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ディズニー『ソウルフル・ワールド』配信リリースに欧州の映画館が抗議声明 ─ 「ショックを受け、困惑している」

映画館
Photo by tom.arthur https://www.flickr.com/photos/tomarthur/3843678895/

2020年10月9日、ディズニー&ピクサーの最新作『ソウルフル・ワールド』が劇場公開を断念し、2020年12月25日より「Disney+(ディズニープラス)」にて配信リリースとなる。『ムーラン』の配信リリースに続く決定に、映画館の営業が再開されているヨーロッパの映画館は不満を隠していない。

『ソウルフル・ワールド』の配信決定が告知されたのち、10月12日(現地時間)にヨーロッパの映画館組合「The International Union of Cinemas」はディズニーを名指ししての声明を発表。「ウォルト・ディズニー・スタジオズの決定は、ヨーロッパの観客から『ソウルフル・ワールド』を大スクリーンで観る機会を奪うものであり、映画館側はショックを受け、困惑しています」と記した。

現在、ヨーロッパだけでなく日本を含む世界各国で映画館の営業が再開されている。アメリカではニューヨークなどでいまだ営業が実施できない状況が続いているものの、それぞれの国と地域では感染対策を講じた上で、観客に映画体験を提供する動きが戻りつつあるのだ。組合側は、映画館の経営者たちが「予定されていた新作のスケジュールに基づき、観客に最も安全な体験を提供するために大きな投資を行ってきた」ことを強調する。

しかし2020年に公開予定だった大作映画は相次いで公開延期となり、『ソウルフル・ワールド』はDisney+の非対象地域を除いては基本的に全世界で配信リリースとなった。すでに本作はヨーロッパの映画祭で上映が行われていただけに、突然の劇場公開見合わせは、劇場側の予測を大きく裏切ることとなった。「映画館に観客が戻りつつあること、作品を安全に楽しんでいただいていることの根拠は存在します。しかし、人々を劇場を呼び戻す上で、新作の公開が重要であることは明らかです」

組合側は、コロナ禍が収束を迎える目処が立たない中、覚悟をもって新作を映画館で上映する配給会社に対し、「劇場公開の価値を認めていただいていることの証明であり、我々の“連帯”というビジョンを支援してくださっている」ものとして感謝を述べた。一方で、劇場公開の延期や断念という判断については「延期するだけでも業界全体が危機に陥る」と指摘。映画館や観客から機会を奪うだけにとどまらず、大スクリーンでの上映を求めるクリエイターにも大きな失望感をもたらす状況が続いていると記した。

声明の中で、組合側はスタジオが苦境に立たされていることにも理解を示した。しかし、スタジオの決断が市場に大きなダメージを与えている以上、「映画を公開すると決めた時には、映画が支援を受けられる環境も減っているでしょう」と書き添えることも忘れていない。「スタジオにとってのベストタイミングは、ヨーロッパの映画館には遅すぎるかもしれません」

なお、ヨーロッパでは『ムーラン』の配信リリース決定時にも抗議の声が上がり、フランスのある映画館では広報用の展示物が破壊されるという出来事が話題となった。『ソウルフル・ワールド』の配信決定は、表には見えづらいところで、世界の映画館に少なからぬダメージをもたらしている。

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Source: Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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