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『ランペイジ 巨獣大乱闘』は『ゴジラVSコング』の布石か?「人類代表」ドウェイン・ジョンソンが巨獣バトルに殴り込み!

ランペイジ 巨獣大乱闘
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

WWEのプロレスラー「ザ・ロック」こと、俳優のドウェイン・ジョンソン。近年では、『カリフォルニア・ダウン』(2015)、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)などのハリウッド大作にも数多く出演し、いまや映画業界を牽引する引く手あまたな俳優として、さらに注目が集まっている。

映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018)では、主人公の霊長類学者デイビス・オコイエに扮し、阿鼻叫喚の巨獣バトルに、あろうことか、「人類代表」として殴り込みをかけている。巨大化したゴリラ、オオカミ、ワニ……そこに人類最強の男、ドウェイン・ジョンソン(巨大化はしていない)が参加し、バトルは三つ巴、もとい「四つ巴」の様相を見せる。

本作の巨大ゴリラは、言ってしまえば「色違いのキングコング」にしか見えず、対してワニは、ゴジラのような迫力さえ醸し出す。本作を配給するワーナー・ブラザースといえば、ゴジラとキングコングの闘いを描く『ゴジラVSコング(邦題未定、原題:Godzilla vs. Kong)』を製作中である。そのことを踏まえると、本作はまるで、二大モンスターのクロスオーバーに先駆ける、ある種の「予行演習」にも思えてならない。ここでは、ワーナーが手がける「モンスターバース」にも言及しつつ、本作『ランペイジ 巨獣大乱闘』について考察していきたい。

『ランペイジ 巨獣大乱闘』は予行演習か?

2014年、米映画配給会社ワーナー・ブラザースは、日本を代表するキング・オブ・モンスター「ゴジラ」を、『ゴジラ FINAL WARS』(2004)からじつに10年という歳月を隔てて、再びスクリーンに復活させた。かつて、ローランド・エメリッヒ監督の指揮によって、ハリウッド版『GODZILLA』(1998)が製作されたが、それはゴジラと呼ぶにはあまりにも似つかわしくないものだった。もっとも、怪獣映画ファンの定説では、『ゴジラ』の基となった古典映画『原子怪獣現わる』(1953)の現代リメークという見方が強いが、その話はまた別に機会に。

GODZILLA
© Sony Pictures 写真:ゼータ イメージ

という訳で、ワーナーが放った新作『GODZILLA ゴジラ』(2014)は、『モンスターズ/地球外生命体』(2010)のギャレス・エドワーズ監督によって、ハリウッド版第二作としてその産声を上げた。ギャレス版ゴジラの造形は、日本のそれを極めて忠実に象りながらも、全長355フィート(108メートル)という、ゴジラ史上における最大スケールに設定することによって、さらなる独自性を生み出した(その後、歴代最大は『シン・ゴジラ』(2016)の118.5メートルが更新した)。

GODZILLA ゴジラ
©Warner Bros. 写真:ゼータ イメージ

そして、その続編として製作されたのが、2017年公開の『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)だ。『キングス・オブ・サマー』(2013)のジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督によって、映画はこれまでの歴代キングコング作品とは一線を画すものに仕上がった。こうしたワーナーの怪獣映画は、近年話題のアメコミ映画、とりわけマーベル・スタジオのマーベル・シネマティック・ユニバースに触発された一連のユニバース構想(モンスターバース)を模索している。このふたつの怪獣映画の続編として、2020年に公開予定の映画『ゴジラVSコング』は、日米の二大モンスターによる白熱の闘いを描くものとして、はやくも期待されている。

キングコング:髑髏島の巨神
©2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

さて、話を『ランペイジ 巨獣大乱闘』に戻そう。本作『ランペイジ』では、遺伝子操作によって巨大化した動物たちが、ひたすらに街を破壊していく。まず、ドウェイン・ジョンソン扮するオコイエ博士がもっとも信頼を寄せるゴリラのジョージは、観客のだれもが「キングコング」を想起することだろう。無論、本作の制作陣も、歴代の「キングコング」作品から着想を得ているだろうことは、安易に予想がつく。

ランペイジ 巨獣大乱闘
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

本作に登場するゴリラのジョージが白い理由は、色素欠乏症、いわゆるアルビノであるためで、白いキングコングといえば、『コングの復讐』(1933)に登場した白い子供コングを思い出させる。エナジン社のウィリス・タワーに登っていくシーンは、『キングコング』(1933)のオマージュにも思えてしまうのだ。

そして一方で、川から這い上がった巨大ワニが空に向かって咆哮し、州兵の総攻撃をいともたやすく蹴散らすその場面は、恐らくゴジラからの引用ではないか。ただし、ワニとゴジラの形態的な類似を示しているわけではなく、そう私たちがかつて目にした日本のゴジラの精神が、この短いシーンに集約されているような気がしてならない、という意味においてだ。(しかし、ワニの姿は『ゴジラの逆襲』(1955)のアンギラスによく似ている)

