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【インタビュー】『RUN/ラン』ヒッチコック&シャマランやコロナ禍が与えた影響 ─『search/サーチ』との共通点とは

RUN/ラン
© 2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

search/サーチ』(2018)のアニーシュ・チャガンティ監督&製作陣による新作映画、『RUN/ラン』が待望の日本公開を迎えた。

本作は自宅で完全に隔離された環境で育った車椅子の少女クロエと、その娘を溺愛する母親の不気味な関係性を描くスリラー。少女はあまりにも過保護な母親に疑問を抱き始め、調査に乗り出すことに。次第にその裏に隠された衝撃の真実が浮き彫りとなり、やがて少女は想像を絶する試練と向き合っていく。主演は「アメリカン・ホラー・ストーリー」(2011-)『ミスター・ガラス』(2019)などのサラ・ポールソンだ。

この度、THE RIVERはアニーシュ・チャガンティ監督に単独取材を実施。貴重な機会の中で、『ラン』と『サーチ』の共通点や、アルフレッド・ヒッチコックやM・ナイト・シャマランやトム・クルーズからの影響、コロナ禍との繋がりなどについて尋ねてみた。

『ラン』と『サーチ』の共通点

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──『ラン』と『サーチ』には共通点があるように感じました。『サーチ』よりも『ラン』の方が過激に娘を守る姿が描写されていましたが、どちらも片親と娘の関係性を捉えている作品です。これは偶然でしょうか、それとも監督にとっての映画製作のテーマなのでしょうか?

偶然ではありません。ただ、同時に映画製作のテーマともいいたくはないです。それというのも全ての映画を親子の物語にするつもりはないので。とはいえ、セブ・オハニアン(共同脚本家)と僕は少し変わった背景を持っているので、そこから影響を受けていることは間違いないでしょう。セブはアルメニア系で、私はインド系のアメリカ人。だからこそ家族や親というテーマは、私たちにとってより身近な存在かつ重要な要素なんです。

それと、あなたが仰るように、ふたつの作品は全く異なる方向性ですが、テーマは全く同じです。どちらの作品も自分の子供を守るためなら何でもする親の物語ですから。それは同じような哲学であり、『サーチ』ではサポートしたり励ましたりしていますが、『ラン』ではそれが行き過ぎたらどうなるのかという点を描いているわけです。意図的に角度を大きく変えているんです。それとPC画面上でなくても、スリリングな物語を作ることが出来ると自分自身に証明したかったのもありますね。

──『サーチ』のフォトモデルやサラ・ソーン(主人公の妻役)が劇中に登場していました。そのほかにも『サーチ』からのイースターエッグやクロスオーバーは存在しますか?

『ラン』でイースターエッグを入れるのは正直なところ難しかったです。それというのも、世間から孤立したような場所で物語が基本的に展開されるので、外の世界の要素を取り入れることがなかなか出来ないので。だからモデルに関しては、クロスオーバーとして上手くいった要素のひとつでしょう。サラ・ソーンに関しては同じ役柄を演じているわけではありませんが、そこに繋がりを感じて楽しんでもらっても構いません。とにかく様々な形で世界観を拡大していくことが楽しいです。

ヒッチコックやシャマランからの影響

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──狂気に満ちた母親と何も知らない娘。このストーリーは、どこから着想を得られたのでしょうか?

まず、『サーチ』とは真逆のことをやりたいという一心から始まりました。ある日、実話を基にした興味深い記事を見つけたんです。その記事には、自分の子供の病気を偽装していた母親のことが書かれていました。それも、その子供は母親がやっていることを全て理解していて、それに自らが加担していくという内容だったんです。

そこから、“娘が何かを見つけて、母親が隠している真実を解き明かしていく”というような物語を思い付きました。ヒッチコックの映画みたいな。この映画でやりたかったこと全てが揃ったようにも感じました。それが『サーチ』とは正反対の方向性で、シンプルかつスリリングなストーリーを届けることだったんです。

──アルフレッド・ヒッチコックはもちろんですが、M・ナイト・シャマランのような雰囲気も感じさせられました。ふたりの監督作品から実際に影響を受けているのでしょうか?

このふたりからは特に影響を受けています。M・ナイト・シャマランに関しては、私が映画を作る理由でもありますから。子供の頃、彼の顔を新聞で拝見したのですが、彼が撮影現場で指示を出している姿を見たとき、インド系や白人以外でも映画を作れることを初めて知りました。“自分もこうなることが出来るんだ”と思って、それから映画製作を始めることにしたんです。

──それではヒッチコックに影響を受けたきっかけは何だったのでしょうか?

ヒッチコックは、シャマランが最も影響を受けている監督のひとりなので、自然な流れで辿り着きました。ふたりの作品を見て育ったというわけです。『ラン』では、彼らの作品を見習いながら作っていたところもありました。だから私にとってこの映画の良いところは、彼らの作品の好きな要素を思い出させてくれることですかね。逆に悪いところは、自分のやり方の気に入らない部分に気づいてしまうところです(笑)。

トム・クルーズのような疑似体験

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──クロエが屋上から必死に移動する場面には度肝を抜かれました。あのアイデアはどのように思い付かれたのでしょうか?

