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クリストファー・ノーラン、『ダークナイト』3部作は「良い時期だった」 ─ ヒーロー映画ブーム直前の創作を振り返る

ダークナイト
© Warner Bros. Entertainment, Inc.

『TENET テネット』(2020)『ダンケルク』(2017)などのクリストファー・ノーランは、DCコミックスを代表するヒーロー、「バットマン」を撮って映画監督としてのキャリアを飛躍させた。ノーランが『ダークナイト』3部作を発表した2005年から2012年は、現在ほどヒーロー映画が業界のトレンドとなっていなかったころ。現在、ノーランは“当時ならではの”メリットを振り返っている

2020年11月18日(米国時間)、オンラインイベントに登場したノーランは「自分が描きたい物語を伝える上で良いタイミングだった」と回想。第1作『バットマン ビギンズ』(2005)では、過去にバットマンのオリジン・ストーリーがコミックでも完全に描かれていなかったことも追い風になったという。

「(オリジンを描くために)自分たちが追いかけるべきものもこれといってなかったし、(バットマンの)映画の歴史にも空白があった。スーパーマンにはクリストファー・リーヴとリチャード・ドナーによる決定版があるけれど、バットマンにはそういうものがなかったんです。そこで、ごく普通の世界で普通ならざる存在を描こうと考えました。」

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“追いかけるべきもの”がなかった、そして当時は“ヒーロー映画かくあるべし”という既成概念もあまりなかったがゆえに、ノーランはその後も「創造的に大きな自由を得て」シリーズを作り上げることに成功する。『ダークナイト』(2008)『ダークナイト ライジング』(2012)と、作品ごとに作家性が強まっていったのは、まさしくその証左といえるだろう。

「当時のもうひとつの利点は、続編を作るまでに時間をもらえたことでした。『バットマン ビギンズ』をやった時には、続きを作ると思っていなかったし、実際に3年かかったんです。その次(『ダークナイト ライジング』)までの間は4年。時間を贅沢に使いましたね。スタジオのビジネスのエンジンにさせられているという感じはありませんでした。」

ノーランの『ダークナイト』3部作は、そのチャレンジングな作風をもってヒーロー映画の歴史を変えた。しかし、現在のヒーロー映画のビジネス的な隆盛に直接つながったのは、奇しくも『ダークナイト ライジング』の直前に米国公開された『アベンジャーズ』(2012)だろう。良質な作品をハイペースで発表し、世界の業界と観客を巻き込んでいくマーベル・スタジオのスタイルは、その後もいっそう加速していくことになる。『ダークナイト』3部作では創造の自由を確保したワーナー・ブラザース/DCコミックスも、そののちには作品の創作に介入しようとしてトラブルを生んできた。

もしもノーランがバットマン映画に着手するタイミングが遅れていれば、いったいどうなっていたことか。今、ノーランは「ジャンルが成功するほど、プレッシャーはどんどん大きくなる。だから良いタイミングだったと思うのです」と述べている。

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Source: IndieWire

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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