『ハン・ソロ』降板監督に学ぶ「旅立ち」の流儀 ─ 「学んだことは、誰にも奪えない」

もうすぐ春がくる。学校を卒業したり、務めた会社から辞職・転職するといった転機を迎える方も多い季節だ。良き旅立ちもあれば、あまり後味のよくない旅立ちもあるかもしれない。例えば、何らかの事情で自分が去らなければならない、といったような。
そういった不本意な旅立ちを、ハリウッド業界最大とも言えるような規模で経験した者たちがいる。フィル・ロード&クリス・ミラーという映画監督・製作者コンビだ。彼らは、映画史上最大フランチャイズの一作、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の監督を務めていたにもかかわらず、製作途中で降板しているのである。既に撮影も始まっていたところ、ルーカスフィルムとの「創作上の相違」によって離脱。おそらく撮影開始までに多大な時間とエネルギーを費やして準備し、キャストやクルーたちとも親睦を深めながら進行していたはずのロード&ミラーだが、早い話が「クビ」である。
さぞ痛恨だったことだろう。過去に彼らは「とても悲しいし、とても落ち込むものだけど、仕方のないこと」と無念を語っていたが、衝撃の降板から約5年、彼らは米Podcast番組で改めて胸の内を明らかにしている。その言葉は、何かしらの「旅立ち」を控えている人々をも鼓舞するような、非常に前向きな内容となっている。
なぜなら、あまりにも無念と言わざるを得ない5年前の降板について、フィル・ロードは「良いこともある」と言っているのだ。
「学んだことは、誰にも奪えない。たくさん学んだんです。素晴らしい方々とお仕事できたし、友達もたくさん出来ました。アニメ製作で言うところの“鉛筆書き”ができたような感じで、長い目で見れば、あのおかげで僕たちはより良いフィルムメーカーになれたと思っています。変な話ですが、確かにネガティブな感情もありました。でも今思っているのは、どんなプロジェクトであっても、全ては成長、勉強、そして協力が大事。それは変わらないんです。」
もちろん、「ネガティブな感情もあった」とロードが言っているように、このような前向きな発言ができるようになるまで、彼らの中では相当な苦悩や後悔があったのかもしれない。人知れず涙を流した日だって、あったかもしれない。それでも、今彼らが「学んだことは、誰にも奪えない」との金言に至ったこと、その重要性を伝えていることは、心に留めておきたいところだ。
彼らのように不本意な結果を余儀なくされた時、人はその経緯や不運、あるいは特定の誰かを咎め続けることもできるだろう。それはよっぽど楽なことだし、もしかしたら同情も得られて、いくらか慰めになるかもしれない。しかしフィル・ロードたちは、むしろその経験を糧とし、どんな出来事でも成長につながるとの考え方を重視しているようである。彼らのようなハリウッドの巨大プロジェクトに携わっていなくとも、これはあらゆる場面で参考にできるものがありそうだ。それは仕事でも、アルバイトでも、部活動でも、趣味の活動でも、何にでも適応できそうだ。
なおロード&ミラーはこの『ハン・ソロ』でまさに多くを学んだようで、降板後も素晴らしい作品を生み出し続けている。アカデミー賞長編アニメ映画賞に輝いた『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)や『ミッチェル家とマシンの反乱』(2021)などがそうだ。今後だって、書き切れないほどに新作のオファーが絶えていない。
たとえ転ぶことがあろうと、そこから学び、感謝し、また走り続ける。そういったフィル・ロード&クリス・ミラーのような人たちの元には、これからもたくさんの良い仕事が集まり続けるのだろう。「学んだことは、誰にも奪えない」。
▼ ロード&ミラーの記事
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Source:@joshuahorowitz