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スパイダーマンのMCU合流、提案されたエイミー・パスカルは憤慨してサンドイッチを投げつけていた? ─ ケヴィン・ファイギの大胆な提案力

スパイダーマン:ホームカミング
©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

「5番のサンドイッチ?」「ピクルス入れて、ペチャンコに潰してね」。サンドイッチが好物のピーター・パーカーも驚いただろう。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)からマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に合流したスパイダーマン。もともとソニー・ピクチャーズが権利を有しているスパイダーマンが、他社マーベル・スタジオのシリーズであるMCUに登場することは大人の事情が許さなかった。

この壁を突き破ったのが、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギだ。米Colliderは書籍『The Story of Marvel Studios: The Making of the Marvel Cinematic Universe(原題)』から、ファイギが当時ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの会長だったエイミー・パスカルにスパイダーマンに関する交渉を持ちかけた時の、驚くべきエピソードを紹介している。

スパイダーマンといえば、それまでサム・ライミ版とマーク・ウェブ版の2つの実写映画シリーズがあった。ファイギはこれらの作品でもエクゼクティブ・プロデューサーや相談役を務めている。

ある時パスカルはファイギとランチを共にし、予定していた『アメイジング・スパイダーマン3』では、もっと直接的に携わってほしいと持ちかけた。パスカルが作品の内容を説明したところ、ファイギは「エイミー、公平に言って、それは上手くいかないと思いますよ」と告げたそうだ。

そしてファイギは、スパイダーマンの映像化を「うちでやらせてもらえませんか」と頼んだという。「二つのスタジオとして考えるのでも、権利を相手のスタジオに返すというわけでもなくです。権利はそのまま、お金もそのまま。ただ製作させてください。DCがクリストファー・ノーランに委ねたみたいに。もちろん、我々はノーランだというわけではありません。ただ、うまくやっている制作会社がここにいますよ、というだけです。その制作会社を使って、映画を製作してみましょうということです」。

これを聞いたパスカルは、まず憤慨したという。「泣き出して、彼を私のオフィスから追っ払ったか、彼にサンドイッチを投げつけたと思う。どっちだったかは覚えていませんけど」。

サンドイッチを投げた可能性は高い。2018年の米The Wall Street Journalの記事では、パスカルがサンドイッチを投げつけて、「冗談半分で“出て行って(get the f— out)”」と言った、と記されている。ここでは冗談半分だったと伝えられていたが、今回は「すごく憤慨した(I was super resentful)」とパスカルが述懐している。

なぜパスカルがそこまで激怒したのかは、想像してみるほかない。当時パスカルが率いていたソニー・ピクチャーズにとって、スパイダーマンは会社の看板キャラクターである。それはディズニーにとってのミッキーマウスに、任天堂にとってのマリオにほとんど等しいと言える重要な存在だ。斜陽だったマーベル・コミックからスパイダーマンを拾い、映画化を大成功させたのはソニー・ピクチャーズだったし、その後に続くスーパーヒーロー映画のトレンドを作ったのもソニー・ピクチャーズだった。

即ち、スパイダーマンの映画シリーズは社の威信をかけた企画だ。確かに『アメイジング・スパイダーマン』シリーズの評判はサム・ライミ版ほど振るわなかったが、シリーズ第3作の野心的なアイデアを「うまくいかないと思う」と否定され、さらに「うちでやらせてほしい」と来れば、パスカルが怒り心頭になるのも無理はない。

どうやらパスカルは、1日経って冷静さを取り戻したらしい。「ソニーとマーベル・スタジオが手を組むという考えが頭を離れなかった」というパスカルは翌日、ファイギを再びランチに招いた。そこでファイギから、MCU版スパイダーマンの具体的な考えを聞くことになる。「みんなが全てを持っている世界に、持たざる者として彼を登場させる。全く新しいスパイダーマン物語だと思いました。“チクショー、この人なんて賢いんだ”と思いましたね」。

その後、ファイギの大胆なアイデアと勇敢な交渉によって、トム・ホランドによる新生スパイダーマンがMCUでいかなる活躍を見せたかは、ファンのみなさんがよくご存知の通りだ。

パスカルとファイギのこのエピソードから学ぶべきことは大きい。時として、相手の反感を買おうとも、事実を曲げない方が良いということだ。

もしも『アメイジング・スパイダーマン3』に参加してほしいと頼まれたファイギが「うまくいかないと思う」と言わず、ビジネスパートナーであるパスカルに気を使って「いいですね、是非!」とそのまま受け入れていたら?愛すべきトム・ホランド版スパイダーマンは誕生していなかっただろうし、独自路線に進んだ『アメイジング』シリーズ第3作はファイギの予見通り失敗に終わってしまっていたかもしれない。『ヴェノム』などソニー・ピクチャーズの戦略も全く別のものになっていたはずだ。

サンドイッチを投げつけられたというファイギも、スパイダーマンのMCU合流には肝を冷やす思いをしただろう。そもそもが奇跡と共にMCUに登場したようなものだから、最終作となる『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でも、最後の奇跡を起こしてくれることに期待したい。

Source:Collider

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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