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スター・ウォーズ『ハン・ソロ』監督交代は「やりたくなかった」 ― ルーカスフィルム社長&新監督が経緯を振り返る

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
© 2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

2017年6月、映画ファン、そして『スター・ウォーズ』ファンのもとに衝撃の知らせが届けられた。
映画『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の製作にあたっていたフィル・ロード&クリス・ミラー監督が、「創作上の相違」を理由にプロジェクトを離脱したのである。すでに『21ジャンプ・ストリート』(2012)や『LEGO(R)ムービー』(2014)などで支持されるクリエイターに代わって後任を務めることになったのは、『アポロ13』(1995)や『ビューティフル・マインド』(2001)を手がけたロン・ハワードだった。

映画界の注目を集める気鋭の監督コンビから、手堅い作風と地に足の着いた演出で確固たる評価を受ける名匠へ。あまりにもわかりやすい方針転換は、海外メディアやファンの間で多くの推測を生むことになった。
それから約8ヶ月が経過し、いよいよ本作の米国公開まで3ヶ月を切った現在、ロン・ハワード監督とルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディ社長が一連の監督交代劇について語っている。

監督降板は「苦渋の決断」

Weekly Entertainment誌の取材に対して、ケネディ社長は「(フィル&クリスの降板は)苦渋の決断でした」と語る。「決断するにはあまりに遅すぎましたし、そうせずに済むよう、多くの時間を費やしてきたんです。」

この取材でケネディ社長は、監督降板にいたった真相についてもわずかに言及している。降板報道の直後、両監督による即興演技を重視した演出や、必ずしも脚本に沿わない演出がルーカスフィルム側に受け入れられなかったと伝えられたが、その説はある程度正しかったようだ。
もっとも彼女は、フィル&クリスによるストーリーテリングやユーモアについて「すごい才能ですし、とても面白いと思います」と語っているのだが……。

「ただ素晴らしい製作体験を望んでいただけでした。期待通りにならなかったとしても、それは(彼らに)才能がなかったということではありません。[中略]彼らはアニメーションやコントの出身で、そういう映画を作る時には、即興演出ができる余地があるんだと思います。私たちもやりますしね。しかし(『ハン・ソロ』は)極めて構造的な作業で、そうしなければ作品は成功しませんし、準備している人々や要素を動かせない。」

ケネディ社長いわく、降板を決める段階では「やれることはほとんどなくて、(フィル&クリス監督の方法とは)別の道を行くしかなかった」という。「あんなことはしたくなかった。二人は素晴らしいし、誰もこんなことは望んでなかったんです。」

しかしこうした言葉からは、本撮影をすべて終えるまで、ルーカスフィルム側がフィル&クリスを信頼できなかったという事実も見えてくるだろう。たとえば『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)では、ギャレス・エドワーズ監督による本撮影の仕上がりにディズニー/ルーカスフィルムが満足できず、監督に代わってトニー・ギルロイが再撮影や編集を指揮したといわれているが、『ハン・ソロ』ではそうした措置すら取られなかったわけである。

ちなみに、同じく即興演出を重視する『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)のタイカ・ワイティティ監督は、その製作スタイルについてこうした信条を述べている

「(撮影現場では)ほとんどのテイクでやり過ぎてしまうんですよ。だから(編集作業で)シーンを落ち着けて、脚本のページ上にきちんとはめ込んでいくんです。リアリティのある作風になるよう、いい具合のバランスでね。」

フィル&クリスの頭の中に、ケネディ社長のいう「極めて構造的な作業」が本当になかったのかどうか、今となっては観客から確かめる術はない。

ロン・ハワード監督、当初は就任に「消極的だった」

いずれにせよ『ハン・ソロ』からフィル&クリス監督は降板し、代わりの人材が必要となった。そこで白羽の矢が立ったのは、ジョージ・ルーカス監督作品『アメリカン・グラフィティ』(1973)に俳優として主演し、のちにルーカスの原案作品『ウィロー』(1988)で監督を務めたロン・ハワードだったのである。

以前からフィル&クリスを知っていたという彼は、その後任を務めることをためらっていたという。そもそも彼のスケジュールでは、2017年に映画を撮る予定はなかったのだ。しかしプロデューサー陣との話し合いによって、彼は「消極的ではありましたが、助けになれないかとも思い始めました」という。

「こういう決断をしなければならない集団は、絶対に落ち込んでいるものです。誰もがつらい思いをして、誰もがガッカリしている。だから、とにかく(彼らの)役に立とうとしました。もちろんフィルとクリスの痕跡は全編にありますよ。彼らがどれだけのものを作って、どれだけの時間を費やしてくれたのか。ファンの皆さんには、この映画がどうやって作られたかを忘れてもらえればと願っています。夢中になってもらえるようにと。」

しかしハワード監督は、本編のどれだけがフィル&クリスによるもので、どれだけが自身の手によるものなのかを決して明かそうとしないのだった。

「ハン・ソロは“俺に確率の話をするな”と言うでしょう。だからパーセンテージの話はしないでください(笑)。本当に説明したくない、詳しく明かしたくないんです。ファンの皆さんの問題にしたくなくて。なぜ質問するのかは理解できますし、興味深いんだと思いますが、この映画に関わった全員がとにかく作品の可能性を愛していて、そういう雰囲気があるんです。観客の皆さんには、そんな愛情と興奮を感じてもらえると思いますよ。」

ともかくハワード監督は、最初は消極的ながらも急遽手がけることになった本作に、今では深い思い入れを抱いているようだ。その熱意が作品をどんな形に仕上げているのかはまだわからないが、ひとまず監督は、この映画に並々ならぬ自信をにじませている。

「(就任する際に)すごくユニークな創作体験になるだろうな、って思いましたね。僕の人生にピッタリですよ。試練に挑むのは好きですし、この映画はとんでもない試練だろうと。そして、実際にエキサイティングだった。すごく楽しいですよ。
(『ハン・ソロ』は)楽しい作風です。もちろん若いハン・ソロの映画ですから、その力強さもあれば、ユーモアもあるし、若いエモーションと激しさもあってね。」

ちなみに『ハン・ソロ』を製作しながら、ハワード監督は、自身の過去作品『ラッシュ/プライドと友情』(2013)を思い出したという。批評家や観客から非常に高く評価された同作を思い出したとあって、本作も再び傑作となるか……!

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は2018年6月29日より全国ロードショー

Source: http://ew.com/movies/2018/02/09/ron-howard-solo-a-star-wars-story/
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Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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