Menu
(0)

Search

『アベンジャーズ/エンドゲーム』の作風、前作『インフィニティ・ウォー』との違いは ─ 現実世界を反映する、ルッソ兄弟の新たなテーマ

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
© Marvel Studios 2018

マーベル・シネマティック・ユニバースのまごうかたなき集大成、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)と直結する作品だ。そのことは、すでに公開されている予告映像でも明らかである。

『アイアンマン』(2008)から22本の映画にまたがった物語を締めくくるのは、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)、『インフィニティ・ウォー』に続いての登板となるアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟。米Boxoffice Proのインタビューでは、本作における企みと物語のテーマがわずかに語られている。

「同じ映画を2度作りたくはない」

『アベンジャーズ/エンドゲーム』の公開を控えた今、ジョー監督は「とても貴重な経験をしています」と語る。

「多面的なストーリーテリングが10年間続いていて、それぞれのシリーズに大きな成功を収めたキャラクターがいて、観客はすべてのシリーズに思い入れがある。映画業界で、かつてこんなことはなかったと思います。[中略]いくつものシリーズが、『エンドゲーム』のようなフィナーレに向けて組み立てられたことはなかったんじゃないでしょうか。」

アベンジャーズ/エンドゲーム
『アベンジャーズ/エンドゲーム』MARVEL/PLANET PHOTOS 写真:ゼータイメージ

これまでルッソ兄弟は、『ウィンター・ソルジャー』で政治スリラーを、『シビル・ウォー』でサイコ・スリラーを、『インフィニティ・ウォー』では強盗映画の要素を作品に取り入れてきた。観客の映画的記憶を刺激する作劇は、ルッソ兄弟の得意技にして大きな特徴だ。それでは、『エンドゲーム』は一体どんなジャンルの映画を参照しているのだろうか。この問いかけに、ジョー監督は「内容を言わずに答えるのは難しいですね」と答えた。

今回は非常に独特な作風です。『インフィニティ・ウォー』とは異なる主旨の作品なので、別々の映画にしたいと思いました。もちろん物語のバトンは受け継いでいますし、それは22本の映画にわたって続いてきたもの。けれども今回は『インフィニティ・ウォー』とは違う作風ですし、別の視点から語られるストーリーになっています。僕たちが映画監督として大切にしたのは、2本の映画を別々の作品にすることでした。同じ映画を2度作りたくはなかったですからね。」

現実世界を反映するヒーロー映画

ヒーロー映画という枠組みにさまざまなジャンルの物語を取り込むルッソ兄弟は、現実の世界で起こっている出来事を即座に受け止め、常にクリエイターとしての応答を続けている映像作家でもある。以前、アンソニー監督は「自己満足にならないよう、我々を苦しめるものへの考えを映画に取り入れようとしています」と語っていた。サノス役のジョシュ・ブローリンは、自身の役柄とドナルド・トランプ米大統領を比較したことすらあったのだ。

ジョー監督は、自分たちの作品について「時代を反映していることは確かです。描いている物語と(現実で)起きていることには相乗効果を生みたいですし、その思いには忠実に、正直になってきました」と語る。“コミックや映画と現実は無関係、引きつけ過ぎるのはどうか”という声もあるが、少なくともルッソ兄弟はそのようには考えていない。

『ウィンター・ソルジャー』は監視国家や、政府は人々の生活をどこまで制御すべきかというテーマの作品。製作中にスノーデン事件(2013年6月、元CIAのエドワード・スノーデンが、米国家安全保障局による個人情報監視の事実を告発)が起こって、事件と映画のテーマが重なりすぎてしまうと思い、作品に調整を加えました。『シビル・ウォー』では家族の分裂や過激思想、相容れない両者が殺し合うことなく別々の道を行くことについて描いています。これも我々の社会で起きていたことの反映でした。そして、時には悪が勝利することもある。『インフィニティ・ウォー』ではサノスが勝つんです。」

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』サノス
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』© Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

したがって、『エンドゲーム』ももちろん例外ではない。インタビュアーが予告編の印象から、“世界はヒーローを失ったことを嘆いているように見えるが、それはマーベルのキャラクターにとって何を意味するのか、現実世界をどのように反映しているのか”と尋ねると、ジョー監督は「まさにそんな映画です」と答えた。

「ヒーローの定義とは何か。(『ウィンター・ソルジャー』からの)4作品をすべてまとめて考えた時、ある問いかけがあり、そこにテーマとして答えを出そうとしています。ヒーローであること、立ち上がることの意味は何なのか、という。」

『エンドゲーム』はいかに『インフィニティ・ウォー』との差別化に取り組み、過去22作品を締めくくり、そしてルッソ兄弟のパーソナルなテーマ、同時に社会的なテーマに挑んだのか。その全貌は、そう遠からず私たちの前に現れることになる。

映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』は2019年4月26日(金)全国ロードショー

『アベンジャーズ/エンドゲーム』公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-endgame.html

ジョシュ・ブローリン、サノスとトランプを語る

Source: Boxoffice Pro

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly