2021年アカデミー賞の受賞予想&見どころ解説 ─ オスカー像の行方はいかに?

1920年代を舞台にした映画『マ・レイニーのブラックボトム』(2020)にて、マ・レイニーという「ブルースの母」とも称される実在の歌手を演じている、ヴィオラ・デイヴィス。仕事に関しては強気だが、家族に対しては深い愛情と優しさをもって接するマ・レイニーを、デイヴィスは圧倒的な憑依ぶりで見事に演じ切っている。デンゼル・ワシントンによる『フェンス』(2016)に続いての受賞となるのかに注目だ。
そのほかの有力候補作②:『プロミシング・ヤング・ウーマン』キャリー・マリガン

『プロミシング・ヤング・ウーマン』にてキャリー・マリガンは、トラウマを負いながらも、クラブで毎週のように酩酊状態を装い男たちに制裁を与えるという難役を演じている。本年度の賞レースでは、フランシス・マクドーマンドとほぼ並ぶような受賞数を記録中だ。
主演男優賞 予想&注目候補
予想:『マ・レイニーのブラックボトム』チャドウィック・ボーズマン

2020年8月に逝去した、チャドウィック・ボーズマン。このたび主演男優賞にノミネートされている『マ・レイニーのブラックボトム』では、トランペット奏者役を演じていた。才能はあるものの、周囲への配慮が足りずすぐに喧嘩してしまうようなキャラクターである。様々な葛藤を抱えるキャラクターを、チャドウィックは魂震える演技で魅了した。
遺作となった本作にてチャドウィック・ボーズマンは、世界中の映画賞を総なめにしており、ゴールデングローブ賞でも受賞を果たしている。アカデミー賞でも、はじめてのノミネートにして初の受賞となるか。また仮に受賞した場合、故人に代わって、オスカー像を受け取る人物にも注目が集まる。
そのほかの有力候補①:『ミナリ』スティーヴン・ユァン

アジアン・アメリカンとしてアカデミー賞に初候補入りした、スティーヴン・ユァン。『ミナリ』では、家族のために必死になりながらも、妻からは嫌味を言われていまう韓国人一家の大黒柱役を演じていた。少年のように夢見るジェイコブふんするスティーヴン・ユァンは、一瞬たりとも演技であると感じさせないほどにまで自然に演じていた。アジアン・アメリカンとして初の快挙となるか。
そのほかの有力候補②:『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』リズ・アーメッド

ひとりのドラマーが聴覚を失い奮闘する姿を描いた一作、『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』(2020)。難病を抱えたドラマーにふんしたのが、リズ・アーメッドだ。「ザ・ナイト・オブ」(2016)『ヴェノム』(2018)など、数多くの話題作に出演している俳優で、このたびムスリム系として初の主演男優賞候補となった。
ありのままの自分を受け入れるが、新しい自分とこれまで歩んできた人生とのどちらかを選ばなければならない男を演じたリズ・アーメッドの、痛々しいほどの肉体表現と追い詰められた入魂な演技に圧倒されるだろう。ゴールデングローブ賞ではノミネートされるも、受賞には至らなかった。多様性を重視する映画賞のため、受賞の可能性は非常に高い。もっともそれはチャドウィック・ボーズマンやスティーヴン・ユァンでも同様のことが言えるため、予想の難しい部門とも言えるだろう。
助演女優賞 予想&注目候補
予想:『ミナリ』ユン・ヨジョン
