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【ネタバレ】『スパイダーマン:スパイダーバース』にスタン・リーが遺したもの ─ カメオ収録秘話、複数の登場シーン、作り手の思い

スパイダーマン:スパイダーバース
(c) 2018 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: (c) & TM 2019 MARVEL.

スタン・リーはひとりじゃない?

「この映画の精神に欠かせない人だから、ちょろっと通り過ぎるようなカメオにはしたくなかった」。クリス・ミラーが言葉にした製作チームの思いは、また別のかたちでも作品に織り込まれている。スタンは店主としてだけでなく、「ちょろっと通り過ぎるカメオ」として、しかし本編のあちこちに出現しているのだ。監督のボブ・ペルシケッティは「スタンはニューヨークのあちこちにいます。忙しい人ですからね」と述べた。

そのうちのひとつを、アニメーターのニック・コンドウが明らかにしている。米国ではBlu-rayの発売が迫っていることもあり、「コマ送りを楽しんで!」と書いて、映画のラスト、マイルスがニューヨークを飛び回るシーンの映像を投稿したのだ。

劇場で気づけるはずがない…! そしてこれに反応するかたちで、クリス・ミラーも別の登場シーンをひとつ明らかにしていた。

「電車の隠しカメオに興奮したみなさんへ。スタンは映画の全編に何度も何度も出ています。マイルスが“サンクス、ニューヨーク”と言うところで、彼をまたいでいくのは誰でしょう?

スタンの精神やメッセージを映画に取り込むことに成功した『スパイダーマン:スパイダーバース』には、文字通り、スタンの存在が全編に息づいていたのだ。ほかの“隠れ登場シーン”は、日本でのBlu-rayリリースを楽しみに待つことにしよう。

スタンの言葉、そしてクリエイターの敬意

『スパイダーマン:スパイダーバース』のエンドクレジットには、スタン・リー自身の語った言葉が差し込まれる。

「そうすべきだから、それが正しいことだから、という理由だけで誰かを助けられる人こそが、まぎれもなく真のスーパーヒーローだ。」
(That person who helps others simply because it should or must be done, and because it is the right thing to do, is indeed without a doubt, a real superhero.)

これはスタンによる発言の後半部分を抜粋したもので、前半には「ヒーローの定義とは、誰かの幸せを思いやれること、たとえ見返りがなくとも彼らを助けるために自分の道を行けることだ」と語られている。

本作を手がけたクリエイターたちからは、2018年に死去した“スパイダーマンの生みの親”ふたりに対して、「スタン・リー、スティーブ・ディッコ、ありがとう。僕たちは一人じゃないと教えてくれて」とのメッセージも送られている。この言葉を映画の締めくくりに用意することは、スタンの訃報が製作チームに伝えられた直後に決められたのだそうだ。

東京コミコン2018 追悼 スタン・リー
「東京コミコン 2018」では、会場に集まったファンからスタン・リーへのメッセージが寄せられた。 Photo: ©THE RIVER

ボブ・ペルシケッティ監督は、「二人がいなければ、僕たちの誰もここにはいなかったでしょう」と述べている。「かつて存在した、そして今もなお存在する彼に感謝します。この映画の中で、彼が創作の助けとなったあらゆるコミックの中で、彼はずっと生きているんですから」。

ちなみに製作総指揮のフィル・ロード&クリス・ミラーは、『スパイダーマン:スパイダーバース』の製作に入るよりもずっと以前、2003年にスタンと初めて会ったという。「なにかご一緒できるかもしれない」として、スタンの好意から面会が叶ったのだそうだ。そこで二人は、スタン・リーという作り手の底力を目の当たりにすることになったという。

「最初は僕たちがアイデアを提案するつもりだったんですが、最終的には彼にアイデアを提案してもらってしまいました。45分のミーティングで、(スタンから)アイデアが7つ以上出てきたんです。まさしくアイデア・マシンのような方でした。まるで呼吸をするように、勝手に創作が始まってしまうような。」

フィルは「一緒に作品をつくることができて、本当に幸せに思います」と述べた。「(スタンが亡くなってから)出来上がった映画を観ると、別の意味が生まれていて、心が動かされるんです。彼のシーンは、とても心に残るものになりました」。

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』は2019年3月8日(金)より全国公開中

『スパイダーマン:スパイダーバース』公式サイト:http://www.spider-verse.jp/

Sources: Fandango, IW, VF, THR, CyberSpacers

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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