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『アベンジャーズ/エンドゲーム』ルッソ監督が教える、よりよいストーリーのつくり方 ─ マーベル映画にテレビ経験が与えた影響とは

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』サノス
© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

映画アベンジャーズ/エンドゲームの公開を控えるアンソニー&ジョー・ルッソ監督は、いまやハリウッドを代表するストーリーテラーだといっていい。ヒーロー映画に異なるジャンルの要素を織り込むアイデア、巧みな筋立てとサプライズ、そして大勢の登場人物を鮮やかにさばきつつ、ほぼ全員に映画的な見せ場と心理ドラマを用意する群像劇としての強度。前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)の魔法のような語り口には、全世界の観客と批評家、作り手たちが舌を巻いた。

Boxoffice Proのインタビューでは、ジョー監督が、自ら“ルッソ流”と呼ぶストーリーの秘密を語ってくれた。もちろんすぐに真似できる技術ではないが、現代に刺さる物語論と創作論の一端を確かめてほしい。

アンソニー&ジョー・ルッソ
アンソニー&ジョー・ルッソ Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anthony_and_Joe_Russo_by_Gage_Skidmore.jpg

「密度」と「ひねり」

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の“エース”として『アベンジャーズ/エンドゲーム』を任されたルッソ兄弟は、映画『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』(2002)で監督デビュー後、『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』(2006)ののち、MCU参入作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)まで長編映画を手がけていない。『ウィンター・ソルジャー』ではヒーロー映画と政治スリラーを融合、たくさんの登場人物が登場する群像劇としての要素も手際よく扱ってみせた。

『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』『トラブル・マリッジ』の2本と『ウィンター・ソルジャー』の間に、ルッソ兄弟は数々のテレビドラマで脚本・監督・製作を担当。代表作は「ブル~ス一家は大暴走!(原題:Arrested Development)」(2003-2006)、「コミ・カレ!!」(2009-2014)の2本だ。ジョー監督は、両作での経験がMCU作品のストーリーに影響を与えたことを認めている。

「どちらの番組も大規模な群像劇だったので、非常に登場人物の多い複雑なコメディを、21分間の物語に詰め込んでいました。僕たちは“ルッソ流”と呼んでいましたが、作品がより面白くなったと感じられるまで密度を上げるんです。すると、とても早く展開するのでジョークの半分を見落としてしまうし、もう一度見直さなくてはいけなくなる。それが狙いでした。」

この“密度を上げる”という発想は、MCU作品を手がける際にも変わっていないという。ジョー監督は「作品の長さとは無関係に、目が離せないほど密度の高い物語を作りたいんです」と述べているが、この方法論が最大限に活かされたのが、まさしく『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』だった。登場人物が入り乱れる情報過多な物語を、整理しながらスピーディに展開していく技法は、観るたびに新たな発見を観客にもたらすのである。

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』© Marvel Studios 2018

脚本家コンビとのコラボレーション

『ウィンター・ソルジャー』、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)、『インフィニティ・ウォー』、そして『エンドゲーム』。ルッソ兄弟のMCU4作品で脚本を担当したのは、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)や『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013)も執筆したクリストファー・マルクス&スティーブン・マクフィーリーだ。

ジョー監督は、ルッソ兄弟とマルクス&マクフィーリーの4人による共同作業を「素晴らしい経験」だといい、『エンドゲーム』も「特別なコラボレーションになっています」と語る。「僕たちは最初から密接に、協力して作業を進めてきました。映画を支えるビジョンの動力源は間違いなく僕たちですよ」。

ルッソ兄弟は、テレビドラマの脚本作業で培ったノウハウと、自らのストーリー開発にしみついていた方法を、マルクス&マクフィーリーとの間で再現したようだ。数ヶ月がかりで全員がオフィスに通い、ともにストーリーを生み出し、とことん話し合う。ジョー監督は、“大作映画だからこそ”監督が物語に強い意志を示す必要性があるのだと強調した。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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