『マイティ・ソー バトルロイヤル』名言続出!タイカ・ワイティティ監督が製作の秘密を語る ― 「本編の8割アドリブ」の真実も

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督にタイカ・ワイティティが抜擢された時、彼のフィルモグラフィを知る映画ファンは大いに驚き、大いに納得したことだろう。その冴え渡るユーモアセンス、切実かつダイナミックなストーリーテリングは『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014)や『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』(2016)といった代表作で日本の観客にも愛されている。ハリウッドの求める優れた能力がそこに詰まっていることは明らかだった。

しかし、その強烈な作家性はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にうまくフィットするのか、彼の良いところは存分に発揮されるのか? そんな心配を抱えていたファンも少なくはなかったことだろう。しかし撮影が始まってからというもの、聞こえてくるのは「ほかのMCU作品は無視した」「全編の80%がアドリブ」という、はっきり言って“やりたい放題”なエピソードの数々だったのだ。

大作映画から気鋭の監督が降板するというニュースが珍しくない昨今、いきなりハリウッドの大作映画に参戦した新鋭は、なぜそんなムチャな仕事ぶりを許されたのだろうか。『マイティ・ソー バトルロイヤル』の撮影現場で行われたインタビューからは、ワイティティ監督の“やりたい放題”とはかけ離れた堅実な発想と丁寧な仕事を垣間見ることができた。米コライダーの取材より、名言続出、期待が高まるばかりの言葉の数々に耳を傾けてみよう。

Taika Waititi speaking at the 2017 San Diego Comic Con International, for "Thor: Ragnarok", at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/36201776766/ )

Taika Waititi speaking at the 2017 San Diego Comic Con International, for “Thor: Ragnarok”, at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/36201776766/ )

「僕の仕事は最高の映画を作ること」

これまで自身の脚本を映画化してきたワイティティ監督にとって、コミックという原作が存在すること、しかも自分以外の手で執筆された脚本を映像化することは初めての経験だった。監督自身、『マイティ・ソー』を撮ることには「ファンの求めるものやユニバースそのものに忠実でなければならないという課題がありました」と語っている。しかしそんな時に彼が思い出したのは、“なぜ自分が撮っているのか”ということだったという。

「僕が雇われた理由を覚えておく必要がありましたね。その理由のひとつは僕の描くストーリーであり、これまで作ってきた映画です。この種のコンテンツと自分らしいストーリーテリングを融合させようとしているんですよ。」

自分の作家性が求められてオファーされたのだと確信するワイティティ監督は、本作を“大きなユニバースの一本”ではなく“単独の映画”だとことさら意識するようになったようだ。これが一部で物議を醸した、「ほかの作品は無視しようと努めた」発言の真相だったのである。

「もっと大きな出来事のワン・エピソードにはしたくないんです。将来的にほかのシリーズに繋がるよう、3作のつじつまを合わせるのは僕の仕事じゃない。僕の仕事は、単独の映画として成立する作品を作ること。マーベル映画をこの作品しか観ない人にとっても、最高のストーリーが描かれた最高の映画になるようにすることです。幸運なことに、マーベルには単独映画でも大きなジグソーパズルのピースになりうるかどうかをチェックする天才がたくさんいますしね。」

こう言い切る監督は、『マイティ・ソー』シリーズの過去作品をきちんと観て、しっかり楽しんだうえでそこから逃れようとしたのだという。「僕にとってはこれが第1作」「僕が(マーベル映画を)撮る唯一の機会かもしれない」という言葉からは、“自分なりに面白い映画を作れなければ敗北”とすら言わんばかりの覚悟がうかがえるだろう。

「『マイティ・ソー』ならソーが最高のキャラクターであるべき」

またワイティティ監督にとって、スタジオ製作の大作映画、ヒーロー映画を撮るという経験も今回が初めてのことだ。『グリーン・ランタン』(2011)に俳優として出演した経験はあるものの、自分自身が作品を手がけたことはない。そこで監督は、数々のヒーロー映画や大作映画を観て研究を進める中で、ある真実に気づいたという。

