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なぜアメコミ映画に無関心だった監督がマーベル『シャン・チー』を撮ったのか ─ 「アジア系」の表現をアップデートせよ、MCUの新たな挑戦

シャン・チー/テン・リングスの伝説
©Marvel Studios 2021

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)新作映画シャン・チー/テン・リングスの伝説』は、『ブラックパンサー』(2018)『キャプテン・マーベル』(2019)に続くマーベル・スタジオの新たな挑戦だ。黒人ヒーロー、女性ヒーローの単独映画を成功させてきたMCUに、初のアジア系ヒーロー映画が加わる。

監督のデスティン・ダニエル・クレットンは、日系の母親と、アイルランド&スロバキア系の父親の間にハワイの地で生まれた。『ショート・ターム』(2013)や『ガラスの城の約束』(2017)『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)といった人間ドラマを手がけてきたデスティンは、もともとアメコミ映画を撮ることに関心がなかったという。しかし、2018年に『シャン・チー』の第一報が伝えられた時、その考えは翻った。米Entertainment Weeklyにて、監督はこう語っている。

「(『シャン・チー』の)発表があった時、すぐに子どもの頃を思い出しました。僕はスパイダーマンが好きだったんですが、それは彼がマスクを被っていたから。僕でもハロウィンにスパイダーマンの格好をすることができた。自分みたいな存在も映画には出てきたけれど、(ハロウィンに)選べるのはほんの一握り。その中にスーパーヒーローはいませんでした。」

もしも自分が小さい頃、アジア人のキャストによって繰り広げられるヒーロー映画があったなら、いったいどんなふうに反応しただろうか……。そんな思いとともに、デスティンはマーベルとの面談に臨んだ。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、「普通の面談とは違いました」と笑いながら振り返る。「(監督が)“僕はこういう映画にまったく興味がなかったんですけど”って言い出したんです」

デスティン・ダニエル・クレットン
デスティン・ダニエル・クレットン|Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/48469282532/ Remixed by THE RIVER
シム・リウ
シム・リウ|Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/48469103901/ Remixed by THE RIVER

主演に抜擢されたシム・リウは、長らくアジア系ヒーロー映画の登場を待っていた一人。2014年7月、リウはTwitterにて「ヘイ、マーベル。キャプテン・アメリカとソーは最高だけど、アジア系アメリカ人のヒーローなんてどうでしょう?」ツイート。2018年12月にも「OK、マーベル。話し合いをしましょう、シャン・チーの」投稿していたのだ。

シムは「マーベルにツイートしたら連絡が来るだろう、役がもらえるだろう、なんて思ったことはありませんでしたよ」と笑う。しかし、結果的にシャン・チー役のオーディションへの切符を手にしたのだから、ちょっとした行動が実を結ぶとはこのことであろう。『シャン・チー』公式発表後の2019年7月、シムは「連絡をありがとう」ともツイートしている。

『シャン・チー』の脚本を執筆したのは、『ワンダーウーマン 1984』(2020)のデイヴ・キャラハム。中国系アメリカ人として、デスティンやシムとともにシャン・チー像のアップデートに挑んだ。コミックのシャン・チーについて、シムは「70~80年代にアジア系のキャラクターである彼が存在したという事実は素晴らしいけれど、描き方にはステレオタイプ的だと感じられるところもありました」と語る。そこで製作陣は、最初にキャラクターの本質や物語を検討し、ステレオタイプな人物造形にならぬよう、細心の注意を払って映画版ならではのシャン・チー像を構築していった。

監督が求めたのは、アジア系アメリカ人としてのアイデンティティをめぐる物語をなるべく現実的に描くこと。そして、そのためにアジア系のキャスト&スタッフを起用することだった。「アジア文化は本当に多様」と語るデスティンは、自らのルーツであるハワイに言及しながら、チームの仕事ぶりをこう語る。

「ハワイの食事には中国・日本・韓国・ハワイ・フィリピンの文化が混じっているけれど、今回のチームもそういう感じ。まるで、アジア文化の巨大な融合体があって、脚本に“これは違うな”とかって反応をしていたような。おかげさまで、数十年前にコミックで始まったものがきちんとアップデートされたと思います。」

シャン・チーの親友、ケイティ役を演じるオークワフィナも「アジア系の表現がこれほどのレベルで描かれているのは初めて」と賛辞を送る。「アジア系アメリカ人の一人として、とても良いことだと思いました。アイデンティティの新しい次元を描いている作品です」。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は2021年9月3日(金)全国公開。

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Source: Entertainment Weekly

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。外部寄稿に『TENET テネット』『ジョーカー』『シャザム!』『ポラロイド』劇場用プログラム寄稿など。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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