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『ローグ・ワン』最大の戦場は編集室だった!再撮影から編集まで、製作の裏側をスタッフが証言

映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、劇場公開から約3週間が経ち、すでに多くの観客から高い評価を獲得している。しかし本作で同時に語られがちなのが、“本編の半分以上が撮り直された”やら、“予告編の映像が本編にない”やらといった、怒涛の再撮影や製作トラブルの話題だ。

本編の再撮影については、THE RIVERでも情報が届いた当時から随時取り上げてきた(記事1)(記事2)。また公開の直前には、ギャレス・エドワーズ監督が再撮影の真相を語ったことで、ひとまず公式の見解が得られている。

とはいえギャレス監督のコメントには、どこか歯に物が挟まったような印象もぬぐえない。再撮影で活躍したとされるトニー・ギルロイについても、ギャレス監督がその仕事ぶりをはっきり述べたわけではないのだ。またギャレス監督だけでなく、出演者たちも、再撮影に関しては具体的なコメントを避けつづけている。

結局、『ローグ・ワン』の再撮影とは一体なんだったのか? どのシーンが再撮影され、どの部分が大きく変更されたのか?

あらゆる噂が流れる中、ついに真相を知るスタッフふたりが口を開いた。『ローグ・ワン』の編集を担当した、コリン・グーディーとジョン・ギルロイだ。彼らの証言によって、『ローグ・ワン』製作における最大の戦場となった編集室の様子や、その製作プロセスの一部が明らかになった。

【注意】

この記事には、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレが含まれています。

脚本なしの映像コンテ作り

2014年、ギャレス監督のデビュー作『モンスターズ/地球外生命体』(2010年)を編集したコリン・グーディーは、ギャレスの依頼で『ローグ・ワン』のストーリー・リール(物語の流れを映像コンテ化したもの)を製作している。しかし当時はまだ脚本がなく、コリンに渡されたのは簡単なシーンの流れのみだった。そこでコリンは、思わぬ方法でストーリー・リールを製作している。

コリン 「クレニックのシャトルが惑星に降り立つ」みたいな、シンプルな言葉が書いてあったんだ。ほかの映画なら、きっと2~3分の映像になるんだろうが、『スター・ウォーズ』作品を観ると、それがわずか45秒や1分しかない。だから(ストーリー・リールの)全体を作るために、『スター・ウォーズ』作品や、他の映画から山ほど映像を使ったよ。時間を計る良いアイデアだったね。

たとえばコリンは、設計図保管庫のドアが閉まるスピードを計るため、映画『ウォー・ゲーム』(1983年)より大きな扉が閉まる映像を使用したり、ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)が反乱同盟軍の尋問を受ける場面の長さを知るために、『エイリアン』(1979年)でリプリーが尋問されるシーンを使ったりしたという。

コリンによると、実際に本編で必要なシーンの長さを示すべく、既存の映画から引用された映像は、ストーリー・リールの約4分の1を占めていたらしい。残り4分の3にはコンセプト・アートが使用され、どのような映像に置き換えられるかは映像の下部にキャプションとして表示されていたようだ。その後、VFXスタジオのザ・サード・フロアー社によって作成されたアクション・シーンのプレビズ(映像コンテ)には、惑星ジェダが崩壊する場面や、イードゥーでジンがゲイレンを救おうとする場面、スカリフのシールド・ゲートを突破する場面やクライマックスの決戦シーンがすでに含まれていたという。

こうして事前の準備は完了し、ついに『ローグ・ワン』の撮影はスタートする。

煮詰まる現場、そして再撮影へ

『ローグ・ワン』の撮影が始まった頃、編集チームには、コリン以外に『ホビット』シリーズのジャベス・オルセンが参加していた。ふたりは撮影された映像を分けながら編集を進めていったという。

コリン たとえば惑星イードゥーの、山に雨が降っているシーンは、私がまるごと編集した。すでにプレビズを約20分間編集していたから引き受けられたんだよ。ジャベスには別のシーンを編集してもらった。私たちはそんなふうに仕事を進めたのさ、まさにチームでの仕事だよ。

ジェダの市場での戦闘シーンみたいな大きな場面では、すごい量の映像が届いたのをなんとか切り抜けた。ギャレスとの仕事がそうなるのは分かってたし、どんなものが彼の目に止まって、彼がどんなものを好きなのかは知ってたしね。だから、あるシーンでジャベスを手伝ったかと思えば、次はそのシーンをジャベスが編集して、数週間後にはまた私が編集したこともあった。ただ、あまりにもいろんなバージョンが出来上がって、状況がつかみづらくなったね。

コリンによると、初回編集の時点で撮り直しが必要なことは明らかだったが、それは想定通りの展開だったという。実際にハリウッドの大作映画では、本撮影ののちに追加撮影が実施されることは、決して珍しいことではない。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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