『スター・ウォーズ』より『パワーレンジャー』だ! ─ 「悪魔城ドラキュラ」製作者、「帝国軍の何が悪なのか?」と疑問

突然だが、あなたは『パワーレンジャー(もしくはスーパー戦隊シリーズ)』と『スター・ウォーズ』、どちらが好きだろうか?
両シリーズ共1970年代に誕生し、現在進行系で新作が制作されている世界的な長寿コンテンツ。作品と共に育ち、今なお憧れを抱き続ける大人たちも多いだろう。

帝国軍はなぜ悪なの?
「『スター・ウォーズ』より『パワーレンジャー』の方が良い!」と主張するのは、『ジャッジ・ドレッド』(2012)やNetflixアニメ「悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-」プロデューサーのアディ・シャンカルだ。アニメやゲーム文化で育ち、作品に強いこだわりを持つアディは、「スター・ウォーズは、パワーレンジャーほどイケてないと本当に思う」との持論を、米Comicbook.comのインタビューで展開している。
「パワーレンジャーは善と悪の話じゃない。そんなことないし、これまでも決してなかった。どちらか一方のレンズを通じて語られるストーリーなんです。実際に描かれているのはグレーの濃淡(=善悪の曖昧なバランス)。登場人物が力を合わせて、この濃淡に打ち勝とうという話なんです。だからパワーレンジャーは素晴らしい。
スター・ウォーズは善と悪の話でしょう。僕ね、帝国軍の連中の何が悪いのかがサッパリ分からないんですよ。今でも分からないですね。あいつら、朝起きて同じ制服を着て、反乱軍に殺されるでしょう。理由は同じ服を着ているから?意味がわからない。確かに、惑星をぶっ飛ばしたりはしましたよ。でも、それだって個人の憎悪によるしょうもない理由でしょう。そういう意味で、パワーレンジャーの方がスター・ウォーズよりよっぽどイケてますよ。」
アディが主張するように、『スター・ウォーズ』シリーズに一貫したテーマはジェダイ対シス、反乱軍対帝国軍、レジスタンス対ファースト・オーダーといった善と悪の物語。しかし、確かに帝国軍やファースト・オーダーの下級兵らに確立した思想はなく、あくまで組織内の責務や出世レースのために任務を遂行しているに過ぎない。
「いやぁ、スター・ウォーズって本当に酷いなって思うんですよ。あれは酷いシリーズですよ。価値として酷い。スター・ウォーズから何を学べばいいんですか? “俺たちは反乱軍だ、同じ制服姿の連中をぶっ飛ばそうぜ”って?それって善と悪なんですか?何が酷いって、あの世界における本当の悪者って、ごくごくわずかしかいないことですよ。悪の存在は物語を通じて分かるんだけど、でも悪にも悪なりの物の見方があるじゃないですか。悪から見た世界ってものがあって…。でも、その悪の視点を分かろうとしないなら、あなたも自分が悪じゃないと言い切れますか?」

賛成?反対?
筆者は、『スター・ウォーズ』はダース・ベイダーなどヴィラン側のレンズを通じて「悪の視点」を描こうと試みていると考えているので、アディの主張を全面的に支持することはできない。近年作におけるカイロ・レンやスノークにおいても同様で、続く『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』や派生作品で彼らの心理状況が明かされると思われるし、制服姿のいち兵士の葛藤を代弁したフィンのようなキャラクターも忘れるわけにはいかないだろう。
なお筆者は、実際にこのアディ・シャンカル氏にお会いし、インタビュー取材でお話させていただいた事がある。ロックスター、もしくはゲーム・キャラクターのような鋲付きのレザージャケットとグローブ姿で現れたアディは、筆者がこれまでインタビューさせて頂いた業界人のなかでも最も寡黙で、ぽつり、ぽつりと話すタイプだった。ポップカルチャーについては、褒め言葉としての「筋金入りのオタク」の称号が相応しい。アディが肩入れしたのはパワーレンジャーだが、それもそのはず、2015年にはパワーレンジャーを描く自主制作の短編映画『POWER/RANGERS UNAUTHORIZED』をプロデュースしているのだ。
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