間がかかったんです。彼は世界一多忙な役者ですから。たしか、6ヶ月くらい追いかけたと思います。それくらい欲しかった。ライオネル卿には彼以外考えられなかったんです。キャラクターのデザインもヒューの要素を入れてましたし。だから絶対諦めたくなかったんですけど、彼が忙しすぎて、オーストラリア、ニューヨーク、それからまたどこかへ……という感じで。
とにかく彼が脚本を読んでくれるのを待ちました。そしたら彼から電話がかかってきたんです。その時僕はイングランドの実家に帰っている時で、母親と一緒でした。
──えっ、ヒュー・ジャックマン本人から直接電話がかかってきたんですか?
そうですよ(笑)。脚本を読んで、気に入りましたと。母親にも「ヒュー・ジャックマンから電話がかかってきた!」って。信じてもらえなかった(笑)。
彼はようやく時間を作ることができて、集中して脚本を読んでくださったそうです。それにスタジオライカのファンだったそうで、きっと僕たちがどれだけ真剣に作品に取り組んでいるかを分かってくださっているんだと思います。それからスタジオに見学に来ていただいて、こうやって製作しているんですっていうのをお見せしました。
──お母様はヒュー・ジャックマンが声を当てた完成版の作品を観て、どんな反応されてました?
すごく気に入ってましたよ!(笑)親って、子どもの仕事のことあんまり分かってないじゃないですか。数年前に母をスタジオ見学に連れて行ったことがあったんですけど、衝撃受けてましたね。とにかく『ミッシング・リンク』のことは気に入ってくれていました。ヒュー・ジャックマンのこともね(笑)。
──悪役のビゴット・ダンスビー卿って、ちょっとクリストファー・リーに似ていません?これって偶然ですか?
いや、偶然じゃないです(笑)。確かにクリストファー・リーを意識していました。実はダンスビー卿のデザインは何度も変わっていて、初期はもっと大きなヒゲがあったんです。でも胸の部分が大きいので、動かすのが難しいということで修正しています。クリストファー・リーの影響は、長い白髪と、ジェットブラックの眉毛ですね。いかにもイギリスの貴族な、お上品だけど冷たくて傲慢な感じにしたくって。
デザインする時にはいつも様々な役者の顔を思い浮かべるのですが、あなたの言う通りクリストファー・リーは取り入れていますよ。
──ではウィラード・ステンクは?邪悪なポテトヘッドって感じのデザインですが。
ハハハ(笑)。ステンクは面白くて、僕たち史上一番醜いキャラクターにしたかったんです。凸凹していて頭にキズがあって、鼻は自分が履いているカウボーイ・ブーツの金具と同じ形なんです。
スタジオライカの挑戦と、その原動力
──本作の脚本というか、構想は15年前から書いていたとお聞きしました。