「“ああ、映画が失敗する原因がわかった”と思いました。多くの場合、それはストーリーなんですよ。」

こうした気づきを経て、ワイティティ監督は『マイティ・ソー バトルロイヤル』の脚本づくりに長い時間をかけることにしたという。自分たちが納得できるまで、きちんと物語の筋が通るまで……。しかし監督がプロジェクトに参加した時点で、本作のストーリーにはアイデアがすでに存在したというのだ。

「僕が加わった時には物語のアイデアがありました。でも最初の3~4ヶ月で多くが変わってしまいましたね。最初からマーベルは、(『マイティ・ソー』を)もう少し明るくしたい、冒険映画の側面を取り入れたいと考えていました。過去2作品は…とりわけ前作(『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』)は少しダークでしたからね。
個人的には、この映画のタイトルが『マイティ・ソー』ならばソーが最高のキャラクターであるべきだと思いました。僕の主な関心は、彼をあるべき時にはクール&ファニーな人物に、またあるべき時にはヒロイックな人物にすることだったんです。僕が作った作品には、いつもコメディとドラマのバランスがあります。それこそが観ていて満足するストーリーだと思うんですよ。」

マイティ・ソー バトルロイヤル

cWalt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

 

「面倒くささから素晴らしい瞬間が生まれてくる」

ところがワイテ
ィティ監督は、こうして練り上げた脚本を自ら軽んじるようなスタイルで撮影を実施した。それが「全編の80%がアドリブ」ともいわれる、俳優たちに多くを委ねた“即興演技”を全面的に採用する方法だったのである。
「いつも脚本のことは骨格やテンプレートくらいに考えています」と言い放つ監督は、撮影現場で俳優の隣に立ち、あらゆる提案を投げかけていったという。もちろんアンソニー・ホプキンスやケイト・ブランシェット、ジェフ・ゴールドブラムといった名優たちもその例外ではなかった……。

「面倒ですよ。でも面倒くささから本当に素晴らしい瞬間が生まれてくるんです。」

しかし自身の持つコメディセンスを作品に活かすため、自分なりの作り方を『マイティ・ソー バトルロイヤル』に持ち込むために導入した“即興演技”は、意外にもワイティティ監督を驚かせた。それは名だたるハリウッドスターたちが、自身のイメージを打ち破るような演技に自ら積極的に挑んでいくことだったという。

「誰もが知ってることをしなくていいという許可を出したら、いかにみんなが頑張ってくれるか……。特にアンソニー・ホプキンスがそうなんですよ。“オーケー、アンソニー・ホプキンスを演じてほしいんだな”と自分で思っている俳優に、“おかしなことをやっていいんですよ。今までのものはぶち壊して、作り直しましょう”って言ったんです。
これは俳優がみんな求めていることだと思います。たとえ40本の映画に出た俳優でも、面白い仕事をしたいと考えているんですよ。みんなが仕事に来たいと思うこと、これこそがチャレンジです。初めてケイト・ブランシェットに会った時、最初に彼女が言ったのは“とにかくみんなを驚かせたい。とにかく面白いことがしたいし、子供たちが観て楽しいものを作りたい”ってことだったんですよ。」

こうした姿勢は、撮影現場にいつも音楽を流すことでリラックスした雰囲気を作ろうとしたというエピソードからもうかがえるだろう。監督は「家族みたいな感じ」を目指していたようで、その成果だろうか、現場ではよく出演者・スタッフの子供たちが走り回っていたようだ。

とはいえワイティティ監督の仕事は、こうして自分自身と俳優たちに自由を与えながら作っていったシーンの数々を一本の映画として仕上げることである。緻密に練り上げた脚本をもとに、ユーモアとドラマのバランスを最後に決めるのはやはり編集なのだという。

「(撮影現場では)ほとんどのテイクでやり過ぎだということをしてしまうんですよ。だからシーンを落ち着けて、脚本のページ上にきちんとはめ込んでいくんです。リアリティのある作風になるよう、いい具合のバランスでね。」

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』は2017年11月3日より全国ロードショー。映画界の注目する気鋭の真価をスクリーンで目撃しよう。

Source:?http://collider.com/thor-ragnarok-taika-waititi-interview/
Eyecatch Image: Taika Waititi speaking at the 2017 San Diego Comic Con International, for “Thor: Ragnarok”, at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/36201776766/ )

 

 

 

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1989年生まれ。THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはわかりづらいまま、少しだけわかりやすくしてお届けできればと思っております。

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