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ヒッチコック『裏窓』部屋を出られない男が窓越しに見る世界 ─ 自宅待機に観たい映画を1日1本紹介

裏窓

新型コロナウイルスの影響で、自宅で過ごす時間が増えた方も多いのでは。

THE RIVERでは、この困難な時期を映画の力で乗り越えるべく、編集部メンバーそれぞれが「隔離状態」や「孤立」をテーマにしたオススメ作品を厳選。4日連続で紹介する。自宅待機のお供に、ぜひ参考にして欲しい。

最終日は、稲垣貴俊から『裏窓』(1954)をご紹介。

『裏窓』

2020年4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、内閣が緊急事態宣言を発表するという。状況は先が見えなくなる一方だが、そんな今、筆者がお薦めしたいのが、“サスペンスの神様”アルフレッド・ヒッチコックの代表作『裏窓』だ。60年以上経っても古びない、巨匠のおそるべき視点と技巧に驚愕してほしい。

ある暑い夏、ニューヨークのアパート。仕事一筋だが気ままな性格のカメラマンであるジェフは、脚を骨折し、6週間にわたる“自宅待機”の日々を送っていた。恋人のリザや看護師のステラは毎日自室を訪れるが、どうにも退屈でたまらない。ジェフの楽しみは、裏窓越しに、下着姿で踊るダンサーや作曲家、一人暮らしの婦人、犬を飼う中年夫婦など隣人たちの生活を覗き見ることだった。そんな中、ジェフは向かいに住むセールスマン夫婦の妻が消えたことに気付く。彼は、夫が妻を殺したのだと確信するのだった。

車椅子のため部屋を出ることができず、裏窓を通してしか外界と関われないジェフにとっては、いわば裏窓こそが世界である。そこから見えない部分は、けして彼の知るところではない。ジェフは見聞きした情報だけを基に、セールスマンの妻殺しについて推理を積み重ねていく。恋人のリザと、ほぼ妄想のように物語を組み立てる様子はコミカルでもあり、少し恐ろしくもあるだろう。さて、彼らの“探偵ごっこ”の顛末は……。

映画は全編ジェフの視点で進み、したがってカメラもジェフと同じく部屋を出ない。ヒッチコックは巨大なセットをスタジオに建て、アパートや中庭、隣家などを丸ごと再現した。美術から人物の暮らしぶりまでの徹底した作り込み、画面の隙のなさには目を見張る。舞台設定を活かした緊迫の演出は“サスペンスの神様”たるゆえんだ。

そしてヒッチコックの先見性・普遍性は、映画を観るうちに、この“裏窓”が今でも身近に存在すると思わせるところにある。50年代のニューヨークなら裏窓だが、現代ではそれがモニターになった。テレビ、PC、スマホという裏窓を通して、いまや人々は世界に接触しているのだ。短くないであろう自宅待機の日々を過ごす方は、まさにジェフと同じ境遇である。その窓からは真実も見えれば、間違ったことも見える……それもきっと同じだろう。退屈になってもついつい覗きすぎないよう、くれぐれも気をつけて。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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