ランペイジ 巨獣大乱闘
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

こうして観ると本作は、キングコングとゴジラが、それぞれゴリラとワニの姿を借りて、はやくもスクリーンに登場していると、そう言えるのではないか。こうした観点から読み解くと、本作『ランペイジ』は、公開を控える『ゴジラVSコング』の予行演習という見方も、否定はできないのではないか。

本作『ランペイジ』を製作するのは、ワーナーが2008年に吸収したニュー・ライン・シネマであり、いわばワーナーの一部門が映画を手がけている。対して、前述の『GODZILLA ゴジラ』と『キングコング:髑髏島の巨神』は、『パシフィック・リム』(2013)などを手がけるレジェンダリー・ピクチャーズが製作を担当した。しかし、ワーナーとレジェンダリーは、映画製作に対する意見の相違によって関係悪化、2013年には事業提携を解消している。なのだが、最後の共同製作となった『GODZILLA ゴジラ』が世界的にも大ヒットを記録したことで、その後も『キングコング:髑髏島の巨神』、2019年公開予定の『ゴジラ:キング・オブ・モンスター(邦題未定、原題:Godzilla: King of the Monsters)』、そして、夢の共演を果たす『ゴジラVSコング』を、ワーナーとともに製作する運びだ。現在、レジェンダリーはユニバーサルと契約しているが、モンスターバースに関しては、ワーナーとの協力関係を続けていくらしい。

しかし、レジェンダリーは、独自ブランドの確立に伴う発言権のアップを要求しているようで、その関係性はいまも良好といえないようだ。2019年のゴジラ続編の二度にわたる公開延期も、そうした関係性を知ったいまでは、どうしても不安が付きまとう。その中で公開された、映画『ランペイジ』は、モンスターバースの製作難航に対する、ワーナーなりの回答だったのかもしれない。レジェンダリーと協力せずとも、これくらいの怪獣映画ならば、自社スタジオで製作していくことも可能だという、強い意志表明を感じてしまった。さて、モンスターバースの行く末はいかに…。

人類最強の男、ドウェイン・ジョンソン

プロレスファンからは「ロック様」の愛称で知られる、俳優ドウェイン・ジョンソン。『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001)で俳優デビューを果たしたジョンソンは、その後も、ハムナプトラのスピンオフ映画、『スコーピオン・キング』(2002)で映画初主演を務めた。以降も『モアナと伝説の海』(2016)『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)『スカイスクレイパー』(2018)と立て続けに出演し、いまやハリウッドを代表する人気俳優のひとりとして、多忙な日々を送っている。

ランペイジ 巨獣大乱闘
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

本作でジョンソンが演じるのは、霊長類学者のデイビス・オコイエ博士だ。プロレスラーとしての全盛期を知る者からすれば、その体の大きさが、ひと回りほど小さくなっていると感じてしまうが、それでも彼の筋肉質なカラダは、人類最強と呼ぶにふさわしいものであるばかりか、俳優としては類を見ない屈強な体格を有している。「霊長類学者がこれほどの筋肉を?」と、疑問符がつくのも納得だが、それもオコイエ博士が元特殊部隊員で、国連の対密猟対策チーム出身だからであるという、ドウェイン・ジョンソンの筋肉を説明するためだけに、とってつけたような設定が盛り込まれている。

軍ですら歯が立たない巨大化したゴリラ、オオカミ、そしてワニ。三つ巴の大乱闘に立ち向かう第四の勢力、それこそが人類最後の希望、オコイエ博士だ。シカゴに立ち並ぶ超高層ビルを、次から次へと破壊し尽くす驚愕の大惨事に、オコイエ博士はご自慢の筋肉で事態の解決を図ろうとする。ある時には結束バンドを一瞬にして引きちぎり、またある時には、厳重なセキュリティドアを軽く蹴破ってみせる。

ランペイジ 巨獣大乱闘
© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

巨獣たちの独壇場となったシカゴ。ゴリラのジョージはバイオ遺伝子によって凶暴化、森林地帯から来た野生オオカミは飛膜をもった空飛ぶ巨大猛獣に、さらに、フロリダの巨大ワニは怪獣のごとく変貌し、暴れ狂うモンスターたちに街はズタズタだ。ドウェイン・ジョンソン扮するオコイエ博士はその状況を、筋肉のみならず、冷静な判断で対処していく。強靭ボディのマッチョ男は意外にも紳士的で、機転のきく振舞は、単なる脳筋キャラではないようだ。これは、ドウェイン・ジョンソンが演じる、どのキャラクターにも当てはまる要素だといえる。それもジョンソンの人柄の良さが、そのまま映画のキャラクターに反映されているかのようだ。優しさと勇気、そして強さを備えた現代のリアルヒーロー、ドウェイン・ジョンソンを、今後も陰ながらに応援していきたい。

Writer

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Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。

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