『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』Qの新設定、「全てが正しかったとは言えない」とベン・ウィショー

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の登場人物「Q」に与えられた新設定について、演じたベン・ウィショーが英The Guardianに自身の思いを明かしている。多様性を受容するという製作側の意図が感じられながらも、劇中では深く掘り下げられなかった同設定について、ウィショーはどう思っていたのだろうか。
本記事では、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の内容について言及しています。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、休暇先のジャマイカからイギリスへと帰ってきたジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が、MI6の上司M(レイフ・ファインズ)の失態を厳しく咎めたことで、組織から(一旦)追い出されてしまう。しかし、Mに疑念を抱いていたマネーペニー(ナオミ・ハリス)がボンドに声をかけ、独自に事件を調査すべく、2人は武器開発科の課長Qの自宅を訪れた。
ボンドとマネーペニーがQの自宅をアポ無し訪問した際、料理の支度をしていたQは男性とディナーデートの約束があったことを2人に伝える。デートの相手やその後の展開など、同シーンでは大きな進展は見られなかったものの、観客はQの性的指向が男性に向いていることを察しただろう。この設定は、Qが初登場を飾った『007 スカイフォール』(2012)や『007 スペクター』(2015)では描かれていなかった。
Qを演じたウィショーは、映画『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩』(2009)で出会ったマーク・ブラッドショウと2012年に同性結婚した後に、ゲイであることを世間に公表した。そのウィショーは、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でのQの設定については疑問を抱いていたようで、「あのような決断は、全てが正しかったとは言えないかもしれません」と語っている。
『007』シリーズにおいてLGBTQ+のキャラクターが登場したことは、多様性の面で進歩的と言える。しかし、ウィショーによれば作品公開後に「私に反響を知らせてくれた方は誰ひとりとしていなかった」という。
ウィショー自身、シリーズのプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリからQの新設定を告げられた際に「何も描かないで、これをやろうとしているのか」と感じたと明かす。「納得できなかったという当時の感情は今でも覚えています」。しかし、ウィショーは当時感じた“違和感”を制作側に伝えることはしなかったという。その理由を、ウィショーはこう語る。
「何がどうであれ、私はこの映画について誰かを責めるということはしませんでした。もし、自分がこれまでに関わってきたプロジェクトであればそうしていたかもしれません。(『007』は)とても大きな機械(ビッグマシン)なんです。もちろん、疑問を伝えるべきかどうかは私もいっぱい考えました。でもしなかった。書かれていたものを受け入れました。そしてセリフを言った。そういうことなんです。」
ダニエル・クレイグ版『007』シリーズにおいて、過去シリーズと異なる設定が与えられたのはQに限ったことではない。ナオミ・ハリスが演じたMの秘書マネーペニーについても「前線で活動していたエージェント」という肩書きが加えられた。こうした制作側の姿勢に、ウィショーは「強制されてそうなったとは感じていません。どこか良い場所から(アイデアが)降りてきたんだと思う」と持論を語った。
なお、ウィショーはQの再演について「もし私のQに未来があるなら素敵なことだと思う」と以前話しており、前向きではある模様。その一方で、「役を他の人に譲るというのならその選択に敬意を払います。フランチャイズにとっても新しい事、新しい領域に向かうことは大切ですから」とも語っていた。
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Source: The Guardian