【ネタバレ解説】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で重要なアノ楽曲、何故ストリーミングで聴けないのか

この記事には、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれています。

米国で封切りを迎えて約1週間後の2021年12月27日、米Varietyのエディターを務めるマイケル・シュナイダー氏がTwitterにこんな投稿をした。
My kids had been searching for De La Soul’s “The Magic Number” ever since they saw the new Spider-Man movie, but the group still isn’t yet streaming its classic songs. So when they discovered I had a copy, they were stunned. [Waves physical copy of “3 Feet High and Rising” CD]
— Michael Schneider (@franklinavenue) December 27, 2021
「私の子どもたちが、『スパイダーマン』を観てからというもの、デ・ラ・ソウルの“The Magic Number”を検索しているのですが、彼らのクラシック曲たちはまだストリーミング配信になっていないみたいです。だから私がCDのコピーを見つけた時、子どもたちは驚いていました。(アルバム『3・フィート・ハイ&ライジング』のCDのコピーです)」
シュナイダー氏が言及したデ・ラ・ソウルの「The Magic Number」とは、『ノー・ウェイ・ホーム』のエンドロールで流れた楽曲。「3, that’s a magic number〜(3。それは魔法の数字だよね)」という歌詞はまさに、『ノー・ウェイ・ホーム』のピーター・パーカーたちや、完結編の3作目となった本作自体を象徴するものとして、非常に大きな意味を持つ曲であった。
しかし、この「The Magic Number」を聴くことができるのは、CDやYouTubeに投稿された非公式動画を通してのみ。例えばSpotifyで『ノー・ウェイ・ホーム』関連のプレイリストを探しても、そこに同曲は含まれていない。その理由には、デ・ラ・ソウルが初期作品に関して以前から抱えていたレーベルとの権利問題が関係していた。
デ・ラ・ソウルは、80年代後半から90年代のヒップホップシーンにおいてサンプリング革命をもたらした伝説的な3人組グループ。「The Magic Number」もボブ・ドローによる楽曲「Three Is A Magic Number」をサンプリングしたものだ。そんなデ・ラ・ソウルのデビューアルバム『3・フィート・ハイ&ライジング』は、Tommy Boyというインディペンデント・レーベルより1989年に発売された。
以降、デ・ラ・ソウルの音楽カタログの権利は米Warner Bros. Recordsに移っていたが、同社はサンプリングで溢れたデ・ラ・ソウルの楽曲の権利元を明確にしていないままだった。これが、デ・ラ・ソウルの楽曲がストリーミングサービスを含めたデジタル配信で展開されなかった大元の要因だ。
大きく話題となったのが2017年。Tommy BoyがWarner Bros. Recordsからデ・ラ・ソウルの音楽カタログを買い戻したのだ。さらに2019年2月、Tommy Boyは『3・フィート・ハイ&ライジング』のリリース30周年を記念して、デ・ラ・ソウルの楽曲をストリーミングサービス上にリリースすることを発表。遂に彼らの楽曲がネット上にも普及するかと思われたが、リリース直前にデ・ラ・ソウル側が、ストリーミングサービスで生じた収益配分に関する実態を公式Instagramで公表した。
いわく、「Tommy Boyが90% 、デ・ラ・ソウルが10%」だったという。その翌日、Tommy Boyはデ・ラ・ソウルとの交渉が決裂したことを理由に、ストリーミングサービスでのリリースを延期することを発表した。
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しかし、2021年6月に転機が再び訪れる。米ニューヨークに拠点を置く音楽企業Reservoir Musicが、1億ドルもの巨額を投じてTommy Boyが権利を有する音楽カタログを買い取ったのだ。この時、同社のスポークスパーソンは「デ・ラ・ソウルと連絡を取り合い、音楽をファンの元へ届けるために協働していくことになりました」と前向きな声明を発表していた。
先のシュナイダー氏の投稿から約10日後の2022年1月上旬、Varietyはデ・ラ・ソウル関連の最新情報をアップデートした記事において、Reservoir Musicの声明を紹介。同社は「遺憾ながら、デ・ラ・ソウルのストリーミング行きに関する動きはございません」と伝えた。もっとも同社は、これまで目を瞑られてきたサンプルの権利元や収益配分に関する問題解消を約束通りデ・ラ・ソウルと共に努めてきたとされる。Varietyも「映画で使用されるためにはライセンスが必要な為、法的に何らかの前進が見られていることは間違いないだろう」との見解を示している。
ちなみに報道によれば、「The Magic Number」をストリーミングサービスで聴くことができない状況には、とりわけTikTok上で『ノー・ウェイ・ホーム』のファンから不満の声が上がっているという。もしかすると、このある意味“ポジティブな不満”が、デ・ラ・ソウルのストリーミング行きを良い方向に後押ししてくれるかもしれない。
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