【インタビュー】『RUN/ラン』ヒッチコック&シャマランやコロナ禍が与えた影響 ─『search/サーチ』との共通点とは

『search/サーチ』(2018)のアニーシュ・チャガンティ監督&製作陣による新作映画、『RUN/ラン』が待望の日本公開を迎えた。
本作は自宅で完全に隔離された環境で育った車椅子の少女クロエと、その娘を溺愛する母親の不気味な関係性を描くスリラー。少女はあまりにも過保護な母親に疑問を抱き始め、調査に乗り出すことに。次第にその裏に隠された衝撃の真実が浮き彫りとなり、やがて少女は想像を絶する試練と向き合っていく。主演は「アメリカン・ホラー・ストーリー」(2011-)『ミスター・ガラス』(2019)などのサラ・ポールソンだ。
この度、THE RIVERはアニーシュ・チャガンティ監督に単独取材を実施。貴重な機会の中で、『ラン』と『サーチ』の共通点や、アルフレッド・ヒッチコックやM・ナイト・シャマランやトム・クルーズからの影響、コロナ禍との繋がりなどについて尋ねてみた。
『ラン』と『サーチ』の共通点

──『ラン』と『サーチ』には共通点があるように感じました。『サーチ』よりも『ラン』の方が過激に娘を守る姿が描写されていましたが、どちらも片親と娘の関係性を捉えている作品です。これは偶然でしょうか、それとも監督にとっての映画製作のテーマなのでしょうか?
偶然ではありません。ただ、同時に映画製作のテーマともいいたくはないです。それというのも全ての映画を親子の物語にするつもりはないので。とはいえ、セブ・オハニアン(共同脚本家)と僕は少し変わった背景を持っているので、そこから影響を受けていることは間違いないでしょう。セブはアルメニア系で、私はインド系のアメリカ人。だからこそ家族や親というテーマは、私たちにとってより身近な存在かつ重要な要素なんです。
それと、あなたが仰るように、ふたつの作品は全く異なる方向性ですが、テーマは全く同じです。どちらの作品も自分の子供を守るためなら何でもする親の物語ですから。それは同じような哲学であり、『サーチ』ではサポートしたり励ましたりしていますが、『ラン』ではそれが行き過ぎたらどうなるのかという点を描いているわけです。意図的に角度を大きく変えているんです。それとPC画面上でなくても、スリリングな物語を作ることが出来ると自分自身に証明したかったのもありますね。
──『サーチ』のフォトモデルやサラ・ソーン(主人公の妻役)が劇中に登場していました。そのほかにも『サーチ』からのイースターエッグやクロスオーバーは存在しますか?
『ラン』でイースターエッグを入れるのは正直なところ難しかったです。それというのも、世間から孤立したような場所で物語が基本的に展開されるので、外の世界の要素を取り入れることがなかなか出来ないので。だからモデルに関しては、クロスオーバーとして上手くいった要素のひとつでしょう。サラ・ソーンに関しては同じ役柄を演じているわけではありませんが、そこに繋がりを感じて楽しんでもらっても構いません。とにかく様々な形で世界観を拡大していくことが楽しいです。
ヒッチコックやシャマランからの影響

──狂気に満ちた母親と何も知らない娘。このストーリーは、どこから着想を得られたのでしょうか?
まず、『サーチ』とは真逆のことをやりたいという一心から始まりました。ある日、実話を基にした興味深い記事を見つけたんです。その記事には、自分の子供の病気を偽装していた母親のことが書かれていました。それも、その子供は母親がやっていることを全て理解していて、それに自らが加担していくという内容だったんです。
そこから、“娘が何かを見つけて、母親が隠している真実を解き明かしていく”というような物語を思い付きました。ヒッチコックの映画みたいな。この映画でやりたかったこと全てが揃ったようにも感じました。それが『サーチ』とは正反対の方向性で、シンプルかつスリリングなストーリーを届けることだったんです。
──アルフレッド・ヒッチコックはもちろんですが、M・ナイト・シャマランのような雰囲気も感じさせられました。ふたりの監督作品から実際に影響を受けているのでしょうか?