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THE RIVERニュースレター 6月9日号 ─ エンタメの最新ニュース解説

THE RIVERのニュースレターです。日々のニュースや話題から注目のトピックを厳選して紹介・解説します。面白い最新情報や、タメになる話まで。THE RIVER運営代表の中谷が担当。

AIによるテキスト生成チャット、ChatGPTが話題です。ちょうど「ブラックミラー」の脚本家が試しにChatGPTにエピソードを書かせてみたら、「一見するともっともらしく読めるが、よく見るとクソみたいな内容」が出来上がったという記事もありました。

今のところChatGPTを実用化するには用途や場面を選んで注意する必要がありますが、メディア運営者である僕としてはこのテクノロジーは非常に脅威だと思っています。なぜなら近い将来、それもほんの1〜3年ほどの間に、簡単な記事であればAIが執筆することができるようになるはずです(一部のメディアでは、既に実践されているところもあります)。そうなれば、我々のような記者の仕事が奪われることになるでしょう。

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しかしもっとあり得そうなのは、iPhoneなどスマートフォンに、もっと実用的で信頼できるAI機能が標準搭載されることです。例えばこのAIが、ユーザーの好みの情報を収集し、分かりやすい形で文章化して、自動でニュースを生成して、毎朝届けてくれるとしたらどうでしょう。メディアの存在意義はたちまち危ういものになり、わざわざWebサイトやアプリを開いて記事を読む人の数は激減してしまうかもしれません。

もちろん、メディア運営や記事の執筆は創造性が大いに求められるものなので、あらゆる仕事が直ちにAIに置き換えられるものとは考えていません。しかし、コンテンツの生成方法や、世の中のAIに対する考え方は、ここ1〜3年ほどで劇的に変化するはずです。メディアや記者は、いつまでも旧来的なやり方に頼ることはできないでしょう。

「……が、しかし」という話なのですが、先日ChatGPTに情報収集を頼んでみたら、とんでもない嘘をでっち上げられたことがありました。「リーアム・ニーソンとジェシカ・ラングが共演した映画はある?」と尋ねてみたところ、ChatGPTは『タイトロープ(原題: The Misconduct)』という謎の殺人事件をめぐる闘争を描く法廷劇映画で、リーアム・ニーソンが検察官役、ジェシカ・ラングが弁護士役を演じたというのです。

しかし、『タイトロープ(原題: The Misconduct)』という法廷映画は存在しません。1984年公開のクリント・イーストウッド主演『タイトロープ(原題:Tightrope)』や、2016年公開のジョシュ・デゥアメル主演『ブラック・ファイル 野心の代償(原題:Misconduct)』という映画はあるのですが、リーアム・ニーソンもジェシカ・ラングも関わっていないのです。

「それは何年に公開された映画ですか?」と真偽を聞いてみると、ChatGPTは「私の知識の範囲では、リーアム・ニーソンとジェシカ・ラングが共演した映画『タイトロープ』は存在しないようです」と、真逆のことを言い出します。改めて「リーアム・ニーソンとジェシカ・ラングが映画で共演したことはある?」と問うと、「申し訳ありません、私の知識の範囲では、リーアム・ニーソンとジェシカ・ラングが共演した映画についての情報は見つかりません」と誤りを認めたのでした。実のところ、リーアムとジェシカは1995年の映画『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』で共演しているのにです。

もうずいぶん前ですが、ネットでこんな笑い話が流行りました。「私が作成したエクセルの計算を、オジサン上司が電卓で計算し直している」というようなものです。近い将来AIがさらに進化すれば、「AIが導き出した回答を、人間がダブルチェックする」というのは、笑い話になるのでしょうか。

それでは今日の話題に移りましょう。

きょうの話題

  • 『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の音響問題
  • 『コンスタンティン』続編、プロデューサーも「知らない」
  • ザック・スナイダー新作『Rebel Moon』は複数カットで二部作配信へ
  • ドラマ「ペリー・メイスン」シーズン2で打ち切り

