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『ランボー』シリーズ全作あらすじと解説 ─ 『ランボー ラスト・ブラッド』予習復習に

ランボー ラスト・ブラッド
© 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.

シルベスター・スタローンの代表的シリーズ『ランボー』最新作にして完結作『ランボー ラスト・ブラッド』が日本公開を迎えた。

『ランボー』と聞くと、なんとなくシリーズ作がいっぱいあって、ヘヴィで、これから復習し直すのは大変……と思われる方も多いのでは。

実は『ランボー』は、完結作『ラスト・ブラッド』までに4本しか存在しておらず、全作90〜100分程度のコンパクトなシリーズなのだ。第1作『ランボー』から、第4作『ランボー/最後の戦場』までぶっ続けで観ても、トータル383分。昼頃に観始めれば、夕食の時間頃には全て観終えることができるボリュームだ。

この記事では、シリーズ全作『ランボー』『ランボー/怒りの脱出』『ランボー3/怒りのアフガン』『ランボー/最後の戦場』を、効率よく文字で復習。さっとまとめた「あらすじ」紹介と解説で、これまでの『ランボー』の戦いを振り返ろう。“無駄に生きるか、何かのために死ぬか、お前が決めろ!”

シリーズ第1作『ランボー』(1982)

あらすじ

ベトナム帰還兵のランボーはかつての戦友を訪ね、ワシントン州の田舎町を訪れる。再会を期待したランボーだが、その戦友はベトナムで浴びた枯葉剤の後遺症で既に亡くなっていた。

拠り所を失ったランボーが街にやってくると、保安官のティーズルに目をつけられる。ティーズルはランボーが危険人物だと勝手に決めつけ、パトカーに乗せて街から追い出す。それでも街に戻ろうとするランボーを、ティーズルは理不尽にも「浮浪罪」「公務執行妨害」で逮捕してしまう。

ランボーは取調室で高圧的な取り調べを受け、ベトナム時代に苦しめられた拷問をフラッシュバックしてしまう。堪らずナイフを奪い返して山中へ逃走するランボー。保安官らとの攻防戦で死者も発生し、ランボー捕獲戦は激しさを増す。

やがて州兵まで出動する騒ぎとなる中、史上最強の兵士ランボーは実戦仕込みのスキルで次々と州兵を倒していく。そこにベトナム時代のランボーの上官、サミュエル・トラウトマン大佐が派遣され、無線でランボー説得を試みるが……。

解説

『ランボー』と聞くと、未見の方はシルベスター・スタローンが戦場で無双するぶっ放し系の大味アクション映画と想像するかもしれない。しかし、1982年公開のシリーズ第1作目は、ベトナム帰還兵のジョン・ランボーがアメリカの山地や市街地を舞台に保安官や州兵に追われて戦う物語だ。

映画の根底にあるのは、当時のアメリカにおけるベトナム帰還兵への非難と、そのやり場のなさへの風刺。ベトナム戦争では多くのアメリカ兵が命をかけて戦ったにも関わらず、この戦いで政治的勝利を得られなかったことから、国に戻ってきた帰還兵への風当たりは強かった。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を患った帰還兵も多く、『ランボー』にもこうした描写は見られる。ひたすらに敵を倒しまくる痛快アクション映画というばかりでなく、居場所も尊厳も失ったベトナム帰還兵の哀しみや、彼らに対する当時の人々の反発を描いた社会派作品でもあるのだ。戦場で数々の修羅場をくぐり抜けた屈強なランボーが、腹の出た田舎の保安官にナメられて不要不急の戦いを強いられる虚しさが印象的。ランボーが感情をむき出しにして思いを打ち明けるシーンは名場面として名高く、アメリカにおけるベトナム戦争の「後遺症」がどのようなものだったかを表している。

1982年の公開当時、スタローンは36歳。既に3作目まで登場していた『ロッキー』シリーズに続く当たり役となった。公開後は3週にわたって興行収入ランキング1位を獲得したが、米国内興行収入は同年公開のヒット作『ロッキー3』の3分の1程度に留まった。米映画レビューサイトRotten Tomatoesの批評家スコアは85%の高評価で、これはシリーズの中でも最高値となっている。

原作はディヴィッド・マレル『一人だけの軍隊』。戦場で受けた精神的な傷に苦しみ、ダイナマイト自殺を図った後にトラウトマンに射殺されるという、映画よりもさらにダークでシリアスなラストとなっている。

作中での死者数は1人。

シリーズ第2作『ランボー/怒りの脱出』(1985)

