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ノーラン監督『オッペンハイマー』は原点回帰、『メメント』的にカラーとモノクロを使い分ける

クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
© LFI/Avalon.red 写真:ゼータ イメージ

クリストファー・ノーラン、最新作で原点回帰。“原爆の父”と呼ばれた物理学者を描く『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』に、自身の出世作『メメント』(2000)との共通点があることが明らかになった。

本作は、第二次世界大戦下で原子爆弾の開発・製造計画「マンハッタン計画」を主導した物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描く物語。原爆の開発から、のちに本人が核兵器の国際管理の必要性を訴え、水素爆弾への抗議活動を行なうまでの変化が綴られるという。ノンフィクション作品『オッペンハイマー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇(上・下巻)』(PHP研究所)を原作に、ノーラン自身が脚本を執筆した。

Total Filmにて、ノーランは「誰かの人生の物語を描きたい。個人の歴史と、より大きな歴史を通じて彼らの旅路を描きたい」と述べている。ポイントは、主人公であるオッペンハイマーの視点で物語が進んでいくこと。ノーランは「物語の主観性こそが自分にとってはすべて」と言い、「この途方もない物語を、その中心にいた人物の視点からどのように見せるのか。すべての決断がその前提のもとに行われました」と語ったのだ。

しかしノーランは、歴史を扱う以上、すべてをオッペンハイマーの主観から描くことはしていないらしい。そのうえで必要だったのが『メメント』的な構造、すなわちカラーとモノクロを使い分ける作戦だった。

「『メメント』で取り入れた、カラーとモノクロを切り替えることで構造を支え、美学的にも仕掛ける方法をとても気に入っていたんです。あれを再びやる理由を探していましたが、『オッペンハイマー』の物語は非常に主観的であり、けれど同時に客観的な物語も絡み合っている。あの方法をもう一度使うにはぴったりでした。」

予告編を見るかぎり、モノクロの映像にはオッペンハイマーの姿が映っているため、こちらが客観のように思われる。しかし、本編における映像的な狙いはまだわからないままだ。ちなみに、例によってIMAX撮影にこだわったノーランは、本作で「史上初めて、IMAXフィルムカメラでモノクロの映像を撮ることができた」という。撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマと実験を試みたところ、「これは好きなフォーマットだとすぐにわかった」そうだ。

ロバート・オッペンハイマー役は、『インセプション』(2010)『ダンケルク』(2017)などノーラン作品の常連俳優キリアン・マーフィー。妻のキャサリン・“キティ”・オッペンハイマー役をエミリー・ブラント、マンハッタン計画を指揮したレズリー・グローヴス役をマット・デイモン、アメリカ原子力委員会の委員長ルイス・ストロース役をロバート・ダウニー・Jr.、共産党員で精神科医のジーン・タトロック役をフローレンス・ピュー、“水爆の父”として知られる物理学者エドワード・テラー役をベニー・サフディが演じるほか、ラミ・マレックやジョシュ・ハートネット、ゲイリー・オールドマン、ケネス・ブラナー、デイン・デハーン、マシュー・モディーンらが名を連ねている。

映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』は2023年7月21日に米国公開予定。

Source: Total Film(1, 2

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。