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【ネタバレ】『スパイダーマン:スパイダーバース』にスタン・リーが遺したもの ─ カメオ収録秘話、複数の登場シーン、作り手の思い

スパイダーマン:スパイダーバース
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スタン・リー、スパイダーマンのスーツを与える

「この映画の精神に欠かせない人だから、ちょろっと通り過ぎるようなカメオにはしたくなかった」


製作当時を振り返ってこう語るのは、製作総指揮を務めたクリス・ミラーだ。米Fandangoのインタビューにて、クリスとフィル・ロードは、スタンを「もっと重要な、映画にエモーショナルな重みをもたらす存在にしたかった」と話している。

フィル「スタンはスティーブ・ディッコとともにキャラクターを生み出した人ですから、マイルスにお守りのようなものを渡してもらうのはどうかと考えたんです。だから彼は、マイルスにスパイダーマンのスーツを与えて、“返せないよ”と言う。とても大切な場面だと思いました。」

©THE RIVER

『スパイダーマン:スパイダーバース』の序盤、ピーター・パーカー/スパイダーマンは、キングピンの手によって命を奪われてしまう。ニューヨークの街が悲しみに暮れるなか、主人公マイルス・モラレスはピーターから託された「キングピンの加速器を止める」という任務を果たすべく、スパイダーマンのスーツを買い、ピーターの葬儀に参加するのだ。

スタンが本作で演じたのは、マイルスがスーツを買う店の主人役。脚本には、この場所の名前は「スタンのコスチューム・ストア」、マイルスは「コミックブック・オーナーによく似た」店主からスーツを買うと記されている。ピーターの死を受けて、店主は「寂しくなるよ、わしらは友達同士だったんだ」と一言。マイルスがスーツを見て「サイズが合わなかったら返品できる?」と聞くと、店主は「サイズは合う、いつかね」と笑顔を見せた。ところが、彼の背後には「返品不可」のパネルが見える……。

スパイダーマン:スパイダーバース

収録秘話、スタンのセリフは脚本から変更されていた

Vanity Fairによると、スタンが店主として登場するシーンの収録は、スタンの妻ジョアンさんが2018年7月に亡くなった後、さほど間を空けずに行われたとのこと。三人の監督の一人、ピーター・ラムジーは「収録に来てもらえるかわかりませんでしたし、お願いするのは適切ではないとも思いました。どれくらいの時間、収録に付き合ってもらえるのかもわからなかったんです」と振り返っている。

しかしプロデューサーのアヴィ・アラッドは、これまでにもスパイダーマンの映画やアニメを手がけてきたゆえにスタンとの関係が深く、スタンが映画へのカメオ出演を大切に考えていることを知っていた。

アラッド「(スタンは)カメオの役を演じるのが大好き。なによりも大切にしていましたよ。自分という人間や、自分の生み出したものがずっと残っていくことを彼は理解していましたからね。それから、ファンが自分の登場するシーンを好きでいてくれることも。」

同じく監督の一人であるロドニー・ロスマンは、この場面でスタンが話すセリフが収録中に変更されていたことを米IndieWireにて明かしている。

ロドニー「興味深かったのは、シーンが変化していったことです。[中略](収録では)もっと愉快になるように、もっと渋いシーンになるように、といろいろ試したんですが、最終的に映画に使ったのは非常に深い意味をもったセリフでした。」

実は収録当時の脚本では、マイルスが「サイズが合わなかったら返品できる?」と尋ねたあとの店主のセリフは「合うことはないぞ(Never fits.)」だったという。収録で試行錯誤が重ねられる中、このセリフは「サイズは合う、いつかね(It always fits. Eventually.)」に変更されたのだ。ロドニー監督によれば、その理由は「子どもにスーツを着せられるだけの言葉をスタンが届けなければいけなかったため」だったとか。

本作でスタンは、マイルスだけでなく、世界中の観客に強いメッセージを贈ったことになるだろう。スーパーヒーローのスーツを受け取ったものは、いかなる理由があってもスーツを返すことはできない。しかしいずれ、彼/彼女たちはそのスーツに見合った人間になる。この願いは、かの有名な「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉や、スタンが生み出した「スパイダーマン」のストーリーに通じているものではないか。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。国内舞台作品の執筆・創作にも携わっています。ビリー・アイリッシュのライブに行きたい。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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