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ノーラン、ヴィルヌーヴ、ジェームズ・ガンら反発、ワーナーの劇場&配信戦略に業界抵抗 ─ 『ワンダーウーマン 1984』ガル・ガドットらに追加報酬1,000万ドル

[左・右]Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/28663744545/ | [中]Richard Goldschmidt https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Christopher_Nolan,_London,_2013.jpg | Remixed by THE RIVER

『マトリックス4(原題)』『ゴジラ VS コング(原題)』そして『DUNE/デューン 砂の惑星』など、2021年公開の映画全17作を劇場公開と同日に配信リリースする。米ワーナー・ブラザースによる突然の発表は、フィルムメーカーと業界のビジネスマンに激震をもたらした。

『インソムニア』(2002)からワーナーと手を組んできたクリストファー・ノーラン監督は、ワーナーに不信感を抱いたことを明かし、米The Hollywood Reporterでは、さらに強い言葉によってワーナーを批判している。

「業界最高のフィルムメーカー、業界で最も重要な映画スターたちは、眠る前に、自分の仕事相手である最高の映画スタジオについて考えるわけです。しかし目が覚めたら、彼らは最低のストリーミングサービスのために働くことになってしまった。ワーナー・ブラザースは劇場であれ自宅であれ、どんな場所でもフィルムメーカーに成功をもたらす素晴らしい組織でした。しかし、今こうしている間にも、それが解体されているのです。彼らは自分たちが失っているものを分かっていません。今回の決定には経済的な観念が抜け落ちています。思い付きの投資家でさえ、混乱と機能不全の区別はつくというのに。」

ワーナーの決定に不満を抱いているのはノーランだけではない。『DUNE/デューン』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は従来通りの劇場公開が作品に不可欠との理由から不快感を示し、『イン・ザ・ハイツ』を控える『クレイジー・リッチ!』(2018)のジョン・M・チュウ監督はショックを受けたという。人気ミュージカルである原作を大スクリーンで映画化するため、チュウはNetflixの高額オファーを断っていたのだ。DC映画『ザ・スーサイド・スクワッド』が待機中のジェームズ・ガン監督は作品発表のプラットフォームにこだわらないことで知られるが、それでも今回の決定には不満だったと伝えられている。

映画に関係するキャスト&スタッフへの告知が直前になったのは、ワーナーがサプライズ発表の流出を恐れたためだという。しかし、この判断は裏目に出た。『DUNE/デューン』『ゴジラ VS コング』に出資したレジェンダリー・ピクチャーズがワーナーへの訴訟に踏み切る可能性もあるほか、米The New York Timesによれば、業界のエージェントやマネジメント企業にも発表の約90分前まで通知が届かなかったため、各社にクライアントからの問い合わせが殺到。これによって訴訟が相次ぐ可能性もあるほか、すでに全米監督協会ではワーナーへのボイコットを検討する声も上がっているという。

一方、ワーナーは『ワンダーウーマン 1984』を劇場公開と同時に配信リリースするため、主演のガル・ガドット、パティ・ジェンキンス監督にそれぞれ1,000万ドル以上を追加で支払う契約を結んでいたことが判明している。従来の劇場公開モデルの場合、作品がヒットすればキャストや監督、プロデューサーには追加報酬が支払われる。配信リリースの同時展開にあたり、ガドットやジェンキンス監督らは本来受け取っていたであろう金額をワーナーに求めたということだ。

2021年のワーナー作品には、マーゴット・ロビーやキアヌ・リーブス、トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、ジャレッド・レト、ウィル・スミス、アンジェリーナ・ジョリー、ティモシー・シャラメ、ヒュー・ジャックマン、クリント・イーストウッドらそうそうたるスター俳優たちの名前が並んでいる。今後、ワーナーが『ワンダーウーマン 1984』と同様の再契約を17作品すべてに行うかどうかは分かっていない。しかし、ワーナーほどの巨大スタジオが劇場での大ヒットを狙わないのだとしたら、キャストや監督の契約のありかたも変わってくることになるだろう。

The Hollywood Reporterでは、ノーランに限らず、業界に広がるワーナーへの不信感が報告されている。とあるエージェントは「ワーナーはタレントやフィルムメーカーに優しいスタジオでした。しかし、今では一番仕事をしたいスタジオではない。二番手、三番手になってしまいます」とコメント。ある重要人物を担当するエージェントは「(ワーナーは)“才能なんかどうでもいい”というメッセージを輝かせて、“最もタレント・フレンドリーなスタジオ”という数十年間の財産を投げ捨てた」と述べた。

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Sources: The Hollywood Reporter, The New York Times

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。外部寄稿に『TENET テネット』『ジョーカー』『シャザム!』『ポラロイド』劇場用プログラム寄稿など。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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