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日本ヴァイキング協会が『ノースマン』儀式シーンを解説 ─ 「大興奮でした」「こだわりを感じます」

ノースマン 導かれし復讐者
© 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ロバート・エガース監督作、アレクサンダー・スカルスガルド主演の映画『ノースマン 導かれし復讐者』が2023年1月20日より全国公開だ。10世紀のヴァイキングを舞台にするこの復讐アクション映画では、ヴァイキングの戦士たちが戦い前に焚火を囲んで行う儀式のシーンがある。実際の映像がこちらだ。

この映像について、ヴァイキング時代の再現者としての活動を行なっている『日本ヴァイキング協会』の本山氏がシーン解説。専門家ならではの深い知見とともに、本作を解剖してみよう。

大きな焚き火を囲んで行われる様子は、キャンプファイヤーに似てはいるが、火を囲む男たちには野性味が溢れている。それぞれが盾と槍を持ち、動物の毛皮をかぶり雄叫びを上げ、独特のリズムを刻む。まさに戦いに向けての儀式だ。

本山氏はこの映像について、「ヴァイキングの中には、ベルセルカーと呼ばれる勇猛な戦士たちがいたと伝えられています」と解説する。「ベルセルカーは『熊の皮を着た者』という意味が由来とされ、他にも『狼の皮』を意味するウルフヘズナルという戦士もいたようです。鎧もつけずに戦い、敵の盾にかみつく。犬や狼のように暴れ回り、熊や雄牛のように強い。戦いの前にそんなベルセルカーになるための場面ですね」。

「儀式で気持ちを高めて勇気を奮い立たせている描写が、野生的でありながら人間的であるように感じとても大興奮でした。熊の毛皮を着た人も狼の毛皮を着た人もいるように見えます」と語る本山氏によれば、この儀式で祈りを捧げ、戦士が信仰しているのは勝利を願う神・オーディンだ。

「戦死者はオーディンの館ヴァルハラに迎えられると信じられていました。オーディンは勇敢な人間を集めて、巨狼フェンリルや巨人たちとの最後の戦い『ラグナロク』に備えています。そのため、戦士の成長のために勝利を、頃合いを見て死を与え、自分の元へ連れていきます。動画の中で歌われている詩の背景にあるのは、そんな北欧神話です」。

ノースマン 導かれし復讐者
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また、本山氏は「シーンに合わせた衣服を選んでいる」とも指摘する。「焚火の儀式シーンでの何名かは、太めのダボっとしたパンツを履いています。これは東方で活動したヴァイキングたちによく見られた衣服のスタイルだったようです」。

本編全体を通してヴァイキング文化へのこだわりを感じた点を聞くと、「ニコール・キッドマン演じるグートルン王妃が膝の上で機具を使って織り物をしていたシーン」を挙げた。「これは、カード織りというヴァイキング時代にも行われていた工芸です。複数枚の薄い木のカードの向きを変えながら、衣服の装飾などに使われる模様をつけた帯を作ります。実際にノルウェーの女王の墓から、木のカードと織機が出土しています。カード織りの描写がある作品は珍しいのではないでしょうか?細かいシーンだけにこだわりを感じました」。

『ノースマン 導かれし復讐者』は2023年1月20日より全国公開。

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THE RIVER編集部THE RIVER

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