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『ノマドランド』監督、本来はマーベル映画『エターナルズ』を先に完成予定だった

ノマドランド
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の新作映画『エターナルズ』を手がけるクロエ・ジャオ監督は、自身の最新作『ノマドランド』で第93回アカデミー賞の作品賞・監督賞を受賞。同作は主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)に輝いたほか、脚色賞・撮影賞・編集賞にもノミネートされた。

期せずして『エターナルズ』は、オスカー受賞監督が手がける初めてのMCU作品となり、さらに大きな注目を集めることとなった。またジャオ監督にとっても、本作ははじめての大作映画である。しかし、本来は『ノマドランド』よりも先に『エターナルズ』が完成するはずだったというのだから、運命とは不思議なものだ。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、米Varietyの取材にてこう証言している。

「彼女(ジャオ監督)は当初、『エターナルズ』が完成するまで『ノマドランド』を棚上げしておくつもりだったんです。『エターナルズ』が公開されたら作業に戻るはずだった。それがコロナ禍で(『エターナルズ』が)中断されたことによって、先に作っていた作品を仕上げようと決めたんです。」

実際、もともと『エターナルズ』は2020年11月に米国公開を迎える予定だった。一方の『ノマドランド』は、『エターナルズ』の公開延期が決まったあとの2020年8月に、翌月のヴェネツィア国際映画祭&トロント国際映画祭でプレミア上映が決定したのである。ジャオ監督も「ふたつの映画を連続で作っていました」と述べ、発表の順序が入れ替わったことを認めている

「私の比較的短いキャリアにも、いろんな出来事がありました。そこで学んだのは、ちょっとした決まり文句のようではありますが、“起きることにはすべて理由がある”ということ。こんなふうに『ノマドランド』がみなさんに伝わるとは予想もしませんでしたが、すべてがうまくいったのです。」

ノマドランド
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

ちなみにファイギ社長によれば、ジャオ監督は当初『ブラック・ウィドウ』の監督候補としてマーベルを訪れていたそう。しかしジャオは、アイデアの提案を控えながらも自分の意志で企画を離れたという。「時間がなかったのか、準備ができていなかったのか、それとも『ノマドランド』の準備があったのかは覚えていませんが」とはファイギの談だ。その後、ジャオは『エターナルズ』の候補者として再び登場し、「すさまじく壮大なアイデア、大胆かつ野心的なプレゼンテーション」で監督の座を射止めた。これまた、“起きることにはすべて理由がある”ということだろう。

『ノマドランド』のアカデミー賞受賞を受けて、ファイギ社長は「これはジョークですが、巨大なマーベル作品を休んでいる間に、情熱的なプロジェクトを完成させてもらったら、それがアカデミー賞の歴史に名前を残すこともあるんですよ。この運が続くといいですね」と話した。従来、アカデミー賞においてスーパーヒーロー映画は主要部門から無視されがちな傾向があるが、ジャオ監督が『ノマドランド』の次に放つ『エターナルズ』はどうなるか。賞レースでの健闘にもさっそく期待がかかる…?

映画『エターナルズ』は2021年11月5日(金)に全国公開。『ノマドランド』は2021年3月26日(金)より全国公開中。

Sources: Variety(1, 2

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。