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スーパーヒーロー映画批判に「マーベル映画はもっとあるべき」とステラン・スカルスガルドが持論

Photo by Elena Ringo https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Stellan_Skarsg%C3%A5rd_at_the_2017_Berlinale.jpg

マーベルやDCといったスーパーヒーロー映画は、長年愛されるコミックを原作に、莫大な製作予算やマーケティング予算を費やし、映画史に残る数々の記録を打ち立てている。世界中のファンを魅了する一方で、時に大御所フィルムメーカーの反感を買うことも。例えばマーティン・スコセッシ監督の「あれは映画じゃない」「良くできたテーマパークだ」との批判は大きな話題を呼んだ。もっと最近では、リドリー・スコット監督も「あんなものはクソくだらない」「まともなストーリーがない」と痛烈に語っている

一連のスーパーヒーロー映画批判に対して、俳優のステラン・スカルスガルドによる意見が話題を呼んでいる。米Guardiansにてステランは、「スーパーヒーロー映画に対する反感はありません。私自身、2作品に出演しましたし、確かにそういう映画もあります」と述べている。

スウェーデン出身のステランは50年近く役者業を続けるベテランだ。1980年代までは舞台俳優としても活躍し、映画界では『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)や『アミスタッド』(1997)などで名を馳せる。『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006)といった大作映画にも出演。マーベル・シネマティック・ユニバース作品では、『マイティ・ソー』シリーズのエリック・セルヴィグ教授役を演じ、『アベンジャーズ』シリーズにも参加している。息子にアレクサンダー、グスタフ、ビルといった「スカルスガルド兄弟」を持つ役者一家の父でもある。

ステランは「問題はシステムのほうです」と分析している。「8人の富豪が世界の富の半分を握っているもんだから、市場の力が強くなっている」とステランは続けるが、これは「世界で最も裕福な8人が、最も貧困な36億人分と同じ資産を所有している」という推計に基づく見解だ。

「だから小規模の独立系シアターが、いくつかの大都会の郊外に存在できなくなっている。中規模予算の映画の配給手段がないんです。そういう作品にこそ、最高の役者、最高の脚本があるのに、でも彼らはマーケティングキャンペーンに300万ドルも捻出できない。劇場でかかっても、上映は1週間だけで、そこで収支が取れなければ、その映画はもう消えてしまう。」

ステランは、「『ゴッドファーザー』の1作目だって、初めはアメリカで100館規模だったでしょう」と続ける。「それが今や4,000館でかかる大作になった。彼らだってニューヨーク・タイムズ紙に小さな広告を出しているような規模だったのに、どんどん大きくなった。なぜなら、良い映画だったからです。人々の意見にはもうチャンスはありません。それは悲しいことです」。

私は、マーベル映画はあるべきだと思うし、ローラーコースター映画(編注:アトラクションのような娯楽性に特化した映画)ももっとあれば良いと思います。他の映画も、あるべきだと思います。悲しいことに、生の市場原理が働くと、映画スタジオは、10%のリターンさえ得られれば、映画を扱おうが歯磨き粉を扱おうが構わないといった企業によって運営されることになります。AT&Tがタイムワーナーを引き継いだ時も、HBOは『もっと明るく、商業的になれ』とすぐに指示されました。彼らは金儲けをやっているのです。しかし、投資家にはまだ足らないのです。」

自身もスーパーヒーロー映画に出演するステランの見解は、危惧すべきはスーパーヒーロー映画の性質ではなく、映画業界、しいては資本主義社会そのもののあり方であるというものだ。ステランは作品の(規模における)多様性を歓迎しているが、一方で市場原理はしばしば採算性に優れたスタジオ映画に偏向し、その市場の中で、小〜中規模作品は受け皿もろとも居場所を失っていることを嘆いている。

実はステランのこの返答は、話題の発端の一つとなったスコセッシの考えに同調するものである。『アイリッシュマン』プロモーション当時のスコセッシの「良くできたテーマパークだ」発言はその後、本人による追加のコメントがあり、そこでこの巨匠は「(『アイリッシュマン』のような)この手の映画は、居場所が本当に少なくなってしまった」「それは人々を、芸術を、端っこに追い込む」と語っている。さらに「テーマパーク映画」との形容は、──それが正しい形容であったかはさておき── 「あらゆるレベルで非常によく出来ている。映画の新しい形、あるいは完全に新しい芸術の形式」と、ある種称賛とも取れる説明を加えていたのである。

直近では『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)でハルコンネン役を演じたステランは今後、『スター・ウォーズ』の新作ドラマ「アンドー(原題)」に出演する。2019年にはHBOドラマ「チェルノブイリ」の演技が高く評価され、ゴールデングローブ賞助演男優賞も受賞した同年、チェコ・ウクライナ制作の白黒映画『異端の鳥』にも出演。幅広い作品で活躍している。

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Source:Guardians

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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