あらすじ

作業場での肉体労働者として働いていたランボーのもとに、前作に続いて登場のトラウトマン大佐が極東での極秘作戦への参加の提案に訪れる。かつてランボーが脱走したベトナムの捕虜収容所に潜入し、捕虜の写真を撮ってくるという任務だ。

任務を引き受けたランボーは小型飛行機でベトナムに潜入。CIAのマードックから言い渡された詳細は、決して現地のベトナム兵と交戦せず、ただ米人捕虜の写真だけを撮ってこいというものだった。しかしランボーは降下の際、トラブルでカメラを含む大半の荷物を失ってしまう。

なんとかベトナムの密林に降り立ったランボーは、女性情報員のコー・バオと落ち合い、やがて想いを通わせていく。一方、捕虜にされた米兵の惨状を目の当たりにしたランボーは、指令に背いて捕虜の1人を救出。ベトナム軍に追われ、銃撃を浴び、地雷原を走り抜けて命からがら脱出地点にたどり着くが、捕虜を連れていると知ったマードックは救出を中止してヘリコプターを引き上げさせてしまう。実は捕虜の存在を抹消したかったマードックは、ランボーに捕虜を連れてこれると身代金要求や再戦につながる恐れがあると判断したのだ。祖国に見捨てられベトナム軍に捕獲されたランボーの元に、ソ連軍も現れて致死的な拷問が行われる。コー・バオの協力でなんとか脱出したランボーの、怒りの復讐が始まる……。

解説

シリアスだった1作目から、この続編ではアクション・エンターテインメント色を強めて大ヒット。プレデターよろしく自然に紛れて次々と敵を倒していく無双劇や、赤いバンダナ、上裸マシンガン、弓矢爆弾と、「ランボー」らしい要素はこの2作目で確立される。製作費も1作目からおよそ3倍の4,400万ドルで、ヘリコプターからの空爆など派手な演出が盛り込まれた。

ベトナムの捕虜兵救出が描かれたが、撮影当時は実際に2,500人近い米兵が行方不明になっていた(MIA問題)。「忘れられた亡霊」として捕虜米兵を捨て去りたい司令部役人の思惑と、汗と泥にまみれても真実と正義を貫く戦地のランボーの対比が見どころ。ラストシーンでは前作に劣らずの力強いメッセージが飛び出す。一方、この第2作目からランボーは、アメリカのマッチョイズムを体現する怒れるヒーローとしてのイメージを強めていく。

タイトルは1作目の『First Blood』に合わせて『Fisrt Blood II』となる予定だったが、スタローンの希望で『Rambo:First Blood Part II』になった。『ロッキー』シリーズのように主人公の名を冠したかったためだ。以降のシリーズでも『Rambo』が原題に取り入れられている。

ちなみにランボーを拷問するソ連軍のポドフスキー中佐はもともとドルフ・ラングレンが演じることになっていたが、同年の『ロッキー4/炎の友情』と被ってしまうため契約を撤廃されたという逸話もある。

1985年の公開当時は5週連続で興行収入ランキング1位。全世界興行収入は3億ドル超で、これはシリーズ最高の記録となっている。また、シリーズ唯一のアカデミー賞ノミネート(音響編集賞)を果たしている。一方、ラジー賞では最低作品賞、最低主演男優賞、最低脚本賞、最低主題歌賞の4部門が与えられた。

作中での死者数は75人。

シリーズ第3作『ランボー3/怒りのアフガン』(1988)

あらすじ

「俺の戦争は終わった」……タイ・バンコクの寺院で地元民に紛れてひっそりと暮らしていたランボーの元に、トラウトマン大佐が訪問する。アフガニスタンで200万人の市民がソ連軍に虐殺されているという。アフガン側も対抗戦力を得て戦況が激化する中、トラウトマン大佐はランボーに現地調査への同行を依頼する。

任務を断ったランボーだったが、その後現地に赴いたトラウトマンがソ連軍に捕まったと知らされる。居ても立っても居られなくなり、極秘裏にアフガンに向かうランボー。現地のゲリラ騎兵隊を仲間につけ、乗馬ラグビーのような危険な「国技」に参戦しているところ、ソ連軍からの奇襲に遭う。

その後、ソ連要塞に潜入したランボーは、激しい激戦をくぐり抜けてトラウトマン大佐の救出に成功するのだが……。

解説

前2作ではベトナム帰還兵の悲哀を帯びていたランボーだが、本作ではタイで無欲な生活を慎ましく送っていた。地獄の戦場に引きずり戻すのは3作連続登場のトラウトマン大佐だ。1作目で「俺の戦争は終わっていない」と泣きじゃくっていたランボーがようやく「俺の戦争は終わった」と穏やかな顔をしてみせるのに、「心の戦争は終わらない」「真の自分を受け入れろ」と迫る。

