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クリント・イーストウッド監督の匠の技!短いながらも濃密な96分『ハドソン川の奇跡』レビュー

今年86歳を迎え、俳優というより、もはや映画監督としてその地位を不動のものとしているクリント・イーストウッド。まさに“映画の匠”といえる彼が、今回、イーストウッド作品初出演となる名優トム・ハンクスを主役に迎えて手がけたのは、2009年1月15日に起こった“ハドソン川の奇跡”と言われた未曽有の航空機事故からの生還劇だ。

物語は飛行機の不時着に関する国家運輸安全委員会(NTSB)による調査がメインで、ハンクス演じる機長の“サリー”ことサレンバーガーと、アーロン・エッカート演じる副操縦士のスカイルズが聴取を受ける過程で過去の出来事を織り交ぜながら描かれていく。

実際に事故が起こったのはほんの数分。イーストウッド監督はサレンバーガーとスカイルズの事情聴取のシーンをメインに、サレンバーガーの過去、事故が起こったその日の出来事を巧みに組み入れ、あくまでもシンプルにかつより深く主人公たちの心情を浮かび上がらせる。
NTSBのシミュレーションが正しいのか、サレンバーガーの判断が正しいのか。観客は調査の過程を見守っていき、クライマックスの公聴会のシーンでは思わぬ展開が待っていて、高揚感を感じさせてくれるぐらいに爽快だ。

映画全体の語り口はテンポがよく、エッカートのセリフで見事にオチを付け、「お後がよろしいようで……」で、「テケテンテンテン……」という音が聞こえてきそうな後味の良さ。まさにイーストウッド師匠の高座を聞いているような感覚で、その術中に知らぬ間にハマってしまうのだ。

さらに、メインのキャストはトム・ハンクス、エッカート、ローラ・リニーだが、『LAW&ORDER:クリミナル・インテント』のジェイミー・シェリダンや『ブレイキング・バッド』のアンナ・ガンなど、海外ドラマで活躍する俳優たちも出演しているので、どこで登場するかを見る楽しみもある。

この映画、本編すべてのシーンが最新鋭のカメラ、ALEXA IMAX65㎜で撮影されているので、IMAXシアターでは96分間フルサイズで観ることができる。イーストウッド監督が見せる匠の技を、できればIMAXシアターでご覧になることをオススメする。

Eyecatch Image:https://cinemabravo.com/2016/09/04/clint-eastwood-has-unique-personal-connection-with-sully/

Writer

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masashiobara小原 雅志

小学館のテレビ雑誌『テレパル』の映画担当を経て映画・海外ドラマライターに。小さなころから映画好き。素晴らしい映画との出会いを求めて、マスコミ試写に足しげく通い、海外ドラマ(アメリカ、韓国ほか)も主にCSやBS放送で数多くチェックしています。

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