【ネタバレ】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ラストシーンの感動的な事実が判明する

この記事には、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の重大なネタバレが含まれています。

MJに残った、ピーター・パーカーの既視感
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のラストでピーター・パーカー(トム・ホランド)は、全ての人が自分の存在を忘れるという、あまりにも残酷な魔術を自ら希望する。そして、魔術の通りになった世界。ピーターはかつての恋人MJ(ゼンデイヤ)や親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)と時間を過ごした、MJの働くドーナツ店へと足を運ぶ。自分との記憶を失ったMJとの“初めての出会い”をうまくやるため、ピーターは自己紹介に語る内容を書いたメモ書きを復唱しながら店に向かう。
店内に入ると、MJが変わらぬ笑顔でこちらに向かって手を振るのだが、すぐにそれはネッドに対するものだったと気付くピーター。まるで自分だけが透明人間になってしまったかのような、切ない現実に気づかされる瞬間だ。
ピーターはレジカウンターに立ち、「僕の名前はピーター・パーカー」と練習してきた自己紹介を口にしようとするが、とっさに諦めて「コーヒーをお願いします」とだけ伝える。わざわざ名前を名乗ったこの初見の男の子をMJは可笑しく思いながら、ネッドとMITに関するやりとりを交わした後、ピーターにコーヒーを渡す。
そこで、ピーターに「MITは楽しみかい」と尋ねられたMJについて、英語脚本上ではその心情が描かれている。拙訳すると、以下のようになる。
「MJは、初め戸惑う。しかし彼女は気付いた。きっとネッドとの会話を立ち聞きしていたのだろうと」
確かにMJにとって、自分がMITに進学することを初見の客が知っているのは妙だ。本編でもMJは一瞬、怪訝そうな表情を浮かべていたが、その直前にネッドと交わした会話が聞こえていたのだろうと納得したわけである。
続いてピーターは、MJが言いかけた「期待しすぎなければ落胆することもない」という口癖を重ねる。ここからのMJに関する脚本記述には、大きなヒントが隠されているように読める。拙訳すると、このような感じだ。
MJ
ああ、そうなんだ。ええと……
うん、そうなんだ。楽しみなのも変なんだけど。だって期待しすぎなければ、落胆することも──
ピーター
落胆することもないから。でしょ?
一瞬、彼女の表情に既視感が浮かんで、そして元に戻る。
このやりとりの後、ピーターがコーヒーを受け取って店を後にするシーンの描写にも注目してみよう。以下再び拙訳。
ピーターはコーヒーを受け取り、ネッドの方を見て、それからMJに視線を戻す。
ピーター
ええと……またね。
彼はドアを後にする。
MJに固定。ピーターが出ていくのを見ている。そこに残った感覚は……見覚え?
これは、映画本編でははっきり語られなかったが、脚本で仄めかされている重大な事実だ。つまりMJはドクター・ストレンジの魔術によってピーター・パーカーの存在をサッパリ忘れてしまったはずだったが、彼女の記憶の何処かには、まだピーターの記憶のカケラが残っていた、ということである。
思えばこのシーンでMJは、何かが引っ掛かったような不思議な表情を浮かべていた。それは初対面の客が妙に絡んでくることに対する戸惑いと解釈することもできるが、一方で彼女は「この人、どこかで見たことがある気がする」「このやりとり、この声、聞き覚えがある気がする」という“既視感”を感じていたというわけだ。
この描写を受けてひとつ、考えるべきことがある。ドクター・ストレンジの魔術は不完全だったのか?ということだ。つまり、今後ピーターと“再会”する人々が、彼と会話するたびに「アレ?この人見覚えがあるぞ」と勘づかれていては、ストレンジの魔術は正しく発動したとは言えない。
この疑問について『ノー・ウェイ・ホーム』本編から判断できる唯一のシーンは、メイおばさんの墓参りにてピーターが再会したハッピーの様子だ。もしもハッピーも「この少年、どこかで……?」といった反応を示していれば、ストレンジの魔術への疑問は一層強まることになる。
ところが既にお気づきのように、劇中でのハッピーの反応はMJのそれとは異なり、全くの他人行儀であった。英語脚本上ではどのように描かれているか?やはり、ピーターに気付くような描写は一切ない。それどころか、「彼は明らかにピーターを認識していない」とまでハッキリ書かれている。

ここから導き出される推論はこうだ。愛は奇跡を生むのである。例えどんな強力な魔術がかかろうとも、MJの中にはまだピーターを愛した純粋な感情が残っているのだ。そしてこの記憶のカケラは、今後何らかの出来事によって、ピーターの記憶と、彼への愛を完全に蘇らせるのではないか。トム・ホランド版『スパイダーマン』の今後の新作予定は現時点で何ら正式には決定していないが、これは一つの希望となるだろう。あるいは、仮に本シリーズが『ノー・ウェイ・ホーム』限りで残念ながら終了してしまったとしても、「いつかMJがピーターを思い出す日が来るかもしれない」と信じられるということは、我々観客にとって最上の慰めとなるだろう。
最後にもう一つ、英語脚本にはサプライズが描かれている。同じくラストで、ピーターがMJのドーナツ店に入店するシーンである。
屋内 ドーナツ店 ── 続き(日中)
ピーターは、老人の客と話して笑っているMJを見つける。スタン・リーに似た客と。
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Source:Deadline