【レビュー】『パワーレンジャー』どう観た?監督ら4人に取材して解説する「キャラ主体の戦隊ドラマ」の魅力

日本の『スーパー戦隊』シリーズが、ハリウッドで初の実写映画化を果たした『パワーレンジャー』が、2017年7月15日にいよいよ日本公開となる。全米では3,500を超えるスクリーンで封切られ、オープニング興行収入4,000万ドルを突破した話題作が、『トランスフォーマー / 最後の騎士王』『スパイダーマン:ホームカミング』や『ワンダーウーマン』といった超大作ひしめくこの夏の注目作としてついに日本凱旋を果たすわけだ。
筆者は、ディーン・イズラライト監督、ブライアン・カセンティーニプロデューサー、主演のデイカー・モンゴメリーとナオミ・スコットの4名へ直接の取材を行っている。貴重な機会を頂いた同作を応援したい気持ちで、彼らの証言を交えながら『パワーレンジャー』の魅力をネタバレ無しで立体的に紹介していくとしよう。
映画『パワーレンジャー』レビュー
プロデューサーのブライアンは笑みを浮かべて語った。「1993年のシリーズ第一作『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』を観て育った観客が大人になるタイミングを、ずっとね。」
映画『パワーレンジャー』は、アメリカで放送された『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』(1993)をベースとしている。5人の戦士の名前をそのまま引き継ぎ、メンターとなるゾードンやアルファ5、ヴィランのリタ・レパルサもオリジナル版に由来している。そして、このアメリカ版のルーツには、1992~93年に日本で放送された『恐竜戦隊ジュウレンジャー』がある。筆者を含め、当時のシリーズを幼少期に見て育った少年少女の多くが30代前後となった頃、『パワーレンジャー』は「もっと成熟させたものを見せるため」(ブライアンプロデューサー)にスケールアップして生まれ変わったのだ。総製作費は120億円と言われる。
しかし、当時の少年が大人になる頃、世界では空前のスーパーヒーロー映画ブームが到来していることを予期できていた者は少ないだろう。「ヒーローチームもの」という同シリーズ最大のアピールポイントも、『アベンジャーズ』を始めとする作品によって珍しいものではなくなった。
「キャラクター主体」でオリジン描く
「僕自身、沢山のヒーロー映画を観てきたけど、こんなストーリーは初めてだよ。」レッドレンジャーことジェイソン・スコットを演じたデイカー・モンゴメリーはこう述べた。そして、ブライアン プロデューサーとイエローレンジャー / キンバリー・ハート役のナオミ・スコットは、“友と一緒にスーパーヒーローになる”という今作のコンセプトを共に語っていた。「マーベルやDCといったスーパーヒーロー映画も大好きだが、やはり『パワーレンジャー』では違いを出したかった。地に足がついた感じというか、リアリティを出したかった。」(ブライアン プロデューサー)
彼らの発言からも分かるように、映画『パワーレンジャー』は、他のスーパーヒーロー作品とは一線を画す雰囲気に仕上がっている。監督にして「スーパーヒーロー版『スタンド・バイ・ミー』『ブレックファスト・クラブ』」と表現される本作では、ティーン・エイジャーの葛藤と成長、その先に芽生える友情が色濃く描かれる。ある事件をきっかけにスーパーパワーを得た5人だが、そのパワーの扱いに戸惑うといった描写は、思えばここ数年のヒーロー映画には少なかった。ユニバースが拡大し、フランチャイズ化を極めるヒーロー映画の世界において、『パワーレンジャー』はあらためて、『スパイダーマン』(2002)を思い出させる程丁寧にヒーロー・オリジンを描く。
そのため、ヒーローアクションのみを目当てに出掛けると肩透かしを食らうかもしれない。デイカーが「『パワーレンジャー』は、”友情”をメタファーとしたヒーロー」と語るように、今作は「パワーレンジャーの中にティーンのドラマ要素もある」と言うより、「ティーンのドラマの中にパワーレンジャーがある」と表した方が相応しい。『デッドプール』(2016)は、ヒーロー・オリジンを描く作品でありながら、回顧録の形を取ることで「オープニングからいきなりヒーロー・アクションを描ける」という発明を行っていたが、これは不合理さ許されるデッドプールだからこそ成立していたもの。『パワーレンジャー』は、しっかりと地に足をつけて綿密にドラマを描き上げていく。