『ミッション:インポッシブル』スピンオフは不可能?「スピンオフさせると、二つのことが失われる」と監督が分析 ─ 「一つはイーサン・ハントのスケールとアクション」

トム・クルーズ主演『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が大ヒット中だ。副題に“ファイナル”とあるように、本作はシリーズ集大成的な作品。世界的なヒットを記録しているが、現時点でまだ続編の予定は発表されていない。
同シリーズではトム・クルーズ演じる主人公イーサン・ハントのほか、魅力的なキャラクターが数々登場する。さまざまなエージェントが所属する秘密諜報組織「IMF」は、ストーリーテリング上で肥沃な題材となるだろう。スピンオフを制作して、世界観を拡張するという手段も検討できる。
一方、監督のクリストファー・マッカリーはこうした展開の可能性に懐疑的だ。ちょうど現在『ジョン・ウィック』シリーズがスピンオフ映画『バレリーナ:The World of John Wick』をリリースしてユニバース拡大に挑んでいるように、『ミッション:インポッシブル』でも同様の方法はありえるかと米The New York Timesに尋ねられたマッカリーは、次のように考えを返している。
「『ミッション』とは何なのか?ということです。『ミッション』とは、かなり特徴的な映画製作であり、そこには役者本人が全てのアクションを自分でこなすということも含まれる。もしキャラクターをスピンオフさせるとなると、それは全く別の物語になるでしょう。どうすればうまくいくのか、私も興味がありますね。」
マッカリーはシリーズに登場するキャラクターについて、「彼らのことが大好きな理由は、彼らがチームだということ」と強調。「みんな素晴らしいキャラクターですが、スピンオフさせると、そこでは二つのことが完全に失われてしまう」と分析する。「一つは、イーサン・ハントがシリーズにもたらすスケールとアクションの要素がなくなること。そしてもう一つは、チームを失うということです。それは、私たちが知る『ミッション』ではなくなってしまう」。
ただし、「新しい『ミッション:インポッシブル』を発明することはできないというわけではありませんよ」とマッカリーは言葉を補う。とはいえ、これまでの映画と同じようにうまくいくとは信じていないようだ。「何作か作った立場として言えるのは、“グッドラック”ってことです」と続けているから、仮にスピンオフ企画が立ち上がったとしても、マッカリーが関与するとは考えにくいかもしれない。
ここで思い出されるのが、『アベンジャーズ』ルッソ兄弟監督が手がけたPrime Videoのドラマ「シタデル」シリーズ。新たなスパイ・ユニバースとして世界各国を舞台としたスピンオフを展開する戦略で注目を集めたが、インド版「シタデル ハニー バニー」とイタリア版「シタデル ディアナ」が打ち切りに。すっかり勢いを失い、現在はメインシリーズのみシーズン2に向けて準備されている。スパイアクションもののユニバース展開は難しいのだ。
本格的なスピンオフ作品はないとしても、例えばサイモン・ペッグが演じるベンジーのちょっとした日常を描く短編ワンショットは楽しい息抜きになるかもしれない。「ベンジーは自宅でどんなことをしてリラックスしていると思いますか?」筆者の取材に、ペッグは「テレビゲームをしていると思います。『ローグ・ネイション』でもゲームをしていたし、なかなかのゲーマーだと思いますよ」とノリノリで答えており、ベンジーの日常には楽しいアイデアを持っていそう。「音楽は、きっとマイナーなJ-POPを聴いているかも。それか、ピチカート・ファイヴ!」
▼ 『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の記事
Source:The New York Times