『ローグ・ワン』チアルート・イムウェ特集 ─ 「宇宙最強」ドニー・イェン演じる盲目の戦士よ、フォースと共に

ド兄さん スター・ウォーズで大暴れ
「宇宙最強」ドニー・イェンが、スター・ウォーズの世界でストーム・トルーパーをしばき倒す、それも棒一本で──。ドニー・イェン演じるチアルートの目の覚めるようなアクションは、『ローグ・ワン』劇中でもハイライトとなるひとつだ。
ルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルですら、かつて「ライトセーバーの使い手でベストだったのは誰?」との問いに「『ローグ・ワン』でマーシャルアーツをやってた彼」と答えている(残念ながらマークはこの時、ドニー・イェンの名を失念してしまっていた)。「初めて見た時は、もう僕はライトセーバー使うのやめようかなと思わされましたよ。最高でしたね。」
実際にはライトセーバーを握っていないにも関わらず、ルーク・スカイウォーカー(役のマーク・ハミル)にライトセーバー引退を考えさせるほどキレのあるアクションを魅せたドニーにとって、『ローグ・ワン』でマーシャルアーツを披露することは自然だった。「僕はたくさんのマーシャルアーツをやってきた。9歳のときに始めて、それからいろんなスタイルを学んできました。」
ドニーは、「すべての映画で、僕は作品独自のマーシャルアーツをそれぞれ作っています」という。つまり、『ローグ・ワン』のアクションも、ドニーが考案したアイデアが盛り込まれているということだ。「『スター・ウォーズ』専用のマーシャルアーツをちょっとだけデザインしたんです。」
「正気か 私は盲目だぞ」
「業界の人たちは、僕の経験値を分かっている。」HeyUGuysのインタビューでは、ドニーがどのようにして殺陣に自身のアイデアを取り入れたかを語っている。「殺陣になると、僕に”どう思います?”って聞かれるんです。だから自然と殺陣に(自分のアイデアが)取り入れられていって。」
チアルートは、盲目である代わりにほかの神経を研ぎ澄まして戦う。これは撮影に挑んだドニーにも同様だった。撮影用のコンタクトレンズは、ドニーの視覚をほとんど塞いでいたのだ。
「難しかったです。思っていたよりだいぶ難しかった」とPeopleに語ったドニーは、HeyUGuysのインタビューでは「慣れるまでにしばらくかかりました」とも話している。アクション・シーンはもちろんのこと、ドラマを演じる上でも慣れが必要だった。
「たとえば、(ジン・アーソ役の)フェリシティ・ジョーンズと一緒に演じているところでは、彼女の目を見ることができない。ちょっとした反応やリアクションを取ることができないんです。」
ちなみに、撮影用のコンタクトレンズを装着していられるのは、もって3時間。装着している間もだんだんと瞳の不快感が増していき、3時間以内には「我慢できないほど」になったという。
もっとも、こうした不自由さがドニーにキャラクターとの一体感を与えた。「コンタクトレンズを装着しているからこそ、このキャラクターをもっとうまく表現できると思いました。心で感じることを学ばなければならなかったからです。そうすれば、このキャラクターをよりフォースに近づけられる。」
なお、キャラクターデザインの初期段階においてチアルートの瞳の色は「実際の白内障のような色」、つまり純粋な白色であった。しかし共同コスチュームデザイナーのグリン・ディロンは、デザインの整合性を我々の現実世界に準拠させることに疑問を覚えた。曰く、「『スター・ウォーズ』はリアリティ・ショーにはなれない」と。
そこで彼らは、盲目の瞳を青色にしたのだ。「私は青い目をした中国系のキャラクターは、とても目を引くだろうと言った。コーカソイド(※)やヨーロピアンでも大したことはないが、中国系のキャラクターならば、とても新鮮に映ると。」
(※:白人のこと)
フォースと共に
チアルートはフォースを信じたが、ジェダイやシスのようにフォースを扱うことは出来なかった。しかし、万物に宿るフォースの流れを理解することはできた。盲目ながらもしなやかな身のこなしはフォースのためでもある。その所縁を更に感じさせることに、チアルートの扱う棒の先端部分には、カイバークリスタルが埋め込められているという。
カイバークリスタルとはジェダイのライトセーバーや、デス・スターのスーパーレーザーの動力源となる鉱石。チアルートはこのカイバークリスタルから発せられる”倍音”を聞き取る事ができ、そのため棒の先端部分がどこにあるのかを認識することができるのだ。
『ローグ・ワン』の一行の中でも、最もフォースの神秘に近い心を持っていたチアルートは、劇中でもその信念に助けられて奇跡的な活躍を見せた。最後に、演じたドニー・イェンが語ったフォース観を記しておこう。