『ジャスティス・リーグ』スナイダー・カットは「全く新しい体験」 ─ 実現経緯と今後の展望が判明

2017年製作、DC映画ユニバースのクロスオーバー映画『ジャスティス・リーグ』より、ファン待望の「スナイダー・カット」が2021年に米HBO Maxにて公開される。製作途中に降板した、ザック・スナイダー監督のビジョンに基づく“幻のバージョン”だ。米The Hollywood Reporterは、スナイダー・カットにまつわる挫折と実現の経緯、そして今後の展望など、さらなる詳報を伝えている。
「スナイダー・カット」完成に向けて
ザック・スナイダーが愛娘の自殺を受け、『ジャスティス・リーグ』を降板したのは2017年5月のこと。後任を務めた『アベンジャーズ』(2012)のジョス・ウェドンは、再撮影・再編集によって作風を変更して映画を完成させた(ワーナー・ブラザース側の意向も強かったとされる)。監督によると、自身が撮影した映像は大量にお蔵入りとなっており、劇場公開版に含まれていたのは全体の4分の1程度だという。
企画を降板する以前の2017年1月、スナイダー監督は、理想の『ジャスティス・リーグ』は約4時間の大作になると考えていた(ただし“4時間版”が劇場公開されることは想定していなかったという)。一方のワーナーは2時間ほどの映画に仕上げることを求め、監督は約2時間20分の仮編集版を作成。スタジオが『ジャスティス・リーグ』を観たのは、このバージョンが初めてだったという。両者は劇場公開までにさらなる作業が必要であることに合意したが、その後、娘の死を受けてスナイダーはプロジェクトを去ることになる。
すなわち『ジャスティス・リーグ』のスナイダー・カットは、すぐに一般公開できる形では存在していなかったのだ。長らく関係者が「存在しない」と主張していた理由はここにあるのだろう。VFXが入っていない、ポストプロダクション(撮影後作業)が十分に行われていない“未完成版”はあったといい、これを観た人物は「ボディパネルのない車のようなもので、機械と座席しかなかった」と語っている。

報道によれば、ワーナーは「スナイダー・カット」の完成に向けて、新たに2,000~3,000万ドルの予算を投入。音楽や編集、VFXのスタッフが再結集するほか、新たなセリフを収録するために出演者が呼び戻される可能性もあるという。すでにスナイダー監督は多くの出演者に連絡しており、スナイダー・カットの作業に着手すること、力を貸してもらう必要が生じるかもしれないことを伝えたとされる(最初に電話を受けたのはサイボーグ役のレイ・フィッシャーだった)。
HBO Maxは米国配信時期を「2021年」とだけ告知しているため、スナイダー監督は新作映画『アーミー・オブ・ザ・デッド(原題:Army of the Dead)』と並行しての作業となるが、制作時間はたっぷりと与えられている状況だ。ちなみに、現時点では作品の配信形式も未定。約4時間の映画となる可能性も、全6章のテレビシリーズとなる可能性もあるという。
現在構想されているスナイダー・カットについて、監督は「まったく新しいもの。公開版を観た人は、あの映画とは違う体験だと言ってくれる」と話している。自身がSNSなどで長らく示唆してきた要素がたっぷりと入るため、キャラクターの再開発も行われるよう。「映画版では実現できなかった形でキャラクターを描ける」といい、今度こそ自分自身のビジョンに忠実な創作に突き進む構えだ。妻でプロデューサーのデボラ・スナイダーも、「この映画はヒーローたちが歩んできた物語の総決算になるものでした。人々が望むようなヒーローたちを作り上げたかった」と述べている。

「スナイダー・カット」実現の経緯
『ジャスティス・リーグ』スナイダー・カットの公開が実現に向けて動き始めたのは、2019年11月18日(米国時間)の早朝だったという。『ジャスティス・リーグ』の劇場公開日から丸2年が経った、その翌日のことだ。SNSではスナイダー・カットの公開を求める動きが高まっており、ハッシュタグ「#ReleasetheSnyderCut」のムーブメントがふたたび世界に広がっていた。バットマン役のベン・アフレック、ワンダーウーマン役のガル・ガドットら出演者も参加したことが大きな話題を呼んだのである。
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