【第一回】THE RIVERニュースレター 5月12日号 ─ 注目トピックをまとめてご紹介

THE RIVERのニュースレターです。今回より新たに始まったこのコーナーでは、日々のニュースや話題から注目のトピックを厳選して紹介・解説します。
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きょうの話題
- 『AIR/エア』早期配信デビューの理由
- 恐怖のプーさん、今度はゲームに
- AI脅威論、映画界に
- レイ・リオッタの死因が明らかに
『AIR/エア』早期配信デビューの理由
マット・デイモンとベン・アフレックのタッグ作『AIR/エア』がPrime Videoで5月12日より配信開始となった。日本公開は4月7日だったので、約1ヶ月での配信デビューだ。良くも悪くも「早すぎる」との声が多いが、実は元々Prime Videoの配信主体映画が劇場先行公開されていたというもので、本作に限っては異なる受け取り方となる。
アメリカでは3500館以上という大規模映画並みのデビューで、世界累計興収は8,185万ドル。既に製作費をほぼペイし終えた状態で配信という本領地に入る。Rotten Tomatoesでも批評家スコア92%、観客スコア98%と評判。早くも来年のアカデミー賞候補と目されていることから、今後話題になればAmazon StudiioやPrime Video、およびAmazon全体を強力に訴求できる盛り上がりを再び作ることができる。まだ新人のマイケル・ジョーダンに全てを賭ける戦略に出るという劇中の展開同様、スタジオは本作で大きなリスクを取ったが、今のところ奏功しているようだ。
ちなみに本国アメリカではAmazon Studiosが配給を行ったが、日本を含む国際市場ではワーナー・ブラザースが担当。これは日本でも初の組み合わせとなった。
恐怖のプーさん、今度はゲームに
著作権が失効してパブリックドメインになった「くまのプーさん」関連の作品が続々登場している。特にネットで話題になったのは6月23日日本公開のインディホラー映画『プー あくまのくまさん』だが、ほかにも薬物まみれになった成人クリストファー・ロビンが喋る動物の幻覚と暮らすというR指定アニメシリーズも製作予定。さらには、恐怖の100エーカーの森でサバイブするインディFPSゲーム『Hundred Acre Wood』もSteamにて告知された。襲いかかってくるプーさんから逃げるゲームで、イーヨーやラビット、オウル、ピグレット、カンガといったキャラクターがお助けキャラで登場するらしい。
“世界一のトラ”ことティガーはこのゲームにも『プー あくまのくまさん』にも登場しない。ティガーの初登場は1928年の作品だったため、まだパブリックドメインになっていないからだ。米国著作権法では95年と認められているため、逆に言えば今年2023年を最後にティガーもパブリックドメインになる。メルヘンな子ども向け作品をホラーやバイオレンスに逆用するのは定番だ。今後は飛び跳ねるティガーが襲ってくる作品もどこかで作られそう。
ちなみに、『蒸気船ウィリー』のミッキーマウスの著作権も2023年に失効することとなっており、これによって理論上は様々な二次創作が可能になる。ただし米ディズニーは「ミッキーマウス」の名称を商標登録しているので、キャラクターを使って自由に商売できようになるというわけではない。また、日本では異なる著作権法があるため注意が必要だ。
AI脅威論、映画界に
AI脅威論が映画界にも訪れている。現在、業界に大きな影響を及ぼしている全米脚本家組合のストライキが実行された理由には、AIから脚本家の立場を守るためのものというのが一つある。テキストや画像、音声などを作る「生成AI」は既存の作品を学習して新たなものを作るが、これが二次使用や著作権侵害にあたるとみなされるかは、まだ議論や法整備が追いついていない。アメリカでは、絵画や写真の分野で訴訟が起こっていたり、作品をAIから保護するテクノロジーが開発されていたりする。
『アベンジャーズ』シリーズのジョー・ルッソ監督は、2年以内にはAIが映画を作るようになるだろうと見る。誰もが自分だけのストーリーを作れるようになると明るい面を語っていたが、一方で脅威論も表明している。例に挙がったのは、DrakeとThe Weekendの声や曲調を模したAI生成の楽曲「Heart on my sleeve」で、このデジタルクローンのような楽曲は音楽業界において知的財産権や倫理面の論争を巻き起こした。映画やTVドラマの脚本でも、生成AIを使えば同様のことは可能になる。
「誰もがAIを恐るべき」「ツールのために人があるのではなく、人のためにツールがあるべきだ」とジョー・ルッソは話す。全米脚本家組合は作品づくりにAIを関わらせないように求めているが、全米映画テレビ制作者協会との合意にはまだ至っていない。この先のあらゆる創作において、AIが踏み込めない“聖域”は残るだろうか。19日から広島で行われるG7サミットでは、AI活用の国際的なあり方も議論される。
レイ・リオッタの死因が明らかに
レイ・リオッタ。やはりスコセッシの『グッドフェローズ』での印象が鮮烈だ。劇画のような目元から放たれる青い眼光と、きゅっと結ばれた口元。あの顔力あってこそ、あのとんでもない結末がよく映えた。『ハンニバル』でもそうだ。
2022年5月に67歳で亡くなったリオッタの死因が判明した。呼吸不全、肺水腫、急性心不全だった。糖尿病や動脈硬化も患っていたという。『Dangerous Waters(原題)』という新作映画の撮影のため訪れていたドミニク共和国で他界。その当時の報道によるとリオッタは、眠ったまま息を引き取っていたという。
水上スリラーとされるインディー映画『Dangerous Waters』の撮影がその後どうなったかは、まだ伝えられていない。目下リオッタの遺作となっているのは、薬物を摂取したクマとの戦いを描くスリラー・コメディ『Cocaine Bear(原題)』。2月に公開された同作はマーベルの『アントマン&ワスプ:クアントマニア』と善戦し、製作費のおよそ3倍の興行収入(8,750万ドル)をちゃんと稼いだ。日本の劇場公開予定はなかなか聞こえてこないのだが……。
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