【インタビュー】『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』スタントドライバーが語る「家族のような」現場 ─ 過酷カーアクションの裏で

── 本編では、ランドローバーの新型ディフェンダーのチェイスシークエンスが強烈で、ボンド史上最高レベルの規模ですね。あのシーンの撮影はいかがでしたか?
楽しかったですよ。マテーラで運転したDB5とは全く違いました。(ディフェンダーのシーンは)スコットランドで撮影しました。スコットランドの道は舗装されていなくて。だからラリードライバーだった私の経験が活きました。やりがいがありましたよ。バイクから車まで、イタリアで行ったものとは全く違いました。

── 『007』シリーズ以外にもあなたは『ワイルド・スピード』や『スター・ウォーズ』でもスタントドライバーをやられていますよね?
はい。『バットマン』もやりましたね。大規模の映画ですよ。
── そうした大作と比較して、『007』はどのような点でユニークでしょうか。
『007』は誰もが参加したいと思う映画です。アイコニックで、何十年にも遡る大きな歴史がある。私も(『007』を)観て育ってきました。たくさんある他の映画とは違って『007』は特別です。車との関係性も特別ですし。アストンマーティンとはロマンチックな関係ですよね。この映画で働いていると、家族のような雰囲気が感じられます。(プロデューサーの)バーバラ・ブロッコリを筆頭に、みんながお互いを知っている。現場に戻った時には、それまでもずっと一緒だったような感覚なんです。前作からの顔ぶれも同じで、何年一緒にやってきたかも分からないくらい。特別な感情です。なんて言葉にしたら良いのか分からないですが、『007』は『007』です。唯一無二です。
── ダニエル・クレイグ版のシリーズに携わってきた人として、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』はどのような仕上がりになっているでしょうか?
私たちが現場で目の当たりにしたもの、実際にやってのけたことから考えても、素晴らしい映画になると思います。でも、もしかすると編集担当の人が、あれだけのカーシークエンスを10分しか使っていないなんてこともありえるので、観るまではどうなるかわからないですね。
マテーラでのシーンの撮影はもう2年前のことです。ずっと待ってきたものがようやく!といった感じですが、今作でダニエルがやったことも含めて、特別な映画になると思います。
── エモーショナルになること間違いなしですね。
そうですね。ダニエルは最高のボンドの1人でした。誰が継ぐのかも興味深いです。
── 最後に、本作を含めボンド映画をやってきた中で一番大変だったことは何でしたか?
どれか1つをピンポイントであげることは難しいです。毎日が学びでしたから。いついかなる時も学び続けるような感じで。運転に関しては、私にとっては一番簡単なことかもしれません。そこから撮影部門や他の方たちとの仕事が大変なんです。カメラや人間の配置をする時とか、いろいろと制限もある他の車とのシーンなんかは、全然違う仕事なんです。
映画をご覧になると単純に見えるような側面も、時には一番シンプルに見えるものが一番むずかしいことになり得るんです。あとは、全ての車が撮影用にデザインされたものとは限りません。この映画に登場するDB5は、映画用に作られたのでとても幸運でした。運転するのは美しいこと。ただ、素晴らしく映る車でも、あまり良いパフォーマンスをしてくれない時もあります。だからこそ困難も多い。学ぶことはずっと続きますし、全てを学びきったと思った時は、引き際なんだと思います。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は絶賛公開中。