米レビューサイト「Rotten Tomatoes」劇場公開前の観客評価機能を終了 ─ 『キャプテン・マーベル』への荒らし行為に対策講じる

いま、映画業界においてひとつの問題となっているのが「悪質ファン」だ。米国では「Toxic Fandom(有害なファンたち)」と形容されることも多いが、映画ファン、あるいはシリーズのファンでありながら、作品や関係者への攻撃行為を繰り返す人々のことである。
2019年2月、この問題に関して大きな話題となっていたのが、マーベル・シネマティック・ユニバース最新作『キャプテン・マーベル』(2019年3月15日公開)だった。女性ヒーロー映画であること、主演のブリー・ラーソンが女性インタビュアーによる取材の機会を増やすよう求めたことなどから、一部の“映画ファン”がなぜか怒り始め、攻撃行為を開始していたのだ。
その舞台となったのは、米国の大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」だった。劇場公開前に作品の期待度を数値化する、観客の「観たい(WANT TO SEE)」スコアを下げることを目的に、悪質な“荒らし投票”が相次いだのだ。批評家からは早くも絶賛を受けていたにもかかわらず、『キャプテン・マーベル』の「観たい」スコアは28%程度まで低下、さらに攻撃的なコメントも数多く残されていた。
Rotten Tomatoes、システムを大幅に変更へ
こうした動きを受けて、2019年2月25日(米国時間)にRotten Tomatoesはシステムの大幅変更を発表した。劇場公開前のコメント受け付けを終了したほか、期待度を示す「観たい」表示をスコア(パーセンテージ)ではなくユーザー数で表示する方針に切り替えたのである。これについて、運営側は「(劇場公開後に観客の評価を示す)オーディエンス・スコアとの混乱を避けるため」と説明。事実上、劇場公開前に観客からの評価を受け付ける機能を廃止した格好だ。あくまでも観客の期待度は、スコアではなく「観たいと思っているユーザーの数」だけで示されることになる。
システムの変更によって、2月27日(日本時間)現在、『キャプテン・マーベル』のページはこのような状態となっている。今回、ページのインターフェースも若干変更された。

このたびRotten Tomatoesは「残念ながら、時には荒らし行為に近い、建設的でない情報が増えるケースを確認しています。これは一般の読者にとって有害なものと考えました」とのコメントを発表。今回のシステム変更は「現時点で最良の行動」との考えを示している。
むろん、一部のファンが荒らし行為に及ぶケースは『キャプテン・マーベル』が初めてではない。同じくマーベル・シネマティック・ユニバース作品である『ブラックパンサー』(2018)や、世界規模で物議を醸した『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)、女性によるリブートがバッシングを受けた『ゴーストバスターズ』(2016)といったケースは映画ファンの記憶にも新しいのではないだろうか。今回、Rotten Tomatoesがシステムの変更に踏み切ったことは、いかに一連の行為が悪質で、運営側にとっても無視できない問題となっていたかを如実に示している。
発表によれば、Rotten Tomatoesは映画の劇場公開後、従来通り観客からの評価やコメントを受け付けるとのこと。しかし問題は、公開後に荒らし行為への対策が講じられるかどうかにもあるだろう。荒らし行為が劇場公開後に再開されてしまえば、今回の取り組みは一時的な効果にとどまったと言わざるを得ないからだ。また、全体に比すれば“ごく一握り”のユーザーによってスコアが大幅に変動する可能性が明らかになった以上、これは観客スコアそのものの信頼性が揺らぐ事態であり、過去のケースについても再度きちんと検証されるべき事案とすらいえる。なお米Colliderは、一連の荒らし行為について「どれだけの人間が共通して関わっているのだろう」との疑問も呈した。
『キャプテン・マーベル』は2019年3月8日に米国での劇場公開を迎える。Rotten Tomatoesに限らず、各映画サイトやSNSにおける動向には引き続き注意したい。
Sources: Rotten Tomatoes, Collider