「脚本、紙から電子に移行すべき」映画・ドラマの撮影再開めざし、米業界団体がコロナ感染防止策を提出

新型コロナウイルスの終息を前に、映画・ドラマ業界が撮影の再開に向けて動き始めている。このたび感染防止策のひとつとして、キャスト・スタッフが使用する脚本を紙から電子版に移行するというアイデアが出された。米Vanity Fairによると、業界の契約代理団体である米The Alliance of Motion Picture and Television Producersが、22ページにわたる提案書を米カリフォルニア州に提出したという。
2020年3月より大規模な撮影中断を余儀なくされているハリウッドでは、状況を注視しつつ安全策を講じ、今後は各社が撮影再開に向けての取り組みに進んでいく見込み。そんな中、ウイルスを広げる要因のひとつになりうると考えられたのが“紙”だった。提案書には「紙の使用は可能なかぎり最小化すべき」「電子版の脚本、電子版の到着・退出記録といった代替案を模索すべき」と記されているほか、撮影チームのメンバーリストや制作記録、進行表などの書類も電子化しなければならないとされている。
不特定多数の手に触れる可能性がある脚本の電子化は、たしかに映画・ドラマの撮影現場における感染対策としては有用とみられる。しかし一方では、物理的な書き込みや付箋の貼り付けなどができない、前後のページを同時に眺めるような作業ができないなど、創作面での利便性には一定の懸念も残る。流出リスクの問題もありそうだ。それでも新型コロナウイルスの現状を鑑みては、利便性やセキュリティ以上に、感染リスクを下げることが重要という判断だろう。
報道によれば、すでに業界では撮影チームの物理的接触をできるだけ減らす取り組みが検討されているとのこと。ソーシャルディスタンスの確保、マスクやフェイスシールドの着用、不特定多数が触れるものの殺菌消毒のみならず、“技術スタッフは撮影現場に到着したら作業して直帰する”、“俳優やカメラチームはなるべく他のチームと接触しない”という働き方も模索されている。今回の提案書にも「握手やハイタッチ、拳や肘を合わせる、ハグなどの物理的接触は避けるべき」「出演者やスタッフの作業開始・作業終了時間を調整することで、(撮影現場に)同時に出入りする人数を制限する」との内容が盛り込まれた。
そのほか、プリプロダクション(撮影準備)や企画段階についても、「脚本家チームはできるだけバーチャルに移行すべき。不可能な場合は、互いに約2メートルの距離を取り、フェイスカバーを使い、会議の前後には手指の衛生に取り組むこと。紙の使用は最小化すべし」。ラブシーンやアクションシーンについて具体的な言及はなされていないが、「演者が密に接触するシーンは最小限に抑えられるよう、脚本の修正やCGの使用といった対策を検討してほしい」とした。なおテレビ番組の場合、現場に観客を入れることは「薦めない」としている。
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