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の音響問題

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の英語版で、セリフが聞き取りづらいという音響上の問題が海外で多数指摘されている。BGMや環境音に対して、登場人物のセリフの音量が小さすぎるため、何を言っているのかが分かりにくいというものだ。

筆者も試写では字幕版で鑑賞したが、確かに聞き取りづらい実感はあった。特に本作では、インドやイギリスなど各地の英語を話すスパイダーマンが登場するので、英語ではリスニング能力が試される。日本で観る場合は字幕があるし、吹替版であればミキシングの問題も解消されているはずだ。

『コンスタンティン』続編、プロデューサーも「知らない」

キアヌ・リーブス主演の人気映画『コンスタンティン』(2005)は長らく続編の意向が伝えられているが、なかなか前に進みそうにない。DCユニバースも再編され、企画もこれまでのようには通りにくいだろう。

1作目でプロデューサーを務めたロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラも、この続編について「知らない、関わっていないのでわからない」と新たに語っている(ボナヴェンチュラとは筆者も複数回お話ししたことがあるが、事実をズバズバと言う方だ)。少し前には、前作主要キャストのレイチェル・ワイズも「何も聞いていない」と話していた。キアヌ自身も「実現するかどうかわからない」と言っているので、今はあまり期待しない方がいいのかもしれない。

おそらくDCスタジオのジェームズ・ガンは、スーパーマンやバットマンなどメインのシリーズは完全に自身の管理下で進めて、『ザ・バットマン』や『ジョーカー』シリーズなど“エルスワールド”の作品は、100%の信頼を寄せられる、直近で実績のあるフィルムメーカーに任せたいと考えていることだろう。実現のためには、まずプロデューサー陣や続投のフランシス・ローレンス監督が、DCスタジオと足並みを揃える必要がありそうだ。

ザック・スナイダー新作『Rebel Moon』は複数カットで二部作配信へ

ザック・スナイダー監督がNetflixで配信する新作SF大作映画『Rebel Moon』は二部作になる……というのはこれまでも伝えられていた通りなのだが、それぞれ「複数のカット」が公開されるという。

スナイダーによれば、最初のカットは「誰もが楽しんで観られるもの」で、2つ目のカットは「もっと大人向け」で「深掘りできる」になる。ディレクターズカット版のような形で、未公開シーンや別編集版を織り交ぜたバージョンが作られるということだろうか。ストリーミング配信ならではの自由度の高いリリース形式と言えそうだ。『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダー・カット』の前例もある。

この『Rebel Moon』は、もともとスナイダーが『スター・ウォーズ』の新作企画として独自に練っていたもので、黒澤明『七人の侍』(1954)からインスパイアされているという。残念ながらルーカスフィルムからは断られてしまったため、それならばとNetflixで独自作として作り直す意欲作。1作目は2023年12月22日に配信予定で、続編も「あまり間を空けずに」配信予定。「Netflixなら、伝統的な映画スタジオにはできないような、近い日程での連続公開ができる」とスナイダーは話す。

ドラマ「ペリー・メイスン」シーズン2で打ち切り

ドラマ「ペリー・メイスン」は、残念ながらシーズン2をもって打ち切り終了となるようだ。

1930年代のロサンゼルスを舞台に、弁護士ペリー・メイスンが事件調査に挑んでいくミステリー。ロバート・ダウニー・Jr.のチーム・ダウニーが製作を務めたことも話題となり、シーズン1ではエミー賞にも複数ノミネートされた。評価も上々で、Rotten Tomatoesではシーズン1の評価が75%、シーズン2では87%に上昇していた。

製作費に対して視聴者数が稼げなかったための打ち切りと見られている。硬派な内容だけに、視聴者数ファーストとなる方針下で継続するのは難しいのだろう。将来的にチーム・ダウニーとはまた仕事をしたいと、放送のHBOは声明の中で述べている。なおHBOでは、最近も「ウエストワールド」が打ち切りになったことがあった。

情報参考:Comicbook.com,Deadline,Variety

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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