【ネタバレ解説】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』新予告編映像を考察 ─ 『アベンジャーズ/エンドゲーム』直後、MCUはさらに拡大する

ミステリオとエレメンタルズは本当に異次元から現れたのか?
ただし、多くのコミックファンはここで首をかしげることだろう。さも善人面をして現れたミステリオは、原作コミックではあくまでもヴィランであり、偽装戦略を得意とするトリックスターなのだ。そのため、『ファー・フロム・ホーム』真の黒幕はミステリオ自身である可能性も否めないばかりか、やもすれば異次元から来たという出自すらも嘘である恐れもある。
ところがジョン・ワッツ監督の重要な証言によれば、どうやら異次元の存在に限っては真実ということらしい。「今作は、『エンドゲーム』のラストで起こった出来事の観点から描かれています。あのラストでは、驚きの事実と疑問が浮かび上がりましたよね。だから私達は、その大きな疑問のひとつにぶつかっていきます。別の時間軸ですよ。『エンドゲーム』のラストは多くの可能性が開かれました。ピーター・パーカーは、それに対処できる数少ない1人なんです。」予告編映像からは、キャプテン・マーベルは取り込み中で、ソーは「留守(Off-world)」であると説明されている。ソーはおそらく、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに混じって宇宙のどこかを旅しているのだろう。
『ファー・フロム・ホーム』で世界を襲うのは、自然にまつわるクリーチャーの「エレメンタルズ」だ。コミックでは、炎を生み出すリーダーのヘルファイア、水を操る能力を持つハイドロン、土や岩石を操作するマグナム、そして空気を扱うことであらゆる影響をもたらすゼファーの4人が知られる。これらのキャラクターがそのまま『ファー・フロム・ホーム』に登場するかは不明だが、すでに能力の設定は共通している。
「ここは私に任せろ」というミステリオのセリフは、原語では”This is my resposibility”というもので、直訳するのであれば「これは私の責任だ」となる。察するに、ミステリオの世界線にいたエレメンタルズが何らかの出来事によって我々の世界線に流れ込んできてしまったのだろう。ジョン・ワッツ監督も、「ミステリオとエレメンタルズは別の世界から現れたのですか」という問いに「はい、まさにそうです」と答えている。「彼らは両者とも、同じパラレル世界から来たんです。」
ピーター・パーカー成長物語
マルチバースの概念と共に拡大するMCUだが、一方で『ファー・フロム・ホーム』ではピーター・パーカーの成長劇として地に足の着いたドラマも見せてくれそうだ。『スパイダーマン』映画といえば、やはりヒーロー活動と私生活とのジレンマに戸惑うピーターの姿が醍醐味。(前作『ホームカミング』で憧れの相手だったリズは去っているため、)今作ではゼンデイヤ演じるMJとのロマンスが期待できる。ベックにヒーローとしての決断を迫られるが、まだまだ青春真っ只中のピーターは「好きな子と夏休みを満喫したい」と高校生としての素顔を見せる。一方のMJは、どうやらピーターがスパイダーマンであるという正体に気づいていたようで…。
加えて今作では、『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』で世界が経験した劇的な変化に初めて対処する作品でもある。ここでは、ピーター・パーカーの地に足の着いたキャラクター性が存分に活かされることになるようだ。「もしも大変なことが起こった時、世の中はどうなるのか。ピーター・パーカー/スパイダーマンを通じて、これを一般目線で見ようとしました。日常生活はどうなるのでしょう。もしも自分が消えてしまっていたら、巻き返しを頑張らなくちゃいけなくて、中間試験も受け直さないと。」
おそらくピーターにとって新たな先輩ヒーローとなるベックは、「世界を救うには犠牲を伴う」「人が死ぬこともある」と説くが、その痛ましい現実をピーターはよく知っているだろう。何かを見て驚くピーターのショットで、彼はトニーの遺品と見られるサングラスを着用しているのだ。ちなみに、このショットでは直後に破壊された街並みが映し出されるが、サングラスのシーンと繋がるかは不明。トニーのサングラスといえばAR=拡張現実機能も付いているから、ピーターはトニーがサングラスに遺した”何か”を見ていたのかもしれない。
『ファー・フロム・ホーム』でピーターは、トニーの死と向き合い、そしてヒーローとしての試練を乗り越え無くてはならない。前作『ホームカミング』ではトニーからご近所の自警程度に留められていたピーターだが、今回は事情が違うのだ。「前作でのピーターは、ステップアップする覚悟が決まっていたにもかかわらず、周りから”ダメ”と言われていましたね。今回は、そのステップアップが求められているんです。」
そこに、子どもと大人の狭間に立つピーターの人間らしさが響いてくる。「(求められるレベルの)責任への覚悟があるかどうかは、まだピーターにも分からないんです」というジョン監督は、「まだまだ彼は、クイーンズ出身の16歳。僕も気持ちはわかります。子供の頃、大人扱いされたいって必死に思いましたよね。でも、いざ大人扱いされてみると、子ども扱いされていた方が良かったなって急に気付くじゃないですか。いちど線を越えると、もう戻れないんですよね」と共感してみせる。
ピーター自身が成長するように、映画のスケール感も成長する。アクションシーンについて、「前作ではスパイダーマンの愛すべき理由を忘れさせないため、意図的に小規模にしていた」というジョン監督は、「今作でも等身大のトーンは変えずに、アクションのレベルは派手に押し上げました。見たこともないものをお見せします」と意気込んでみせる。舞台はヨーロッパとあって、「ジェームズ・ボンド映画を全作観直しました。」どうやらそのアクションは、ただ単純に派手になるわけではなさそうだ。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、2019年6月28日、世界最速公開。大いなる作品には、大いなる期待が伴う!
▼『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』 の記事
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』公式サイト:http://www.spiderman-movie.jp/
Source:Fandango