もうそっとしておいてやってくれ……、多くの観客の思いとは裏腹に、ランボーは戦地に飛び込み怒りの殺戮マシンと化す。筋肉を振動させて機関銃を撃ちまくり、戦車に乗ってヘリコプターと正面衝突の大爆発を巻き起こすなど、アクションと火薬量は前2作にも増してバルクアップ。221の暴力、70の爆発、そして108人以上が劇中で殺されるという実績から、「史上最も暴力的な映画」として1990年当時のギネス世界記録に認定された、殺しのチャンピオン映画なのだ。

ソ連が残忍な悪として、またムジャーヒディーン(イスラム戦士)が善として描かれたことで議論を招いた。当時はアフガニスタン紛争真っ只中。政権に対抗する武装勢力が各地で蜂起していた1979年にソ連軍が軍事介入し、ムジャーヒディーンと激しく対立する。アメリカはCIAを通じて極秘裏に武器を供給している。

ソ連軍撤退後も戦火は消えず、ムジャーヒディーンの内部抗争、タリバンの台頭などが続く。ムジャーヒディーンには、後に9.11同時多発テロの主導者となるウサーマ・ビン・ラーディンも参加していた。『ランボー3/怒りのアフガン』はこうしたイスラム戦士を称えた結果となってしまっている。映画のラストシーンには「勇敢なるアフガン民族のムジャーヒディーンの戦士たちに捧ぐ」とのテロップが表示されたが、9.11同時多発テロを受けて現在では「勇敢なるアフガン民族に捧ぐ」へと変更されている。

制作予算は6,300万ドルで、これは1988年の公開当時までに最も高額だった。にも関わらず、米興行収入は前作から1億ドルもダウンの5,370万ドルで、国内では製作費を回収できなかった。

作中での死者数は115人。

シリーズ第4作『ランボー/最後の戦場』(2008)

あらすじ

東南アジア、ミャンマー。軍事政権は少数民族であるカレン族を、土地の天然資源略奪のために凌虐していた。カレン族は60年にもわたって日常的に虐殺の目に遭っていた。

一方、ランボーは隣国タイでひっそりと暮らしていた。そこにアメリカからNGO(非政府組織)の一団が訪れ、ミャンマーへの案内を依頼される。カレン族への物資支援が目的だという。これまで数多の地獄をくぐり抜けたランボーは、この民間人らに「ムリだ」と言ってはねのけるが、一団のひとりサラ・ミラーの説得に心を動かされて、ボートで彼女らをミャンマーまで送り届けることにする。途中、ミャンマーの海賊に襲われて危機を迎えたランボーは、乗組員を守るために海賊を返り討ちにする。

一団をミャンマーに送り届けた後、ランボーは引き返す。しかし、その一団も混じったカレン族をミャンマー軍が奇襲、女子供も次々と虐殺し、村ごと焼き払う。後日、一団がミャンマーで囚われの身となったらしいことを知らされたランボーは、「お前は生粋の戦士」「国のためではなく、自分のために殺す」と自分に言い聞かせ、アメリカから派遣された傭兵団と共に再びミャンマーへ向かう。

傭兵団からはただのボート運転手と思われているランボーは、ミャンマー到着後も船の見張りを命じられる。傭兵団はミャンマー軍勢力が100人にも及ぶと知らされ、交戦せずに捕虜救出だけに専念すると決意。焼け跡の村には、ハエのたかった腐乱死体が転がり、見せしめとして吊り下げられる無残な光景が広がっていた。そこにミャンマー軍が現れ、捕虜を虐殺。戦力が足りないため見殺しにするしかない傭兵団が葛藤するところに、ランボーが現れて弓矢で一掃する。

応酬を恐れた傭兵が引き返そうとすると、ランボーは弓矢を構えて「ムダに生きるか、何かのために死ぬか。お前が決めろ」と迫る。この迫力に動かされた傭兵団は、NGO一団を救出すべく、ランボーと共に危険極まりないミャンマー軍の本拠地へ潜入する……。

解説

20年ぶりの第4作では、シリーズで初めてシルベスター・スタローンが自らメガホンを取った。初期の案では、さらわれた少女を助けるためにランボーがメキシコに飛ぶというものだったが、スタローンは「ランボーらしさ」が無いと考えた。この初期案は、続編『ランボー ラスト・ブラッド』に受け継がれる。

