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『シャン・チー』悪役にして父親・ウェンウー、「愛されることを求めている」 ─ 名優トニー・レオン、ハリウッド進出作の役づくり

シャン・チー/テン・リングスの伝説
©Marvel Studios 2021

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』では、映画界における“事件”が起こる。『インファナル・アフェア』『レッドクリフ』シリーズで知られる香港の俳優、トニー・レオンがハリウッドにとうとう進出するのだ。1982年のデビュー以来、約40年を経ての挑戦である。演じるのは、犯罪組織「テン・リングス」のリーダー、シュー・ウェンウー役だ。

ウェンウーという役柄の難しさは、彼が悪役(ヴィラン)でありながら、主人公シャン・チーの父親でもあることだ。シャン・チーは父の跡を継がず、平凡なホテルマンとして暮らそうとするが、父は息子の前に再び現れる。Elle Singaporeにて、トニーはウェンウー役をあくまでも一人の人間として演じたと語った。

「ヴィランという出発点からウェンウーを考えたことはありません。むしろ、なぜ現在の彼がこうなったのかを深めたかった。過去があり、愛されることを求めている男です。(悪人だけれど)彼は人間であり、家族もいる。なぜソシオパスに、ナルシストに、頑固者になってしまったのか? 脚本を読みながら、理由をたくさん考えました。人に納得してもらうには、まず自分を信じなくてはいけません。そして自分の役を信じるには、なるべく具体的に背景を考えなくてはいけません。どんな食べ物が好きなのか、どんな生い立ちなのか、人の家を訪ねたらなんて言うのか。」

トニー演じるウェンウーは、コミックに登場するフー・マンチューというキャラクターをもとに、映画のため新しく作り出された人物だ。マーベル・スタジオ側は、トニーへの出演オファーの際、「新しいマンダリンを生み出してほしい」と要望。そのため、トニーは撮影前から脚本を数え切れないほど読み返し、頭の中でも反芻し、役柄を細かく作り上げていったという。それでも、役柄は撮影の中で固まっていった。「いざ役に入ると、予想も予測もできないことが起きる。それでも準備しておくのが自分の習性なんです」

シャン・チー/テン・リングスの伝説
©Marvel Studios 2021

これまで、トニーは長年にわたり海外からのオファーを受けるも、脚本や役柄に納得できず出演を断っていたという。それでも『シャン・チー』を引き受けた決め手は、デスティン・ダニエル・クレットン監督の存在だった。「非常に多面的な悪役なので、ぜひ僕に参加してほしいと言われたんです。納得したし、アジア人のスーパーヴィランを演じるのも初めて。アジアのためになる機会だと思い、やらない理由はないと思いました」。

ところで、トニーによると、ウェンウー役で最大のチャレンジはアクションシーンだったそう。「最初はテン・リングスがあるから僕自身は戦わなくていいと聞いていたんです。もっと早く知っていたら、身体的な要求に応えるためにあらかじめ鍛えておいたのに」とは本人の談だ。役柄を作り込むため、さらに自信をつけるため、トニーはできるだけ自分自身でアクションを演じることにこだわる。「求められていることがうまくできないと悔しいので、いつも全力を尽くします」とのこと、今回はトニー・レオンが見せるマーベル流のアクションにも期待すべし。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は2021年9月3日(金)全国公開。

Source: Elle Singapore

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。