ありがとうございます。私も含めて多くの人にとってお気に入りのシーンです。映画の様々な要素がひとつになった集大成のようなシーンですから。

とにかくこの映画の肝は、ライアン・レイノルズの『リミット』(2010)での棺桶や、『サーチ』でのPC画面、『パラノーマル・アクティビティ』(2007)での部屋のように、映画の舞台を限定的にすることでした。このような作品で観客を飽きさせないために重要なのは、さまざまなギミックを用意すること。そこで、少女を屋根の上に登らせるという発想を思い付きました。上手くいけば、トム・クルーズのような気分にさせられるだろうと。それこそ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)でトム・クルーズが、ブルジュ・ハリファの側面で宙吊りになるみたいな。

あとは、クロエがいかにエンジニアや科学者のように頭が切れる子であるかを証明したかったんです。“この部屋からは出られない、あの部屋にどうやって行くのか”という問題を巧妙に解決していく少女の姿を見せるのと同時に、私たちが作り上げた空間、ギミックが最高な形で組み合わさった瞬間でした。

娘を溺愛する毒親と何も知らない娘

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──『ラン』というタイトルはどのように決断されたのでしょうか?

もともとのタイトルは『マザー』でした。そこからすぐに『ラン』になりましたけど。物語の世界と合致しているのと、命令する感じがあって素晴らしいと思ったので。ただ、YouTubeとかのコメントで、“クロエはそもそも走れないじゃないか”みたいな皮肉が多く寄せられていました。そこがポイントなんですけどね。だって彼女はとにかく逃げなければならないので。

──クロエが母親の真実を知る前、娘から見た母親はどのような存在だったのでしょうか? 

私たちはいつもふたりのことを、“ふたりだけで世界を相手にしていた”と表現していて、彼女たちは親子でありながら親友のような関係だったんです。ただ、母親は娘に嘘の現実を教えていました。まるでふたりだけが普通で、外にいる他の人は異常者のような。その結果、ふたりは信頼関係が厚くなり、より親密な関係になったわけです。映画の冒頭でもわかるように、ふたりは互いに言葉を発しません。それは互いのことを知り尽くしていて、とにかく信頼し合っているからなんです。

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──この映画では描かれていない過去が多くあるように感じましたが、母親の背景を描く前日譚映画はいかがでしょうか?

いいえ、それは難しいです。ただ、過去の出来事を完全に説明するには、あとふたつほどシーンが必要でした。アメリカでは、Huluでこの映画が配信されていて、削除された場面がいくつか存在するんです。それらは様々な理由で皆さんが鑑賞するバージョンからはカットされていますけど。その中では母親の身に起こった過去の出来事についてもう少し詳しく説明されています。ただ、それでも前日譚は必要ないでしょう。とにかく暗い作品になってしまいますし、正直なところ、私はもっと明るい題材の作品を撮りたいと考えています。

──明るい題材の作品とのことですが、何か具体的に作りたいものはありますか ?

とにかく、娘が母親から薬で毒されて、そこから脱出しなければならないみたいな映画以外のものを目指しています(笑)。実は、次回作として『オーシャンズ』シリーズや『インセプション』のような強盗映画を準備しているのですが、この作品は観ているだけで自然と楽しさがこみ上げてきますよ。キャラクターたちが冗談を言い合っていて、常に笑っていられるような作品となるでしょう。

コロナ禍からの影響

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──コロナ禍の影響で劇場で映画を観ることが困難になりつつあります。監督は映画が劇場ではなく、自宅で視聴されることが多くなっていることについていかがお考えでしょうか?

家で見られる映画があれば、どんな映画でも私は見ると思います。アメリカでは、HBO Max(ワーナー・ブラザースによるストリーミングサービス)があって、劇場公開と同時に配信されます。『ゴジラvsコング』なんかもそうでしたし、『スペース・プレイヤーズ』『マトリックス』『デューン』なども。だから、それらは家で見ることになると思います。結局のところ、存在するもの対して文句を言う必要もないと思うので。

もちろん、『ラン』をはじめ次回作が劇場で観られることを私は強く願っています。スクリーンで観るということだけではなくて、劇場で響き渡る様々な音などと共に、誰かと一緒に観ることが重要だからです。

──コロナ禍の前に製作された映画だと思いますが、結果的に何か繋がりなどが生まれたと思いますか?

意図していなかった部分で繋がりが生み出されたとは思っています。クロエは自宅にずっと隔離された中で育てられてきましたわけですから、母親に止められて外に出ることはおろか、その世界と接点を持つこともほぼありませんでした。これは私たちが今一番やりたいことと同じです。とにかく外に出たい、外の世界と接点を持ちたいみたいな。そのような繋がりは、意図していたわけではありませんが、コロナ禍での生活が続く中で次第に浮き彫りになっていきましたね。

映画『RUN/ラン』は、2021年6月18日(金)より全国公開中。

予告編はこちら

Writer

Minami
Minami

THE RIVER編集部。「思わず誰かに話して足を運びたくなるような」「映像を見ているかのように読者が想像できるような」を基準に記事を執筆しています。映画のことばかり考えている“映画人間”です。どうぞ、宜しくお願い致します。

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