ミャンマーを舞台にするというアイデアはスタローンによるもので、実際に残忍な争いが行われていて、かつメディアや世間からも忘れられている場所にしたいというものだった。スタローンは国際情勢の専門家に話を聞き、ミャンマー軍事政権のカレン族虐殺をテーマにすることに決めた。プロデューサーは実際にカレン族の難民キャンプを訪れ、スタローンの発案に納得する。

冒頭からカレン族虐殺の実際の映像が流れ、劇中でも小さな子供が殺される、踊り子の女性が襲われる、身体の一部が吹き飛ぶなど、視覚的、精神的にもショッキングな描写が多い。前作までの「痛快、豪快な戦争アクション」らしさを取り除き、目を背けたくなるような現実を血生臭く描いた。なお、前3作全てに登場していたトラウトマン大佐を演じたリチャード・クレンナは2003年に亡くなったていたため出演しない。

極悪非道のミャンマー軍大佐パ・ティー・ティントを演じたマウン・マウン・キンは、実際にカレン族解放戦線の兵士だった男。この映画に出演することでミャンマー政府から家族を投獄すると脅されたが、屈せずに出演を決めた。マウン・マウンは演技の経験はなかったが、スタローンが彼を気に入って起用した。

ミャンマー近郊でロケ撮影を行った際、地雷被害で脚を失った生存者などミャンマー軍が残した被害を目の当たりにし、スタローンは「地獄だった」と振り返っている。現地では、頭上に発砲されながら「これ以上続けたら痛い目に遭わせる」と脅迫もされたという。

この作品でのランボーは疲弊した男として登場し、戦地に戻ることを拒み続ける。アメリカのエゴを抱えたNGOの一団が支援を目的にミャンマー現地入りを希望するも、「お前たちが行っても何も変わらない」と関与を避けさせようとする。止む無く加勢してミャンマー軍を壊滅させるランボーだが、結局は今回も多くの血が流れてしまった。現場の惨状を見下ろすランボーの顔には、怒りとも哀しみともつかぬ、やるせない表情が浮かび上がっていた。最後には、アリゾナ州の故郷に帰るが……。

作中での死者数はシリーズ最多の254人。

シリーズ第5作『ランボー ラスト・ブラッド』(2019、日本公開2020)

ランボー ラスト・ブラッド
© 2019 RAMBO V PRODUCTIONS, INC.

あらすじ

いまだベトナム戦争の悪夢にさいなまれる元グリーンベレー、ジョン・ランボー。孤独な戦いを経て、祖国アメリカへと戻ったランボーは、故郷アリゾナの牧場で、古い友人のマリアとその孫娘ガブリエラと共に“家族”として穏やかな生活を送っていた。

しかしガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致され、事態は急転する。愛する“娘”を救出するため、ランボーは元グリーンベレーのスキルを総動員し、想像を絶する戦闘準備を始めるのだった。

解説

タイトルは、1982年のシリーズ第1作の原題『First Blood』に呼応する『Rambo:Last Blood』。前作の邦題が『ランボー/最後の戦場』とされたため紛らわしいことになっているが、本作こそが本当の完結編だ。

上映時間は89分とシリーズ最短。ランボーが長髪ではない、バンダナを頭に巻かないなど、ビジュアル面の変化も大きい。

前作『ランボー/最後の戦場』で「家族」の存在がチラついたランボーは、本作ではガブリエラという娘を養子縁組で迎えている。1作目当時は30代半ばだったスタローンも、本作日本公開時点で73歳。今度こそ戦場から身を引き、故郷アリゾナで営む牧場でささやかな生活を営んでいたところ、今度はメキシコの人身売買カルテルと対峙する。これまではド正面からマシンガンをぶっ放していたランボー、今作では「殺人ホームアローン」よろしく様々なトラップを仕掛けて敵を仕留める頭脳戦の一面も。

「攫われた娘を救うべくメキシコのカルテルと戦う」というストーリーは『ランボー/最後の戦場』の初期案だった。スタローンはこの物語を、ジェイソン・ステイサム主演『バトルフロント』(2013)にも提供していたため、同作とは共通点もある。

アメリカでは2019年9月に公開された。Rotten Tomatoesでは批評家スコアは27%と厳しい一方で観客スコアは82%と好調だ。脚本やストーリーへの指摘は目立つが、ランボーらしいアクションが今作でも堪能できるとの感想が集まっている。全米初登場の週末興収は3位で、ブラッド・ピット主演『アド・アストラ』(2019)のすぐ下に付いた。

Source:IMDb(1,2),Everything Standard,Fandom(1,2

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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