『マイティ・ソー バトルロイヤル』名言続出!タイカ・ワイティティ監督が製作の秘密を語る ― 「本編の8割アドリブ」の真実も

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督にタイカ・ワイティティが抜擢された時、彼のフィルモグラフィを知る映画ファンは大いに驚き、大いに納得したことだろう。その冴え渡るユーモアセンス、切実かつダイナミックなストーリーテリングは『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014)や『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』(2016)といった代表作で日本の観客にも愛されている。ハリウッドの求める優れた能力がそこに詰まっていることは明らかだった。
しかし、その強烈な作家性はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にうまくフィットするのか、彼の良いところは存分に発揮されるのか? そんな心配を抱えていたファンも少なくはなかったことだろう。しかし撮影が始まってからというもの、聞こえてくるのは「ほかのMCU作品は無視した」「全編の80%がアドリブ」という、はっきり言って“やりたい放題”なエピソードの数々だったのだ。
大作映画から気鋭の監督が降板するというニュースが珍しくない昨今、いきなりハリウッドの大作映画に参戦した新鋭は、なぜそんなムチャな仕事ぶりを許されたのだろうか。『マイティ・ソー バトルロイヤル』の撮影現場で行われたインタビューからは、ワイティティ監督の“やりたい放題”とはかけ離れた堅実な発想と丁寧な仕事を垣間見ることができた。米コライダーの取材より、名言続出、期待が高まるばかりの言葉の数々に耳を傾けてみよう。

「僕の仕事は最高の映画を作ること」
これまで自身の脚本を映画化してきたワイティティ監督にとって、コミックという原作が存在すること、しかも自分以外の手で執筆された脚本を映像化することは初めての経験だった。監督自身、『マイティ・ソー』を撮ることには「ファンの求めるものやユニバースそのものに忠実でなければならないという課題がありました」と語っている。しかしそんな時に彼が思い出したのは、“なぜ自分が撮っているのか”ということだったという。
「雇われた理由を覚えておかなければなりませんでしたね。理由のひとつは僕の描くストーリーであり、これまで作ってきた映画ですよ。だから、この種のコンテンツと自分らしいストーリーテリングを融合させようとしているんです。」
自分の作家性が求められてオファーされたのだと確信するワイティティ監督は、本作を“大きなユニバースの一本”ではなく“単独の映画”だとことさら意識するようになったようだ。これが一部で物議を醸した、「ほかの作品は無視しようと努めた」発言の真相だったのである。
「大きな出来事のワン・エピソードにはしたくないんです。将来的にほかのシリーズに繋がるよう、3作のつじつまを合わせるのは僕の仕事じゃない。僕の仕事は、単独の映画として成立する作品を作ること。マーベル映画をこの作品しか観ない人にとっても、最高のストーリーが描かれた最高の映画になるようにすることです。幸運なことに、マーベルには単独映画でも大きなジグソーパズルのピースになりうるかどうかをチェックする天才がたくさんいますしね。」
こう言い切る監督は、『マイティ・ソー』シリーズの過去作品をきちんと観て、しっかり楽しんだうえでそこから逃れようとしたのだという。「僕にとってはこれが第1作」「僕が(マーベル映画を)撮る唯一の機会かもしれない」という言葉からは、“自分なりに面白い映画を作れなければ敗北”とすら言わんばかりの覚悟がうかがえるだろう。
「『マイティ・ソー』ならソーが最高のキャラクターであるべき」
またワイティティ監督にとって、スタジオ製作の大作映画、ヒーロー映画を撮るという経験も今回が初めてのことだ。『グリーン・ランタン』(2011)に俳優として出演した経験はあるものの、自分自身が作品を手がけたことはない。そこで監督は、数々のヒーロー映画や大作映画を観て研究を進める中で、ある真実に気づいたという。