【解説】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』予告編考察と展開予想

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『スパイダーマン』シリーズ第3作、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』より、初の予告編映像が公開となった。
この公開前日には、SNSでの映像リーク騒動があったことも話題に。それほどファンの注目度が高かった予告編ということで、世界中のマーベル・ファン、スパイダーマン・ファンは既に繰り返し映像を見たことだろう。
この記事では、公開されたばかりの『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編映像を、細かい所まで考察してみよう。
MJの思い
予告編の冒頭でMJが読んでいる新聞は、実在するゴシップ誌のニューヨーク・ポストだ。MJはその中面で「パーカーには女性の心を操る能力がある」というデタラメ記事を読んでいるが、一面には「SPIDER-MINIONS」という見出しが見える。バナナが好きな黄色いアイツ……ではなくて、minionには「手先」や「子分」という意味がある。おまけに、この一面では、ネッドとMJが、ピーターのあやつり人形のように描かれている。つまり、ネッドとMJも、メディアやSNSで相当な誹謗中傷に遭っているということが想像できるだろう。いわば「大炎上」状態で、MJの人生も大きく狂わされているはず。それでも彼女はこうしてピーターを支え、ふたりで一緒に過ごしたいと考えているということだ。
ちなみにスパイダーマン世界の新聞といえばデイリー・ビューグルが有名だが、この世界のビューグルは新聞ではなくオンラインメディアとして登場する。前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)でサプライズ登場を果たしたJ・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)によるDailyBugle.netは、スパイダーマンの正体をすっぱ抜いたことで知名度を上げたのか、今では街中のLEDディスプレイでJJの顔が映し出されている。
これは、PS4&PS5のゲーム版『Marvel’s Spider-Man』を彷彿させるようだ。このゲームでは、リアルに再現されたニューヨークの摩天楼をスパイダーマンがスイングする間、JJがスパイダーマンの悪評を語るラジオが聞こえる。ゲーム内のスパイダーマンは、有る事無い事語っているJJの口撃を気にもせずミッションに挑んでいくのだが、映画のピーター・パーカーのメンタルはそこまで頑丈ではない。
もっとも、街中のディスプレイに映ったJJから非難されるシーンはピーターが見る悪夢の可能性だってある。ともかく、相当追い詰められていることに変わりはないのだが。
ダメージ・コントロール局
次のカットでピーターは、どこかの取調室のようなところで手錠をかけられている。ミステリオ殺害の容疑がかけられて連行されてしまったのだろう。
ミステリオ/クウェンティン・ベックといえば、前作『ファー・フロム・ホーム』ではトニー・スタークに代わる新たなる師匠として、別世界からピーターの前に現れた……かと思いきや、全ては嘘だったという姑息なヴィラン。マルチバースから現れたと説明されていたクリーチャーはすべてドローンによるホログラム映像で、ミステリオは絶命する直前、スパイダーマンの正体はピーター・パーカーだとバラしていたのだ。

ピーターは、大人たちから正の遺産と負の遺産を受け継いだことになる。正の遺産とは、アイアンマン/トニー・スタークから受け継いだ勇気と、ハイテクスーツを含む様々なガジェット。そして負の遺産は、ミステリオに植え付けられたであろう不信の心と、全世界に敵対視されるこの混沌だ。『ファー・フロム・ホーム』当時、トニーは死後もピーターの側で存在を感じられるものと紹介されていたが、まさかミステリオまでもが死後もこうしてピーターにつきまとうとは……。
ここでピーターの「僕はミステリオを殺していない。ドローンがやったんだ」との弁明に「君のドローンだろ」と返している男性。警官や検察官かと考えられるが、彼の左胸の「DODC」と読めるロゴに注目してほしい。これはDepartment of Damage Controlの略。ダメージ・コントロール……思い出しただろうか。第1作『ホームカミング』のヴィラン、バルチャーことエイドリアン・トゥームスが恨んでいた「ダメージ・コントロール局」だ。

『ホームカミング』でのトゥームスは、アベンジャーズらヒーローの戦闘が残した瓦礫を撤去する専門の仕事を任されていたのだが、そこにトニー・スタークと政府が設立したダメージ・コントロール局が介入し、職を奪われた恨みをつのらせてヴィランになっていく。
予告編に登場したDODCの局員は、端からピーターを疑ってかかり、悪意丸出しで「君のドローンだろ」と言っているが、なぜDODCがピーターの取り調べを行っているのだろう。DODCはスタークが設立した機関だから、「こんな時、スタークさんがいてくれたら、その一声で誤解が解けるはずなのに」とピーターも悔やんだはずだ。
ちなみに同局はこれまで、チタウリの武器など地球外のテクノロジーによる品々の管理を行ってきている。政府直々の機関なのだから、回収した物品はきちんと調査するはずだ。『ファー・フロム・ホーム』のラストでは、プログラムを失った大量のドローンがどこかに飛び去っていたから、おそらく無傷のドローンのひとつやふたつくらい回収できているはず。これを調べられてもミステリオへの疑いが生じていないということは、ミステリオのチームは万が一の際の証拠隠滅のことも、相当念入りに準備していたのだろう。